第4話 ダンジョン後半戦、ただし三層のみ。
「っ…と…ここは……」
目の前には…
「遺跡か…?でもそれにしては結構しっかりしてるし…デカイ壁に囲まれてるな。」
……また…謎は深まるばかり、か
「なんかヨーロッパみたいな雰囲気じゃない!?」
あー…言われてみれば…
「そう見えんこともないな」
どことなくわしが好きな感じの建物群だな…
「まぁ…なんでもいいだろ。とりあえずこの街の探索しようぜ?」
「あいよ。宝箱とかもまたあるかもな」
三手に分かれて探索開始。
全員のレベルは20を超え、わしも既にいくつかのステータスが四桁に到達している。
BOYもおそらく同じだろう。
「……?」
ずっとこの路地裏を走り回っているが、突き当たりに一切当たらない。
それに同じところをグルグル回っているような気もしない……
「……まぁ、気にしないように……って待て」
いまほんの一瞬だけ……あったあった
「何々……セーフ…エリア?」
セーフエリアっていうと…敵が来ない所のことか
「…一回入ってみるか」
流石に即死トラップはないはず…だよな?
中を開くと…街の雰囲気とは真逆の、数畳ある和室が広がっている。
部屋のど真ん中にあった宝箱の中身はそこそこ質の良い布団一式が八セット。
正直こんなにいらないが…
「貰えるものは貰っておこう。」
…じゃ、あいつらをどうやって呼ぶか……っとそうだそうだ
(あー…あー…マイクテストマイクテスト…此方SW。セーフエリアを発見した)
しゃけに作らせた通信するだけの魔法、「トランシーバー」だ。
突貫で作らせたのでまだロスも多いが、遠距離でも話せるのはデカイ。
(…え?セーフエリア?)
(私それ絶対罠だと思うんだけど)
…お前ら…
(布団もあったんだぞ どう考えてもここで寝てねって事だろ…)
(いや、その理屈はおかしい)
(いいから来い 場所は……)
セーフエリア…いや、セーフハウスの屋根の上で待つこと約10分。
二人も屋根を伝ってこちらへと到着した。
「…それで、このすぐ下がセーフエリアなのか?」
「ああ」
「なんでこんなわかりにくいところに…」
そんなことをわしに言われてもなぁ…言うならこのダンジョンを作ったやつに言え。
「それで…早く休まないの…?私そろそろ休みたいんだけど…」
と言いつつお前は既に下に降りてるだろうが…
わしらも後を追う。
「んー……布団気持ちいい…」
…いつの間に布団を引いてるんだよ…
わしは渡した覚えはないぞ…?
「…じゃ、おやすみ」
………もう寝てるし
だがわしもここに入って色々あったしな……寝るか
「わしも寝るわ。後は頼んだ」
「了解。おやすみ」
「……よく寝た」
…どうやら他二人はまだ寝てるらしいな。
二人が起きるまでは暇だし、周りの探索だけやっておこう
「さて、どこから行くべきか…」
ふむ…街の中心近くにある教会にでも言ってみるか。
あの神とかにも関係するモノがあるかもしれないし。
「…っと危ない危ない…行きすぎるところだった…」
やっぱり全速力で走るのは駄目だな…まだ慣れてない…
「まぁ、そんなことはどうでもいいか」
中は普通の教会で……
「…ってここにも宝箱がある…この階層は探索させる気あるのか?」
兎にも角にも開いてみるか。
………あれ…鍵穴がないくせに…開かない…!?
「…ラァッ!」
思いっきり叩いても駄目か…
「このまま持っては…いけるみたいだな」
仕方がないのでまるごと収納する。
いつか開けられるといいな。
「…後は…無さそうか」
教会だから何かしらいたりすると思ったんだがな…これだけか。
損した気分のまま、さっさと外へと出た。
太陽が外よりも眩しい気がする。
「他の建物も見てみるとするか」
商店街らしい通りには色んなモノが見える。
陳列されていたり、箱に入っていたり。
根こそぎ貰って行く。
今の目当ては…ギルド跡、ないし解体屋や鍛冶屋跡だ。
解体用の道具が欲しい。
それを元にすればBOYに作らせることも可能…な筈。
「八百屋…肉屋……流石に魚屋はないな」
それらしいモノならあったが、倉庫を見ると薬草屋だった。
「雑貨屋……変なモノでもありそうか」
店員はいないので容赦なく奥へと踏み込む。
店内の配置がコンビニっぽいが…商品は一切なく、倉庫に宝箱が一つあるだけであった。
「……これだけ?」
罠もないらしい。
「…開けるか」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
破邪之護符
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
……説明文が出ないんだが……バグ?
