閑話 絡繰返される物語
ここはスカイの町。
その一角に、『寺子屋』という一種の教育施設がある。
かなり昔の異世界人が建物から作ったらしく、幾多もの改修工事を経て今でも使われている。
放課後の演習場では、今日も子供達が遊んでいる。
「それそれー!」
「わっちょっやめてよ双夢ちゃん!」
銀髪の少女が相手役の桃髪の少女を長さの違う二本の木刀で滅多打ちにしている。
桃髪の少女は一本の木剣で必死に受け止めようとはしているのだが、手数についていけいない。
「あとで私が回復させてあげるから!」
「そういう問題じゃないよぉ!?」
周りから観戦している子供達の声援の内容も、どちらかというと冷やかしや注意の声の方が多い。
「せい…やっ!」
「うわっ!?」
少しのタメから放たれた一撃は木剣を叩き折った。
「やったーっ!私の勝ちー!」
「うぅ…だから嫌だったのにぃ…」
「おつかれさま!『回復』!」
「これが無かったら全力で逃げてたよ…」
毎日、双夢を除いた数人でジャンケンをし、残った一人が双夢と模擬戦をさせられるという、半ば罰ゲームのような遊びが行われている。
「やっぱ双夢は強いなー」
「双夢ならあのサルトさんよりもスゴイ冒険者になれるかもな!」
「なれるかもじゃなくてなるの!」
サルトとはこの町に時々武器の補修にやってくる☆6冒険者だ。
双夢と同じように両手に獲物を持つスタイルで、子供達からはかなりの人気を誇っている。
少し前に遠くへ旅立ったばかり。
「うんうん!それで…カッコいい夫さんを見つけて…」
「夫婦で冒険者で世界中を…」
「二人とも!私はそういうのに興味ないって言ってるでしょ!」
そうやって日が落ちるまでじゃれあっていると、足音が聞こえてきた。
「お前らそろそろ帰る時間だ。親御さんに迷惑かけないうちに帰りな。」
「あっ先生!……え!?もうそんな時間!?」
「嘘だろ!?今日の晩御飯は筍だから早く帰らないと!」
「そういえば最近近くの山で…って聞きなさい!」
「えっ?よく聞いてませんでした!」
「正直でいいがきちんと聞きなさい。あと一回しか言わないぞ。」
最近、大きな街へ行くための山道に盗賊がいて、実際に襲われた商人さんがいるらしい。
「だから親御さんにも気をつけるように伝えておいてくれ。」
「はーい」
「分かりましたー」
「…どことなく心配になる返事だな。とにかく、気をつけるように!」
先生と手を振って別れ、家へと駆けて帰る。
「よし!新記録!」
これも密かな鍛錬。
日々の鍛錬がモノをいうと冒険者の先輩達から教わっているのだ。
「双夢お帰りなさい。寺子屋はどうだった?」
「ただいま、お母様!楽しかったよ!」
「そう、なら良かったわ。」
この人は双夢の母親の雨鳥。
父の鍛夢とはいつ出会ったかもわからないが、とってもお似合いな夫婦ということは見るからにわかる。
双夢の端麗な顔立ちは母親、清らかな銀髪は父親譲り。
そして持前の活発さと相まって、不思議と人を惹きつける。
どれだけ無茶をしでかしても近くに助けてくれる友人がいる、というのはどれだけ助けになったことだろう。
「そんな頑張ったご褒美に…今日のご飯は海鮮鍋よ」
「やったぁ!」
「珍しくお魚が売ってて…良かったわね」
「うん!お母様、ありがと!」
頭の感触に目を細めながら居間へ。
既に父は鍛冶場の片付けを終わらせて茶を飲んでいた。
「お父様、ただいま!」
「おお双夢…おかえり。」
茶飲みを再開した父を横目に、祭壇で祀ってある初代様の作った二振りの刀を拝む。
今の双夢では亜空・時空之双刀という名前しかわからないが、それでもとても強いことはわかる。
最近は刀身の手入れも始め、なんとなくどうしてあげるべきかがわかってきた気がする。
夢中になって刀に世話を焼いていると母様が鍋を持って箱の上に乗せた。
最近発明された小型魔石コンロで、熱を維持する程度の温度が出せる。
かなりの値段がするはずなのだが、知り合いの伝手でとても安く入手できたと父様が酒の席でしつこく自慢してきたのを覚えている。
