異世界転生だけど、まさかの人物
他の連載も終わっていないのに、なにやってんだと言われるかもしれませんが、どうしても書きたくなってしまったので、やってしまいました。
これはすぐに終わる予定なので、ちょっとお付き合い下さればと思います。
そして、何番煎じと言われる悪役令嬢ものですみません。
現状を確認しよう。
私はまだ混乱している頭をなんとか落ち着かせて、記憶を辿る。
それは私の記憶であり、私の記憶ではないもの。
それは前世とよばれるもので、私は極々普通の女子高生だった。ちょっとオタクよりだったのは否定しない。
ゲームが好きな女の子でその中の一つのゲーム、名前はなんだったか覚えてもいない。けれど、キャラクターやシナリオは覚えている。ついでにいえばフルコンプしたから、どうすればどのようなエンドになるかも分かる。
そして現在の私はそのゲームの悪役令嬢。
異世界転生かっ!!と突っ込んだのは仕方ないことだと思う。
でも転生してしまったのは事実だし、私が悪役令嬢の立場にあるのも事実で変えることはできないから、そこはもう置いておこう。
ゲームは、私が十六歳になり学園で繰り広げられる。
今私は十四歳。
悪役令嬢というと、性格は最悪だが、容姿、スタイルは抜群というのがセオリーのはず。
けれど、私はそうじゃない。
容姿は元は良いはず。そう元。原型というべきか。
うん、現実逃避はやめよう。ここは素直に認めるしか無い。
私は目の前にある姿鏡に映る自分を見つめる。
そこには、腰付近まである艶やかな白銀の髪、瞳はラベンダー色。顔つきは若干ふっくら・・・いや初めにも言ったが、現実を見よう。
丸々とした顔にはニキビが浮かび、顔と首の境目は殆ど分からない。そのまま視線を落とせばボン、ボン、ボン・・・。
私はボンレスハムかっ!!と言いたくなるような体つき。
そう、私ことアーネスト・フィラルドはぽっちゃりと優しく表現出来ないほどデブだった。
私は鏡の前で項垂れる。
いや、知ってはいたが、自分がこの姿になるとは・・・。
思い出すきっかけは1週間前。ベッドから降りようとしてバランスを崩しベッドの脇のテーブル角に頭をぶつけたのだ。
いや、うん。何を言いたいかわかるよ。でもね、この体だとベッドから降りるのも一苦労なんだよ。
まぁ、そんな感じで頭を打った私は打ち所が悪かったらしく3日間寝込んだらしい。起きて近くのメイドがそう言っていた。
その寝込んでいる間に夢のような感覚で私は前世を思い出した。
そして私はここが今の現実で、もう戻れないということを自覚し更に一日寝込んだ。
起きてからは心の整理がまだつかない私は一日泣くか、呆然とするかのどちらかだった。周りもそんな私に気を遣ってか干渉は最小限だった。
あ、でも父と母は心配して時間があれば何度も顔を見に来ていた。
うん、普通に美形な両親でした。
時間を掛けて私はやっと落ち着いた、というより開き直った。
こうなってしまったものは仕方ない。
ここでこのゲームの内容をおさらいしておこう。
ありきたりな設定ながらスチルがとにかく好きだった。その設定だってありきたりだけど私が好きなものだった。
ゲームは平民の主人公が十五歳の時に魔法の才が発覚したところから始まり、お決まりの学園へ入学する。
基本魔法の才は貴族にしか現れないが、まれに平民でも魔法が使える者が現れる。大体が先祖に貴族の血が混じっていることが多いらしい。ま、貴族だったら愛人やらがいても可笑しくないから、そこからの流れだと思うけど。
そんな感じで学園に入学した主人公が出会う攻略対象者たち。
この国の王太子殿下、殿下の護衛である騎士、宰相の息子、侯爵家の次男、そして公爵家の跡取り(ちなみに悪役令嬢の義兄)
この五人。ちなみに私はメインヒーローのレオンハルト王太子殿下が一押しだった。
金髪碧眼の王子様。普段の一人称は「私」で物腰柔らかな性格だが、主人公と良い感じになると素が出て「俺」と言ったり、なんとも私好みだったのだ。
悪役令嬢はというと、公爵家の令嬢でレオンハルト様の婚約者。彼にラブ過ぎて明らかにうざがられているのにも気づかず、主人公に嫌がらせをする。ちなみに他の攻略対象のルートに進んだとしても嫌がらせをする。その理由は平民なのに学園に入学して、しかも貴族の美形な男と仲良くするのが気にくわないからという、なんともな理由からだ。容姿は今と殆ど変わらない。十六歳になりすこしだけ大人っぽくはなるがそれだけ。
令嬢なら美を意識しても良いはずだが、両親が可愛がり嫌いな物は食べず、好きな甘い物ばかりを食べた結果がこれ。
そうですよね。納得の理由。だから両親が美形であっても悪役令嬢の私は同じでは無い。
ついでにいうとレオンハルト様とはもちろん婚約している。政略からくるものだから仕方ない。それでもアーネストは六歳の時に初めて見たレオンハルト様に恋をした。その頃には既にぽっちゃりな体型だった。レオンハルト様は一瞬顔をゆがめそうになったが、すぐに笑みを浮かべていた。
それをアーネストは「レオンハルト様は私のことが好き!」と勘違いして、何かに付けては城に行きレオンハルト様に付きまとっていた。
初めは優しくそれでもあしらうように接していたレオンハルト様だったが、それがずっと続けばさすがに顔にも態度にも出してくる。それでも頭の中お花畑なアーネストは恥ずかしがっているだけだと良いように解釈。
我ながら痛い子だと思う。
それでも、ゲームが始まる前に思い出したのはギリギリセーフ!いや、婚約している時点でアウトかもしれないけど。
正直婚約破棄は難しいと思う。この国では婚約破棄はよほどの理由がない限りはできない。それこそ王族だとしても一度決まってしまえば破棄することは容易ではない。
ゲームの通りに進めれば破棄できるが、それだとその先は国外追放か処刑しかない。それに誰かに嫌がらせをするなんてやりたくないし、多分私は出来ない。
だったらこれから出来るだけ改善出来るところは改善していくしかない。
前世では将来は好きな人と結婚したいと普通に思っていた私からすれば、相愛ではない人と結婚することに抵抗がないわけじゃない。それでもアーネストとして生きてきた記憶の中で貴族である責任なんかも分かっているから、納得するしかない。
唯一の救いは王族、貴族であっても一夫多妻制ではなく一夫一妻制であることだ。
さすがに他の女性と男性を共有するなんてことは、生理的にも受け付けられない。
まぁ、そのせいでレオンハルト様が主人公とくっつくためには婚約者である私が邪魔なんだけどね。
でも、今の私はレオンハルト様に好かれるどころか嫌われている。さすがに政略結婚とはいえ、相手が自分を嫌っていると知って結婚出来るほど私も人間出来てない。せめて嫌いからどうでもいい位に持っていきたい。・・・どっちも辛いけど。さすがに会う度に嫌な物を見るように眉間に皺を寄せられたりするのは耐えられない。
と、なればやることは一つ!!
自分磨きを始めましょう!!
まずは説明ですね。