第7話 カネの価値は移り変わるモノ
傷は双夢に回復してもらったが、破れた服だけはBOYに押し付けてギルドへ向かった。
溶岩のところにいた巨大竜の素材を回収しに行く為に。
ギルドに入るなり倉庫へと案内された。
目の前には大量の素材がある。
「よし、来たね。結果はご覧の通りさ。…肉は魔法鞄の中に入れておいたから安心してくれ。」
「…全部持っていってもいいか?」
「君がいる分だけ持って行ってもらえるかい?残った分だけ清算するからさ。……でも、魔法鞄に関しては僕の所有だから中身だけにしてくれ。」
「了解」
まず目に入ったのは一対の巨大な角。
……横でギルマスが欲しそうな顔をしているが容赦なく収納。
革も半分くらい貰い、棘や鱗も大量に。
その他の細かいものも貰っていく。
何に使えるかは知らないが…持っていて損はないだろう。
「…奥にある骨は…」
「……学園に売ってあげてくれないかい?貴重なサンプルを是非欲しいって学園の使者が来てね…」
「……あー…分かった。…但し、金は貰うからな。」
学園と聞くと金蔓しか思い浮かばない。
「分かってるさ。あれで100000000チェインを出すらしいから、清算の時に大金貨で渡すよ。」
了承し、取捨選択へ戻る。
今の所一切手をつけていないのは…瓶詰めされたグロい何か、内臓、血、肉。
「…で、この瓶詰めはなんだ?」
流石に気になる。
「棘に繋がっていた毒、だね。持っていくなら最低でも一本だけでも残しておいて欲しいな。」
「………そうか」
8本のうち半分を貰っていく。
「マトモな使い方するよな?」
「そうだね……とても強力な毒だから、大物を狩る時に矢に塗るかな。」
「ならいい」
次は….
「内臓の用途は何がある?」
「血やマンドラゴラなどと混ぜて薬を…すまない。昔、僕の里で簡単に教えられただけなんだ。」
「要するに、薬の素材ってことだな。」
「…それでいいと思うよ。」
これもまた半分程貰っていく。
「扱いに困るな……」
血も瓶に入ってはいるが…
「量がが多すぎる…」
恐らく、100本はある。
……仕方がないので90本を貰っていく。
…隣からの視線が痛い。
「持って行って欲しくないなら…」
「…いや僕はそこまでなんだけど…よく売れるからさ…信憑性に欠ける効果もあるけどね。」
「へぇ…………」
金のため、ギルドに還元するため、仕方がないから、本当に渋々だが、合計30本を残すことに。
「………君ってそんな顔するんだね…」
「なんのことだか」
カネは必要だから仕方ない…世界の法則よりも確実にな…
「肉は出来るだけブロックで入れているよ。一つあたり金貨一枚…いや、五枚で買い取ろうと思う。」
「分かった。」
ふむ…色々な部位があるな…
「分かるならでいいんだけど、オススメなのはやっぱり腹のお肉だね。柔らかくて美味しいよ。あと、尻尾も意外と美味しくて……それに……」
…全ての部位を半分ずつ貰っていく。
「…あっでも………で………から……」
話を無視して収納する。
数が数だから少し面倒くさい。
「…要するに、気をつけろって事だな?」
「んー……まぁそうだね。覚えたかい?」
「覚えたから精算を頼む。」
くだらない長話を聞くほど暇じゃない。
「分かった。ちょっと待っててくれ。」
台の上に残った品を回収しつつ精算された。
「えっと…締めて329190000チェインだね。部屋に戻ったら直接渡すよ。先に行っておいてくれるかい?」
「了解」
部屋へ行くのも慣れたもので、迷わず到着。
無駄に柔らかいこのソファーは、何処かの国の家畜の魔物の毛でできたソファーらしい。
自分の部屋だけあってカネをかけてるなあのギルマス。
シンプルながらも良いものばかりを置いている。
こういう部屋はいつかの参考にさせてもらおう。
「待たせたかい?」
「いや、そこまで待ってない」
ギルマスも席につくと、テーブルの上に金と銀の貨幣を重ねて並べた。
「これが大金貨32枚の山で、その横の山が金貨20枚の山4つと12枚。そしてこの大銀貨が9枚、だね。」
収納しつつ確認。
…抜けは無い。
「確かに頂戴した。」
「いやぁ…最近、偶々資金源がうちに来てくれてね…本当に助かった…またこれを売れば更にお金が増えるし…今年はランキングの首位争いにいけるかな…?」
「…わしに聞かれても困る」
こっちに来たばかりなんだから細かいところは知らん。
「ははは…すまないすまない。とにかく、ありがとう。」
「こちらこそ大量の現金を貰えて助かった」
これで取引で大量にブツを買い漁れるな。
「そう言ってもらえるなら良かった。」
もう用はないし早く帰るか。
「…それで、スキルポイントを買う気はないかい?」
「…あ?」
スキルポイント…?
