過去1
「志朗〜!ごはんよ〜!」
「うん。今行くよ〜〜」
学校から帰ってきて、部屋で宿題をやっていたら、いつものように夕飯を知らせる母の声。
シャーペンを置いて部屋を出た。
いつもの日常のはずだったのに。
階段を降りている途中で異常に気づく。
バタバタバタバタっっガタ、ドンッッ
複数の足音。
階下から聞こえてきた明らかに不自然な物音。
そして
「きゃーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!」
「かあさんっっっ!!!」
叫び声に心音が跳ねる
土足で何人もが踏み入れた様子がうかがえる汚れた廊下
開け放たれた玄関扉
「かあさんっっ!!!!」
飛び込んだダイニングに広がっていた光景は。
「う、うそだ…かあ、さん…」
血だまりに伏せる母の姿。みるみる広がる鮮血に足が震えて頭が真っ白のなる
「対象者を発見した。捕獲する」
軍人のような格好をした男たちが複数人が居た。リーダー格の男が無線で話す内容の意味がわからない。
「な、んで…」
ピクリとも動かない母親の側に膝を突いて、服が血に染まるのも意に介さずうな垂れた
なんでなんでなんでなんで
両手が真っ赤に染まるのを見ている内に、真っ白だった頭が急に赤く染まり出す
若い男の声が脳内に突き刺さる
『殲滅しろ。征服しろ。それがお前の宿命だ』
お前は誰だ?
『俺はお前だよ。志朗』
気づいた時には、軍人の1人に向けられていた銃口を握りこんでいた。
「死ね」
軍人の1人にそう呟くと、手の中の銃が爆発して軍人が倒れた。
「まずい。暴走だ。早く仕留めろ!」
リーダー格の男がそう叫ぶと。10人以上の軍人の銃口が一斉に向けられる
不思議と恐ろしさを感じることはなかった。むしろ、
口角が上がった
立ち上がり振り返ると同時に眼が熱く燃えた
視界に入った男たちの頭部が破裂する
皆殺しにしてやる
そう念じただけで、目の前の人間が死んで行くことが当然だと何故が納得できた
「し、しろう…」
「かあさん!!!???」
足元で動く血まみれの手が見えた
「人には…優しくしなきゃ…駄目よ…」
熱かった眼が急激に冷えたのを感じる
母の血まみれの手に掴まれた足がすくんだ
俺は人殺しだ…
「ああああーーーーーーーーーっっ!!!!!!」
足首を握られた手が恐ろしく思い切り振り放すと、大量の血を流した軽い母の身体は吹っ飛び、キッチンに激突し、今度こそ動かなくなった
俺はきっと一生赦されない
身体が鉛のように重い
「今だ!!!早くやれ!!!!!!!」
次の瞬間、視界がブラックアウトした。
そして次目覚めた時には、名前以外、自分のことを何もかも忘れてしまっていた。