「いただきまーす!」
お魚がダシと合わさって美味しい。
「お前こんな美味しい魚どこで…」
「ふふふ…ひみつですよ…あ、な、た」
「…母様と父様があつい…」
お鍋が急に冷えた気がする。
でも美味しいものを無駄にするのも悪いし、見て見ぬ振りをしながら黙々と食べる。
「いやぁ…よくお前みたいなやつと結婚できたよなぁ…」
「あなたは昔からカッコ良かったですよ…?」
「昔といえば…お前…n」
「……?」
「花香さん自然に首にそれを当てないでください死にます」
「…今はご飯中ですよ、二人共。」
家族揃って団欒してご飯を食べる。
これがいつまでも続けばいいのに。
……ってナ。
「…?今何か聞こえたような…」
「双夢?どうかしたの?」
「ううん、なんでもない」
「そう…ほら、早く食べないとお父さんが全部食べちゃうわ。」
「あっちょっと!父様!それ私が狙ってたやつ!」
「…置いとくのが悪い」
「あ、な、た?」
そうやって時は過ぎて行く。
満ちし月が登るまで。
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場所は変わりて山の中。
噂になっていた盗賊のアジト。
「親分…本当にいくんですかい?」
参謀が確認するように話しかける。
「俺様を誰だと思ってるんだ?あの忌々しい冒険者共もいない。もう俺様を遮るものはない。だろ?」
「さすが親分!」
「一生ついていきます!」
親分の言葉でアジトに歓声が満ちる。
「それで…女は……」
「…数人なら好きにしろ」
更に大きい歓声が満ち、外は一切の音無し。
新鮮な魚を流したのもこいつらの仕業だ。
警備を薄くするために決して少なくない出費がかさんだが、それよりも大きな収入を見込んでいる。
「この盗賊団も大きくなったか…野郎ども!これが終わったら祝杯と行こうぜ!」
『応!』
それぞれが武器を取り…今、出陣の時。
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既に月も沈み、起きているのは衛兵くらいだ。
…それなのに、双夢はなぜか胸騒ぎがして眠れない。
寝ようとは試みたが、すぐに目が覚めてしまう。
気を紛らせるために窓から空を眺めていたのだ。
「…なんだろう…何かが……っ!?」
闇を打ち消すほどのけたたましい鐘の音が街を覆う。
「盗賊だ!盗賊が来た!」
「父様!母様!逃げよう!」
鐘とともに聞こえてくる声でついに反応して二人を揺らし起こすが、全く起きない。
まるで、起きない人形を揺らしているように。
「起きて…起きてよ…!」
既に外から戦闘音が聞こえる。
寝室から居間へといき、亜空・時空之双刀を回収。
何かあればすぐに回収して隠れろという言いつけを守ったのだ。
隠れたのは父の鍛冶場の炉。
火を焚いてない時は小さい双夢にとってはいい隠れ場所だ。
「…うぅ…母様と父様…大丈夫かな…」
いつまでそうしていただろう。
近くから戦闘音がすることはなくなった。
もう安全だと思い、外へ出てしまった。
「…ん?おい!女のガキが隠れてたぞ!武器も持ってる!」
運悪く、下っ端が我が家を荒そうとしていたところに遭遇してしまったのだ。
「私達の家から出て行け…!」
抜刀。
「おいおい…子供ごときが…」
跳躍。
「俺に…」
「斬」
悲鳴も上げさせずに虫を駆除した。
そう。これは虫。人の形をした心のない虫。
「…行こう。私達の家を守るために。」
この時、初めて双夢は言いつけを破った。
街を守ろうという正義感からの暴走だったが…これが、彼女の運命を狂わせる事になった。
外は既に赤い。
よく見ると虫《男》達の物ばかり。
誰かが既に戦っている。
助けないと。
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「見つギャッ」
「とm」
虫駆除に街を疾走すること10分ほど。
虫達の固まっている場所を見つけた。
「あそこに…頭がいるはず…!」
