ヒーローの登場は突然でした
やっとヒーロー出てきます。
勢いで書いたので読みづらい部分があったら、すみません。
「うー、行きたくないよー」
部屋のベッドにうつぶせになりながら、無理な願いを口にする。
せめて、せめてもう少し見られる体型になってからっ!
その願いが通じたのか私は社交シーズンが始まる直前に体調を崩した。
少しでもましになりたいと今まで以上に無理をしてしまったことも要因の一つだと思う。
高熱がしばらく続き、その後もなかなか完治しないまま微熱が続き、咳もなかなか治まらない。
おそらく肺炎にでもかかったと思われる。ただこの世界はそこまで医療が発達していない為、風邪と診断され、それ相応の診療がされた。
そしてそんな状態の私を両親が外に出すはずもなく、夜会などの出席は見送られた。レオンハルト様にも体調が優れないため、出席できない旨の手紙を出している。
そして事件は起こった。
「えっ!?殿下が!?」
「はい、先ほど到着しております。準備が出来るまで少々お時間を頂きたいと伝えたのですが、顔を見に来ただけだとお部屋に向かっています」
慌てて私の部屋に入ってきた侍女に早口でそう言われて、私は慌てた。
社交シーズンが始まって半月経ったが、未だに体調は万全とはいえない。もちろん今の私はベッドに横になっていた。もちろん髪だってセットしていない。
と、とりあえず着替えて、髪ももう少し見れるものにっ!!
慌てて体を起こしたが、体力もせっかくつけた筋力もこの半月で少し衰えてしまった私はすぐに次の行動が出来なかった。そして、扉は無情にも音を鳴らしレオンハルト様の訪れを知らせた。
コンコン
「アーネスト、入るぞ」
ガチャッ
え、返事もしてないのにっ!
レオンハルト様は一応ノックはしたものの、私の返事までは待たず扉を開いた。
「体調を崩したというが・・・」
そしてレオンハルト様はいつもの不機嫌そうな表情のまま部屋に入り、ベッドの上で上半身を起こした私を見て、固まった。
数秒間、私とレオンハルト様は見つめあった。
ど、どうしましょう。レオンハルト様も黙ったままだし、どうしたら。
レオンハルト様はその端正な顔をポカンとさせて黙っている。それに私は我慢できなくなり、声を掛けた。
「あ、あの殿下。このような状態で申し訳ありません」
「・・・え、あ、アーネスト、か?」
私に声を掛けられたレオンハルト様は確認するように問いかけた。
あの頃に比べればだいぶ変わったからなぁ、と私は今までの努力が少しは報われたような気がした。
「はい、アーネストでございます。殿下」
私の返事にレオンハルト様は私の頭のてっぺんからゆっくりと確認するように視線を下げていき
「っ!!み、みっともない姿をしてるんじゃない!」
「え?・・・きゃあ!!も、申し訳ありません!!」
レオンハルト様は怒鳴るように言った後、慌てて目線を私から外す。私も自分の状態を見て、慌てて傍にあったショールを肩から掛ける。
ベッドに横になっていた私はもちろんドレスなんて着ているわけもなく、生地の薄いベビードールのような夜着を着ている。腕はもちろん、肩や胸元まで開いたそれは惜しげもなくぽっちゃりな体をレオンハルト様の目に晒していたわけで。
みっともない・・・。レオンハルト様に言われた言葉が私の心に突き刺さる。
・・・・わかってたことだ。ダイエットで以前に比べれば細くなってきているとはいえ、レオンハルト様の周りにいる令嬢に比べればまだまだ太い。
そうだ、私はまだまだレオンハルト様の近くに行くことはできない。本当なら姿を見せることだって・・・。
レオンハルト様は以前の私の特に体型を毛嫌いしていた。見た目を重視するという意味ではない。両親を見ればそれは遺伝ではないことは明白で、つまりは私の怠惰が原因ということでそこが自分に厳しいレオンハルト様にとっては許せなかったようだ。
そんなレオンハルト様に醜い体を見せてしまい、私は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
沈黙が続く。正直、もう帰ってほしい。私自身レオンハルト様を見れずショールを握ったままベッドを見つめるしかない。
しかしこのままでいるわけにもいかない。
レオンハルト様は私の様子を見に来たと言っていた。恐らく陛下たちに言われて渋々来たのだろう。そうでなければ手紙で事前に来ることを伝えるはずだ。
私は意を決して、レオンハルト様を極力見ないように視線を彼の立っている床に向けて話す。
「・・・この度は体調を崩してしまい、夜会等に同席することができず申し訳ありません。見ての通り体調は回復しつつありますが、まだ完治はしておりません。申し訳ありませんが、もう暫く療養が必要なようでまだ外に出ることは叶いません」
これだけ言えば、顔を見に来たというレオンハルト様も帰ってくれるだろう。私の予想通り「そ、そうか」と返事がある。しかしそれ以降、レオンハルト様は話すことも動くこともない。私は不思議に思い、視線を上げレオンハルトの顔を見ると彼と視線がぶつかる。すぐにその視線は外れたが。
「あの、他に何かご用事がおありでしょうか?」
それでも何も言わないレオンハルト様に、失礼を承知で話しかけると、彼は少し慌てたように視線を彷徨わせる。
「い、いや。・・・その、また来る」
「え?」
レオンハルト様はそのまま部屋を出て行ってしまった。
また?またって、どうして?
・・・・あ、社交辞令というやつかな。うん、腹黒だけどレオンハルト様本当は優しいし、きっと病気で弱った私にも優しくしてくれたんだ。でも、きっともう来ないだろうな。言葉をそのまま鵜呑みに出来るほど、私は自惚れていない。
うん、とりあえず病気を治して少しずつ体力回復とダイエットを再開しないと!
次から一日おきくらいに一話上げていきたいと思います。