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涙のわけは。

楽しんでいただければ嬉しいです。

今回は少し長くなってしまいました。


お父様たちのところに行けば、お義兄様もいて三人にレオンハルト様から待つように言われた旨を伝える。それに対しお母様は笑顔でお父様は少し渋い顔でお義兄様は苦笑しながら、行っておいでと言ってくれた。お義兄様には庭園まで送ってもらうことになり、その途中レナイナたちにもお別れの挨拶ができた。




「お話とはなんでしょうか?」

「まぁ、なんとなく分かるけどな」


庭園に向かうなかお義兄様に少しの不安を溢す。不安そうな顔をしていた私に「大丈夫だよ」と安心させるようにお義兄様が声を掛けてくれる。

そういえばお義兄様とレオンハルト様は同級生で友人だったと今更ながらに思い出す。何か聞いているのかとお義兄様の顔を見つめると、お義兄様は少し困ったような顔をした。


「話の内容までは知らないからな。ただなんとなく分かるってだけで」

「その分かる内容が知りたいのですが」

「あー、俺から言うことじゃないし。大丈夫だって悪い話じゃないさ」


そこまで言われれば無理に聞き出すことも出来ない。

でも先程のレオンハルト様の様子から悪い話じゃないとは思う。というか、そう願いたい。上げて落とすなんてことしない・・・よね?


気がつけば庭園の入口まで来ていた。


「じゃあ、俺は戻るけど」

「はい、ありがとうございました」


お義兄様は軽く手を振りながら来た道を戻っていった。私もその後ろ姿を少し見た後、庭園の中央にある東屋に向かって歩き出す。

あんなに見た目もよくて面倒見の良い兄だなんて、以前のアーネストは損をしていたと思う。私だったらあんなに素敵な兄ができたら喜んで仲良くなったと思う。実際仲良くなれて嬉しいし。

じゃあ、なんでアーネストがロイドを嫌っていたかと言えば簡単な話、ただの嫉妬。小さい頃親を亡くして引き取られたロイドに対し、両親も同情的で寂しくないようにと何かと構っていた。それに両親をとられたと思ったアーネストが嫌がらせを開始する。で、結局ずるずると続けて気がつけばお互いが嫌って近寄らないという状況ができてしまった。

それでも、ヒロインがロイドに近づけばそれはそれで面白くないとヒロインに対し嫌がらせをするし・・・本当にアーネストは精神的にお子さまだった。そりゃ、ロイドだってレオンハルト様だって嫌になるわ。



そんなことを思って歩みを進めれば辺りは季節の花が咲き誇り、月の光に照らされた庭園は昼間とは違った雰囲気を醸し出している。白い東屋はそんな中にあって一層幻想的だった。

レオンハルト様はまだ来られていない。私は東屋のベンチに座り待つことにした。



お義兄様はあぁ言っていたし、レオンハルト様の様子も悪くはなかったけど、やっぱり不安は拭いきれない。

ゲーム自体始まっていないから何が起こるか分からない。

それに悪役令嬢の私自身外見からして変わってしまった。まさかここからゲームのような外見まで戻るわけないし。内面だって前世を思い出した時点で全然違う人間になったわけだから、あのゲームのような振る舞いはしない。

一つ懸念しているのはヒロインも私と同じ前世持ちで、私がやってもいないことをさもやったかのように振る舞われることだ。それについては今知る方法もないからどうしようもない。

もしそうなってしまった場合どうなうんだろう。レオンハルト様やお義兄様たちはやはりヒロインのことを信じてしまうのかしら。

今では大分打ち解け笑顔も見せてくれているお義兄様に前のような冷たい目を向けられるのか、レオンハルト様も・・・そう考えるだけで目の奥が熱くなる。


もしそんなことになれば私はどうしたらいいのか。ゲームの力が働き私がどう足掻いてもどうしようもなかったら・・・?


さっきは人になんと言われようもレオンハルト様を信じて頑張ると決心したが、ゲームの強制力が働いてしまったら、いくら私が頑張ったところで意味はないだろう。



ヒロインがレオンハルト様を選んだら、レオンハルト様も私ではなくヒロインを選んで、婚約破棄を言い渡されて、それで・・・。


頭が重い・・・自然と視線を足下に向ける。

これまで無意識に考えないようにしていたことが、次から次へと頭に浮かぶ。更にゲームで見たレオンハルト様とヒロインのスチルまで脳裏に浮かんでしまうとダメだった。

気がつけば目から涙が一筋流れていた。

慌てて拭こうとした時、前方から声が掛けられる。


「アーネスト・・・?」

「レオン、ハルト様」


視線を上げればいつの間に来ていたのか、あと数歩の所にレオンハルト様が立っていた。

私は涙を拭うのも忘れレオンハルト様に見入っていると、レオンハルト様は少し慌てたように近づいてくる。


「どうした?何を泣いている?」

「あっ、これは・・・」


そして私の顎を持って顔を固定させた。

こ、これは女子憧れの顎クイ!?・・・って、それより涙拭いてなかったっ!

