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決着

やっとここまで来ました。

もう少しお付き合いください。


リーディアは信じられないとレオンハルト様を見ていたけれど、視線を下げて私を見てきた彼女の目には隠しきれない嫉妬と憎しみの色が浮かんでいた。目だけではなく表情も、心なしか体も微かに震えているようだった。


「なんで、どうしてよ・・・。私がヒロインでしょう?主人公は私なのよ。あんたは悪役、踏み台、場を盛り上げるただの要因のひとつなの!無様に舞台から退く運命なのよ!!・・・なのに、なんでレオンハルトの隣に立っているの?どうして抱きしめられてるのよ!そこは私の場所よ!退きなさいよ!!」


徐々に大きくなる声がその場に響き、リーディアはその勢いのままもう一度私に手を伸ばしてきた。

しかし、その手が私に届くことはなかった。


「っ!何よ!離しなさいよ!!私はヒロインなのよ!主人公なの!!」


リーディアはそれまでの不満を吐き出すように自分はヒロインなのだと、デブでブスな悪役令嬢は断罪されるべきだと喚いている。それをいつの間にか近くに来ていた騎士により動きを封じられた。それでも変わらず、自分はヒロインでデブスな悪役令嬢にレオンハルト様は渡さないと主張している。


というか、私もうデブではないんですが・・・。

美的感覚は人それぞれだから、ブスではないとは言いきれないけど。


初めは何事かと驚きの様子で見ていた周りの目は今や冷ややかなもので、その中には彼女の友人の姿も見られる。

リーディアはそんな周りの様子に気づかず、ひたすらに同じ主張を繰り返している。はぁと溜息が上から聞こえてくる。


「レオンハルト様?」

「まったく。時間の無駄だな。・・・連れて行け」

「はっ」


レオンハルト様の声にリーディアを押さえていた騎士が応える。

レオンハルト様は冷ややかな目のままリーディアを見ている。そこにはもちろん欠片の愛情も含まれていない。


ここまで来ても私は心のどこかで不安だったのかもしれない。最後の最後にヒロインを選び、私は捨てられてしまうかもしれないと・・・。これまでのレオンハルト様の態度からすれば考えられないことだとわかってはいたが、それでも不安だったのだ。でも、レオンハルト様は今まさに私の目の前でヒロインであるリーディアを切り捨てようとしている。


本来であれば、ヒロインであるリーディアが幸せになることが物語として正しい姿なのかもしれない。同情や罪悪感を覚えないわけではないが、正直リーディアより私を選んでくれたことに対する喜びの方が何倍も大きかった。


騎士がリーディアの腕に手を掛け連れて行こうとした時、一瞬の隙を突いてリーディアが騎士の間を通り抜け叫びながら私の前に躍り出る。


「デブでブスなあんたなんかにっ!!」


リーディアが勢いのまま上げた右手が私に向かってくる。

避けられないっ!そう思った私はギュッと目を瞑った。しかし衝撃はいつまでたっても襲ってはこなかった。


・・・あれ?なんかついさっきも同じ事があったような。


私はそう思いつつゆっくりと目を開ける。すると私に届く直前のところでレオンハルト様が腕を掴んでいた。それはもう力入ってます!というのが見てわかるほど、思いっきり。


「っ痛い!!」

「・・・貴様、アーネストに対し暴言だけでなく手まであげるか。この国の刑罰に死刑がないことが幸運だったな。・・・でなければ俺自ら刑を実行しているところだ」

「っ!」


私からはレオンハルト様の横顔しか見えないけれど、威圧感が半端ない。私に向けられているわけでもなく、横にいるだけなのにこの圧迫感。向けられている本人は生きた心地はしないだろう。現にリーディアは興奮で赤くなっていた顔を青くさせ、先ほどとは違った意味で震えている。立っているのもやっとの状態のようだった。レオンハルト様が腕を掴んでいなければこの場に座り込んでしまっていただろう。


「連れて行け」

「はっ」


今度こそ騎士に連れられ、ふらついた状態でその場を去っていく。そしてその姿が扉から出て完全に見えなくなったところで、私はそれまでギリギリで保っていた緊張が切れ足に力が入らない。それに気づいたレオンハルト様が私を支える腕に力が入ったのがわかった。


終わった・・・?


力が抜けてしまった私に対し、レオンハルト様は緊張が解けたのだと勘違いしたようで、もう大丈夫だと耳元で囁くように声を掛けてくれた。

私がレオンハルト様に大丈夫だと伝えようとしたところで、騎士の一人が近づいてきてレオンハルト様の名を呼ぶ。

たぶん今後のことなど色々あるのだろう。レオンハルト様は私に心配そうな視線を向ける。


「私は大丈夫ですから行って下さい」

「・・・わかった。すぐ戻る」


そう言って私を支えていた腕を外し騎士と共にその場を離れる。私がその後ろ姿を見送っていると「アーネスト」と後ろから声が掛けられる。

声はお義兄様だ。私はそれまで動かなかった、いや動かせなかった体を動かし、勢いよく振り向いた。


「おにい」


それが良くなかったのかもしれない。

視界にお義兄様が入ったと認識した瞬間に視界が暗くなり、体が思うように動かせなくなった。


あ、私、気絶するーーーーー?




なんて、冷静なのか呑気なのか、気を失う直前に思ったことはそんなことだった。


次は少し遅くなると思います。(今までも遅かったですが(汗))

あと、一、二話で終わると思います。

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