diary 2018
2018/8/18 土
僕は母を恨んでいた。
家庭の稼ぎが母親一人。
この家庭が貧しい部類にある事と、
少なくとも綺麗とは言えない借家に住んでいる事。
今まで気にしたことは無かったが、
小学校に入学した僕は、
生まれて初めて回りの家庭というものを見て、価値観が変わってしまった。
内気だった僕は、なんとなしに自分の家を友人に見られる事が怖く、
家庭の話題も避けていた。
子供というのは残酷で、人が隠している事と、気にしている事があると知ると、
それを暴きたくなる輩が必ず居た。
案の定、僕の家までつけてきたクラスメイトは結局そんな事をやろうと思い付く、程度の低い人間で、
次の日には僕の家の事を騒ぎ立て、
僕のクラスでの立場と、友人を作る機会を著しく奪っていった。
それは6歳と、幼い僕にとって、
「周りと違う事」
を酷く恐れて育つ理由には十分だった。
僕は少しずつ確実に、
卑屈な人間になっていった。
どんな境遇にあったとしても、
この家庭の金銭面の愚痴を溢す母に、
自分のせいだろうと心内で思い、恨み。
主に勉学ではあったが、それ以外の才にも恵まれたが故に
「やらなくても最低限はなんとかなる」
という、
我慢や努力を一切覚えない、未熟な人間のまま、
人生を、ひたすら歩いて消費した。
僕は家族からも責められ、罵られ、
去年ようやくお金を貯めて、家を出た。
それからの幸せではなかったが、平穏だった生活は、今日自宅に押し掛けてきた警官の一言で終わりを告げた。
母は僕に殺されたそうだ。