いや…そんなはずはない…そんなモノが……
「あー…鑑定妨害みたいなもんか。」
そりゃあるかもしれないよな。
こんな世界なんだし。
「んじゃ、これは装備しとくか」
…懐にでも入れとこう
「そろそろ二人も起きると思うから…戻るか。」
外に出てそのままセーフハウスへと直行する。
いろんな建物があるが、やっぱり迷わないな。
「…おかえりー」
「ただいま」
既に朝食が出されている。
やっぱり菓子パン美味しいよな。
「…はぁ……まだ八層目なのかー…」
「…八…層目?」
おかしい…何でだよ…どう考えてもここは七層目で…
「……ん?どうした?」
「いや、やっぱり何でもない」
BOYはどうだったんだろうな……ってそんなことより
「これ見てくれ」
「…なに それ」
「破邪之護符、らしい。」
「破邪、か……魔物に対してって事か?」
「いや…わしには分からないから聞いてるんだよ」
「分からないって…もしかしてだが…鑑定できない?」
「そういうことだ」
BOYがいろんな方位から眺めたり調べたりしているが……やはり、一切わからないらしい。
「凄く曰くがありそうなアイテムだな……中身も見れないし…」
「お前もそう思うか…」
正直気味が悪くて仕方ないが…
「名前からして害はなさそうだし、俺は持っとけばいいと思う。知らんけど。」
「OK。何かあったらお前のせいな。」
「待てや」
そうやって一日を過ごし、既に夕方。
今日の探索はもういいか、となってきた頃。
「いやー…あれは怖かったわー……って地震!?」
「違う…これは……地響きだ」
それその筈。
今先程のこと。
壁の向こうに大量の魔物が湧き出でて、この街へ向けて進軍を開始。
「地響きって…なにがだ!?」
「わしにも分からん!とりあえず外に出るぞ!」
必要なものだけ即座に回収し、そのまま街へ。
たった今、街へ魔物が到達した。
壁を破るような衝撃が襲ってくる。
「…どうする?」
一つ深呼吸し、落ち着く。
「とりあえず私、死にたくはないから。」
深い溜息とともに戦闘の構えへ。
「…BOYはステータス調べろ。パーティ機能みたいに、多分何かがあるはずだ。しゃけは……広範囲魔法だな。ゴブリンとかの雑魚が大半だからそこまで強力じゃなくていい。そのかわり燃費を上げろ」
「…確かにな。やってみる」
「………りょーかい」
わしは…時間稼ぎだな。
「ちょっと行ってくる」
「死ぬなよ」
「……異世界きてこんなにすぐ死ぬわけないだろうが」
「…まぁそうだけどな…気をつけろよって事だ」
「わかってるわかってる」
街を駆け、壁を翔け上がり、空架ける。
「街への被害…?」
そんなもの…
「知った事じゃねぇ」
もう一度…アレを使おうか
「天に輝け我が衝撃!」
陽が再臨する。
邪魔をする陰、再び焼き尽くさんと。
勿論魔物連合軍、東翼の前列は壊滅し、残った魔物達も精神を揺さぶられた。
「…はぁ…結構消費するか…」
あんまり使わないようにしよう…
作った窪地で回復。
範囲が範囲なのである程度集中して…
「GAAAAAA!」
「ってやべっ!?」
ついに防壁が破壊されてしまった。
街を破壊される訳にはいかない。
魔物の殲滅が最優先だ。
幸いにも…
「広範囲技はあるし、な」
燃え盛れよ我が衝撃
「まだ残存魔力…十分だ」
火力上昇範囲向上…
「…行けるか」
前線はわしだけ。
ここで堰き止めなければ街が死ぬ。
何より既に穴が空いてる。
…息を吸い込み…
「YAHAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
大地を震わせ…
「BMOOO!」
そのまま敵をぶっ飛ばす
「燃え尽きろ」
綺麗なフルスイング!!