まさか、この後ヒロインが出てきてレオンハルト様が前のように私を見るんじゃないか不安で泣いてましたとか言えないし。

なんとか誤魔化さないと!


「これは、その、夢を、そう!昨日見た夢を思い出してしまって!」

「夢?」

「はい!夜の庭園で怖い生き物に追いかけられる夢を見てしまって、それをつい思い出してしまったんです!」

「・・・」


うわーん、我ながら苦しいよー!

レオンハルト様だって全然信じてなさそうな目で見てくるし・・・。

でも、本当のことなんて言えない。

なんとか流してくれません?


願いながらレオンハルト様を見上げていると、私が本当のことを言わないと分かったのか軽く溜め息をつきながら指で頬を撫でられる。


「!」

「そういうことにしといてやる」

「え、あ、ありがとう、ございます?」

「ふっ」


おそらく涙を拭ってくれた指を意識していた為、咄嗟に何を言われているのか理解できず思わずお礼を伝えてしまう。そんな私にレオンハルト様は柔らかく笑った。


またその笑顔一つで私を幸福な気持ちにさせる。

私って本当にチョロいなと思うと同時に、彼は狡いなと思う。



レオンハルト様は私が先程まで座っていたベンチに私を促し、自分自身も隣に座った。


「待たせて悪かったな」

「いえ、それほど待ってはいませんから、お気になさらないで下さい」

「そうか。・・・それで、話、なんだが」

「・・・はい」


なんだか歯切れの悪いレオンハルト様に何を言われるのかとドキドキしていると、さっきまで余裕があるように感じたのに、視線を彷徨わせながらどう言おうか悩んでいるようだった。やっと言うことがまとまったのか若干私から視線を外しながら口を開いた。


「その、随分頑張ってるみたいだな」

「・・・え」

「いや、だから、・・・体のことだけでなくマナーや勉学も頑張っていると聞いた」

「あ、はい。・・・・ありがとうございます」

「・・・さっきといい、なんで礼を言ってるんだ」

「いえ、それは、その」


まさかレオンハルト様に知られているなんて、それに頑張ってることを認めてくれているような言葉を掛けて貰えるなんて思わなかった。だから自然とお礼が口から出た。

レオンハルト様に少し呆れたような視線を向けられ、なんと言っていいのかわからず口ごもってしまった。そんな私にレオンハルト様はまたふっと笑ってそれ以上追求することはなかった。


うー、こんなに笑顔を向けられるなんて嬉しいけど心臓に悪いよ-!

それになんだか私を見るレオンハルト様の目が柔らかいような・・・。気のせいかな?


なんだか居たたまれなくなって私から話を振ってみる。


「あ、あのマナーのことや勉学のこと、どうして知ってらっしゃったんですか?」

「ん?あぁ、ロイドからの手紙で書いてあったからな」

「お義兄様から・・・?」


お義兄様とレオンハルト様は友人だから手紙のやり取りがあっても不思議じゃない。それでも手紙の中で私のことが書かれていたと言われるとなんだか恥ずかしかった。


「そ、そうですか」


それだけしか言えなくて、またそれ以上レオンハルト様を見ていることが出来なくて、俯いてしまう。

そんな私の頭に照れたようなレオンハルト様の声が降りてくる。


「・・・俺の為、なのか?」

「・・・」

「いや、ロイドがそんなことを言っていたから」

「・・・・はい」

「そうか」


まさかそこまでばれているなんて・・・。確かにお義兄様に口止めしてなかったけど、本人に言わなくてもと思う。恥ずかしくて顔が熱くなってくる。

そしてとどめの一言がレオンハルト様の口から漏れる。


「・・・努力する人間は、嫌いじゃない」


絶対顔が赤い。さっき泣いたからなのか、また涙腺が潤んできた。

恥ずかしいのと頑張りを認めてもらって嬉しいのと、レオンハルト様の言葉が私の心に染み渡る。そして我慢できなくて目から涙が流れてしまう。今度こそ慌てて涙を拭う。


「おい、泣くことはないだろう」

「も、うしわけ、ありません。ただ、嬉しくて」

「・・・まったく」


呆れたように言いながらもレオンハルト様は私の肩を優しく抱いてくれた。隣にある暖かな温もりを感じ、更に涙が溢れてしまう。

そうして私が泣き止むまでレオンハルト様は肩を抱いてくれていた。



やっとここまできました。

ここから一気に・・・行く前にレオンハルトsideがあります。

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