街をこんなにもメチャクチャにしたこいつらを…
「生かしてはおけない!」
脇目も振らず邪魔するものは切り捨てる。
全く斬れ味が落ちず、最高のコンディションを自分で整えてくれるこの双刀のおかげだ。
しかし、悲しいかな。
快進撃もすぐに終わった。
「カハッ…!?」
いつの間にか目の前に現れた大男に、近くの壁まで殴り飛ばされてしまった。
「おうおう嬢ちゃん…俺様の可愛い家族達に好き勝手やってくれたらしいじゃねえか…ええ?」
その大男は、言わずもがな街を襲った盗賊団の親分だった。
「こりゃ…生かしてはおけないなぁ…?」
ジリジリと汚い笑みを浮かべて近づいてくる。
「ひっ……」
あの一撃だけで、血があちこちから流れ出ている。
致命傷で済んでいるのが奇跡と言えるレベルだ。
もうなんでもいい…なんだっていい…
「まずは…お前の身体から壊してやるよ…ハハハハハ!」
二度と…負けない力をください…
気づけば双夢は何も動いていない世界にいた。
自分も動けないが、視線だけは動く。
そんな状態。
「望みヲ言エ。ドんナ願イでも叶エテやろウ。」
目の前には、いつのまにか黒髪の女の人がいた。
何かはわからない。でも、
「力を!もう何にも負けない力を私に!」
持つもの全てを吐き出した、魂の叫び。
「…あァ。分かッタ。」
女の人はただそう呟いただけで、消えてしまった……
「…っ!?」
身体の中に熱く、暗く、力強いものが生まれたのを感じる。
『オレの名前ハドール。説明は…後ダ。肩慣らシニそイつデモ殺ラしてもらオウ。』
「…ダメ…私が……!」
しかし身体が思ったように動かない。
『コの身体…もうボロボロだゼ…?』
「いい…から…!」
自分でも分かっているが、それでも。
「絶対に…私が!」
『……分かッタ。』
「よかっ………」
『今日ハ…休メ。こレ以上…レの……な……』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこからの光景は凄惨なものだった。
双夢の刀を赤黒く染め上げ、身体が夜と同化した。
主の望み通りの力を振るい、駆除を遂行。
手始めに、目の前にいた大きな吠える虫から。
そして、近づいたモノから命を落とす。
逃げようとする者もいたにはいたが、叶うハズがなかった。
ヒトで無き者から逃れられるわけがない。
果てには気が狂ったか、お互いに血を流す。
血で血を洗う終わらない争い。
狂気に満ちた嘲笑と痛みに震える嬌声が響き渡る。
最後の二人が残るまで…
物も。
声も。
魂も。
何も、あげない。わたさない。
お前らなんかに…
「…モウ起きたカ。」
お日様が出て、周りを見渡せば、赤い痕がたくさん……
「………すまナイ。引キ止められナカっタ。」
嫌…嫌…イヤ…いや……先に…行かないで…
「二人かラノ伝言ダ。『その力、間違った事に使わないで。不甲斐ない親ですまない。』だト。」
やめて…もう…
「厳しイ事ヲ言ウガ、現実。こレが…現実ダ。」
やだ…
「一応、落ちテイタ物は拾ってオイタ。空間収納でイツでモ出せル」
……わかった…後は…
「分かッタ。任せロ。」
…ごめん…寝る…
「おヤすミ。オレノ………」
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あれから数年が経った。
街は復活したが、中身は変わった。
今や、知っている人は誰もいない。
建物も全て潰れたし、寝床に神殿を間借りしていた。
それも今日で終わり。
「…ついに…冒険者になれる…!」
意を決して中へと踏み込む。
暖かい視線を感じる。
ギルドが復活してからほぼ毎日のように模擬戦をしているため、ここの殆どの人とは仲が良いのだ。
「今日は…冒険者登録、お願いします!」
「…はい。」
悲しそうな表情をして登録シートを渡してくる受付嬢。
いつもいつも親代わりのように世話を焼いてくれていた、特に仲の良かった人。
「そっかー…ついに…行っちゃうのかー…」
「うん。私の…私達の、夢だったから。」