背後からくる奴にも一発お見舞い。
…先に巨人の目も潰しておくか
「せい……やっ!」
高速で接近し、身体を跳躍して頭部へと到達。
敵がこちらのことを捕捉する前に構えて…
「オラァ!」
下にいる奴らを押しつぶさせた。
やっぱり巨大なものは倒すに限る。
『GYAAAAAA!!』
大量のゴブリンが煩い。
「…いいから経験値になれ 雑魚どもが」
どうせ一つ一つは不味いだろう。
だが数がある。
全部ぶっ潰す。
……今のレベルは…30か
結構今ので稼げたみたいだな。
あいつらも同じくらい。
「このまま稼いでぶっ飛ばす」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「……急激に私のレベル上がったんだけど…」
「俺も上がった……わかめ、多分暴れてるな…地球じゃそんなことなかったのに…」
今の俺のレベルは30…今31になった。
「ひとまず私はわかめが行った方と逆の方に行くわ」
「いってら」
取引に何かしらあるかと思い、ウインドウを開く。
所持している金銭などから自動で支払ってくれるので一々入金する必要はなく、品物を選択するだけで無限収納に送られる。
一応外に出すことも可能だが、今は使う機会はない。
武器を作ろうにも素材がなければ始まらないから、鉱物のページを開く。
よく見ると品物レベルというものがあった。
スキルポイントというものを10p消費してレベルアップでき、10lvまで上げられる。
今は117p所持しているから、5lvまで上げる。
次は何を上げるべきか悩むが、ここは文明の利器とも言える工学部品も5lvまで上げた。
するとアナウンスが発生し、新しい商品が発生したらしい。
それの解放は20p。
今気づいたが、さらに3pゲットして残り20pになっている。
「…やるしかない」
残りのポイントを使用して解放。
ジャンル名は…
「兵器!?」
まだレベルが低いからか一昔前の兵器や原始的兵器ぐらいしないが、それでも十分だ。
未だ物音がする南の方の壁へと向かった。
鉄の棺桶と共に。
…どうでもいいが、これで三人の所持金がスッカラカンになった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…ラァッ!」
これで…何匹目だ?
遠くから爆音が聞こえてくるが…あっちは大丈夫か?
「ってあぶねぇ!」
敵が多すぎるぞ…早く大元を探さないと押し切られる…
「魔法陣でも何か見えればいいんだが…奥までは見えねぇ…」
逆光が激しい。
無駄に目が痛くなってきた。
「さっさと片付けるか」
魔物を薙ぎ倒しながら爆走する。
進めばゴブリンだけじゃなくオークなどの大型の人型魔物が出現し始める。
流石にワンパンとはいかないか…
時折跳躍し脳天からの一撃を狙うスタイルに変更。
確実にぶっ倒す方針へ。
「…ッラァ!」
ただ通り過ぎながらガムシャラに振るだけでなくなり、疲労が蓄積してゆく。
そのまま進むこと…
「ってまだ終点までは着かねぇのか!?」
遠すぎる…終わったら帰れるのか?