「おや?知らないのかい?…珍しいね…まぁ、いいか。一応説明させてもらうよ。」
・スキルポイントはレベルに合わせて増加する。
・スキルの取得と強化に使用できる
・アイテムを購入することもできる。
・3Pを使用して2P取得できる「スキル瓶」を生成できる。
・スキル瓶はギルドで大銀貨3枚で売却、大銀貨5枚で購入できる。
「…それで、買うかい?」
そんなものが…
「よし、ありったけを頂こう」
「在庫はどれくらいあったかな…少し確認してくるよ」
少しの間を開け、大きな箱を持って戻ってきた。
「これが今ある分のスキル瓶だ。軽く1000本はあると思う。処分価格で、大金貨五枚でどうだい?」
最低保証2000p…迷うまでもない。
「買おう」
「そう言ってくれると思ったよ。」
先程受け取った大金貨を五枚渡す。
「……うん。キチンと受け取った。箱ごと持っていってくれていいよ。魔法鞄ならぬ魔法箱。僕からの餞別みたいなものさ。存分に役立ててくれ。」
「そうか…じゃ、有り難く使わせてもらう。」
箱ごと収納する。
「ギルドに死蔵していてもそこまで役に立たないからねぇ…気にすることはない。」
「分かった。じゃ、また今度会いに来る。」
「次に来る時も、大物を持ってきてくれると嬉しいな。」
「出来たらな」
ギルマスに別れを告げ、足早に我が家へ帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり。服は直しといたぞ。」
受け取って装備する。
やっぱりこれが落ち着くな。
「ありがとさん。…ドラゴンの素材いるか?」
「早く寄越せ」
顔面めがけて数枚投げつける。
「危なっ」
「足りなくなったらまた言え」
「……あとで覚えとけよ」
なんのことだか…
「…で、一つお願いがある。これでわしの双剣を作ってくれ。」
角と鱗と棘、そして毒瓶と血瓶を出した。
「前金の代わりと言ってはなんだが…これをやろう」
「…大金貨と…スキル瓶…スキルポイントか」
「これでお前の取引のレベルを上げろ。それで新しい鉱石とかも買えるようになる筈だろ?」
「…後で一つ付き合え。あと、スキル瓶は400p分欲しい」
「………そんなに必要か?」
流石にそれは…
「一つカンストさせるのに100p必要なんだが?」
「…仕方ない」
今ある分のほぼ半分持ってかれるな…
「ほれ、持っていけ」
箱から200本取り出してBOYに与える。
「…鉱物と工学部品、それと消耗品をカンストさせて200p消費……新品種はまだいらないよな?」
「解放したいなら解放すればいいと思うが」
もうわしのものじゃないしな。
「じゃ、今はまだいいか。…あれ?」
「どうした?」
もうポイントが足りなくなったのか…?
「スキルが進化してる!?」
「…は?」
「異世界注文が全世界注文になってるぞ!?」
「は…?」
訳がわからん…
「………多分名前が変わっただけだと思うけど、また何か気づいたことがあれば知らせる。」
「了解。武器ができたら知らせてくれ」
仮工房に向かうBOYを見送り、こっちは寝る。
またやる事が無くなったな…
「…まぁ…暫くはゆっくりするとしよう…」
急ぐことも無い。
冒険するのは双剣が完成してからでいいだろう。
…楽しみだな。
最初は…あそこから行くか。