書き終えたシートを渡す。
「はい。頂きました。…ちょっと待っててね。」
酒場エリアのおじさん達の所へ。
「もう嬢ちゃんもそんな年か」
「なんだったら俺もついて行ってやろうか?」
「お前はただ一緒に行きたいだけだろ」
「何かあったらいつでも呼べよ?怪我させられたら…そいつに教育しないと…」
「飴ちゃん食べるか?」
「肉いるか?」
「手入れは十分か?」
「そんな装備で大丈夫か?」
「わかったから!みんな落ち着いて!」
見た目は厳ついが、みんな優しい。
たまに荒い人もいるが、すぐ仲間入りする。
…何故ダろうナ
「というか!この中で私に負けなかった人居る!?」
『…………』
つい数日前に、最後の一人にもなんとか模擬戦で勝利した。
実質この支部の最強というわけだ。
「だから心配しないで!問題ないから!」
「双夢ちゃんがそう言うなら…」
「怪我するなよ…?」
「変なのに絡まれたらすぐに言うんだぞ…?」
たわいない話をしばらくしていた。
何せ町のアイドル的存在が出ていくのだ。
その騒ぎを聞きつけた町中の人達が集まってくる。
既にどんちゃん騒ぎのお祭り状態。
ギルド内で怒られて外の広場で出発祭が行われるほど。
これには双夢も引いた。
いつも厳格な神殿の爺ちゃんが派手な踊りを披露していたり、空には綺麗な魔法が浮いている。
町の期待を、全て背負う。
その覚悟を改めて持ち直す。
そして、待ち望んだ時が。
「……双夢ちゃん。」
「はい。」
どこから持ってきたのか分からない特設ステージ。
町を一周してギルドに戻ってくると設置されていた。
「これが、冒険者カードです。」
両手で受け取る。
作法も全く分からないが、昔来ていた旅劇団の真似をしてみる。
…遠イ記憶。
「ありがとう…ございます…!」
涙が溢れる。
「双夢ちゃんのランクは最初から☆6だよ。ギルマスが本部に熱弁して、なんとかそこまでなら許可をもらえたの。」
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ギルドカード
所属ギルド 冒険者
登録者名 双夢
ランク
☆☆☆☆☆☆
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これが…私達の…!
「本当に…ほんっとうに…ありがとうございます…!!」
「あ…あと……これ…も…」
お姉さんももう涙が隠せていない。
「これ…」
腰に巻くポーチとベルトを合わせたようなもの。
「ぐずっ…マジックバック…知ってるでしょ…?」
高価で、安いものでも中堅冒険者でも買うのを躊躇うぐらいにはいいお値段がする。
特殊な製法で作ることができたり、ダンジョンからたまに出現したりする。
「こんなに…」
中には色々なアイテムが入っている。
「みんなからの…餞別だって…」
飛び交う歓声。
「何から何まで…」
「双夢ちゃん!どこへ行っても!何をしてても!この町を!この人達を!絶対に…ぜーったいに…忘れないでね!」
勿論返事ハ
「はい!!」
…じャ、行くカ。
「門のところまで一杯人が…」
コイツら、お前ノタメに色々しテイたカらナ…
「行くよ」
オウ。
『正門を開けろ!』
滅多に開かれない正門が開かれる。
広大な世界が見える。
これから何をしよう。
いつか本部へは行きたい。
それにそれに……
後にシロ。後ロが待っテル。
…言われなくても分かってる。
「みんな!行ってきます!」
『いってらっしゃい!私《俺》達の双夢ちゃん!』
……ダカら…双夢ハ…
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「帰ってきました…コサカ!」
冒険者歴7年…だっけ。
もう曖昧になっちゃった。
恋もした…まさか相手が…でも、また会うって約束したから大丈夫。
ドールが女だった時は驚いたけど、いい話し相手になってくれて、ありがと。
余計なお世話ダ
そろそろ身を固めないと…誰か雇ってくれる人はいるかな…?
………そノクせ、条件に自分ニ勝テる人っテ盛り込ムナ
え?何か問題ある?
…もウいイ。
ここのギルドはいろんなギルドの支部も入ってる。
行政の集中とか誰か言ってたっけ。
そのおかげで、ここは色々な手続きが早く済む。
「これ、お願いします。」
私が出したのは、従者契約の書類。
修練の為にはお金が必要。
それを貯める為に…仕方ない事。
「分かりました。冒険者登録の方は…?」
「そのままで。」
「承知しました。しばらくお待ちください。」
フカフカのソファーに腰を下ろす。
こんなソファー久しぶり。
都会だカラなァ
待つこと1分ぐらい。手続きが終わった。
これで、冒険者の双夢から…何処かに雇われている双夢になるだろう。
でも、出来ることなら…その人とパーティを組んで更なる冒険に…
「これが証明書です。求人期限は一年です。取り下げ、及び更新時は、これを持ってきてください。」
そのままギルドの中にある宿へ帰る。
「疲れた…」
ベットへ倒れこむ。
「オつかレ。」
「ドール…膝枕して…」
「…こイ」
フラフラとした足取りで声の元へ。
「…あー…癒される…」
「…………」
耳掻きでゴシゴシする度に変な声が聞こえてくる。
「ナァ…その声、ナんとカなラナいカ…?」
「何がー?」
「………ヤっパリいイ。」
「変なのー…」
……なんだか眠くなってきた…
「…おやすみー…」
「……おやスミ。…」
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目を覚ますと、外が騒がしい。なにか…
「双夢くん、いるかい?」
「…はーい…着替えますから…ちょっと待ってください…」
…ギルマスかー…
ひとまず着替えて外へ出る。
「何かありました…?」
「君を雇えそうな人が来たんだよ」
「…え?」
あの条件で…
「きちんと条件は伝えましたよね?」
「勿論さ。下の修練場に既に待たせているから、早く準備してくれ。」
「分かりました」
双夢、気合入れロ。
刀を握る手にも力が入る。
「ほう…それが……じゃ、行こうか。」
少し急ぎ足で向かう。
相対するらしい男は、黒髪…のような…
…オい…あイツの魂…何処かおカシイゾ!?
私も変な感じがする。
何人分かの魂が固まっている気が…
「お待たせしたかな?この子が双夢君だ。」
ギルマスが呑気に言っている。
自分が関係ないからって…
「…よろしくお願いします。早速ですが、一つご忠告を。私は手加減はしませんし、怪我をしたり、最悪の場合命を頂くことになるでしょう。それでも、私がいいんですね?」
そしてこの人のステータス…かなり高い気がする。
手加減なんて出来ない。
……元々するつもりなんてないけど。
「分かってる。それじゃ、ルールを決めようか」
…そっちに有利なルールなんて決めさせない。
「そうですか…ルールはこちらで決めています。」
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ルール
1,試合中の武器の変更は禁止
2,スキルの使用は無制限
3,決着の方法はギルマスの制止、どちらかの死亡及び降参のみ。
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「何か不都合はありませんか?なければ早速やりましょう?」
戦闘ダ……少シぐライ出てモイいダロ?
殺さない程度ならね。
「それでいい。ギルマス、開始の合図を」
「ん。コイントスでいいよね?銅貨が床に落ちたらスタート。簡単だろう?」
コイントス…私、こっそり練習してたの知ってますよ。
「いくよ」
準備ハ
万端
殺る気ハ
最高
…………行くよ