魔物もトロールやサイクロプスなどの巨人系ばかりに。
ここまでくると一撃必殺は無理ゲーか
「だが……まだ進むしかねぇよなぁ!」
叩く寸前にだけ出力を上昇させる節約モードに。
そろそろ魔力が底をつく…
「終点はまだか!」
そんな祈りが届いたか、崖と共に巨大な魔法陣が見えてきた。
勿論、そこからは魔物が蠢き出ている。
「来たか…!」
いくつかの魔物を踏み台にし跳躍。
飛ぶ魔物も居た気もするが気にせず上昇。
「…Let's go!」
これで無理だったら…わしは知らん
「ぶっ潰れろ魔法陣…!」
今度は火じゃなく、地表を壊す。
魔法陣が燃える訳がない。
「脈動せし地の鼓動!」
地面がド派手に波打つ。
ところどころから針のように飛び出たり、そのまま地中に呑み込んだり。
目に見える範囲全てがそんな光景。
断末魔が五月蝿い。
…それに…魔力ももう底をついた。
立っているのがやっと。
これも例に漏れず魔力枯渇時には身体が不自由になるらしい…
「…っ…魔法陣は…?」
もう既に魔法陣も地面も身体も滅茶苦茶になっている。
「…よかった…」
地面に倒れ込むのを抑え、胡座をかき、精神を集中させる。
所謂、瞑想というやつだ。
確かに少しずつではあるが楽にはなってきた。
「……………」
ある程度回復してきた頃、唐突に石碑が出現。
帰還用のポータルだと思いたい。
なけなしの魔力を流して起動。
不快感が収まると、見覚えの教会の前に立っていた。
無事に帰ることができた。
このままセーフハウスへ。
一足先にしゃけだけ戻っていたらしく、既に寝ている。
「…わしも寝るか…疲れた…」
ただ瞑想するよりは寝たほうがいいと思うし…
急に朦朧としてきた意識を抑え、布団を設置。
からのダイナミックおやすみなさいのコンボで意識を手放した。
「……あー…よく寝た…」
寝てる間にBOYも帰ってきたのか…よかったよかった…
「腹減ったし…」
もう朝か…早いな…
遠くから時を知らせる鐘の音も聞こえてきた…
「…んー…よく寝たー…」
「おはよ…」
「2人も起きたか そしてBOY飯出せ」
「…扱いが荒い」
と言いつつ出してくれるあたり優しい。
今日のメニューは…
「…メロンパンかよ」
菓子パンは飽きたんだが
「安いやつがこれしかないんだよ」
「……早くギルドまで行かないとな」
素材だけならあるのに…換金しねぇと…
「このままだとジリ貧だ…」
「…そうだなー」
「…おい なんか目が泳いでるぞ」
ついでに何処か変なとこ見てるだろ
「そ…そんな事より外行こうぜー」
「…はぁ…」
絶対何かやらかしたな…これは…
そのまま外へ出て、中心の広場へ。
変化があるとすればここのはず…
「…おっ…教会の中光ってるぞ!」
宝箱の後ろにあった祭壇が発光している。
また転移系の階層移動だろう。
「またアレ…?」
「いいから覚悟決めろ」
祭壇に触れて起動させると、地面に魔法陣が出現。
今回はこれまでと違って、青い魔法陣だった。
「…何回やっても慣れないな…」
急に環境が変わるというか…なんというか……それに熱いし……
「…って熱っ!?」
第九層は溶岩階層。
灼熱と…巨竜が支配する。
「GRUUUUAAAAAAA!!!!」
騒々しさに一度塞げば、そのまま天へ飛ばされる。
「ガフッ…」
なんとか二人は飛ばせたか……っ…痛い…
胴体に刺さっていたのは、二足歩行の巨竜の牙。
腕も異様に発達している。
「回復!」
「…わかった…ヒール!」
少しは楽になり、身体にも力が入る。
なんとか動く手に例の宝箱を召喚。
何故か光っているが気にせず、目を狙いぶん投げる。
スキルの補正か何かは知らないが、命中しなんとか脱出できた。
「…あっぶねぇ…」
重ねヒールで回復している間に宝箱に触れる。
今度は開封できた。
「これは…リボルバーが二丁…ってそうか」
適正装備にあった双回転銃だな
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
Murderous/Chaos
Double Weapons
Only one equipment.
Right
Status
ATK +1000
Effect
[Lock]
Climb Crime
[Lock]
Mode
Sword [Lock]
Revolver Now
Left
Status
ATK 420
Effect
[Lock]
Soul Drain
[Lock]
Mode
Sword [Lock]
Revolver Now
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…何故英語…ここは異世界だろ…というかさっきまで日本語だっただろうが…
「…まぁいい」
更に怒りが溜まった巨竜に向けて発砲。
弾は込めてないが、魔力を消費して撃てるらしい。
反動はあまりなく、発砲音もしない。
物足りないが…実用性は高いな
そして、血がついた立派な牙が使い物にならなくなる。
「…適当に撃ったが…意外と当たるな」
顔、主に口を狙って撃つ。
何度か外れたり、六発ごとにリロードの必要はある事に気付かずに吹き飛んだりはしたものの、戦いを有利に進める事には成功していた。
「さて、問題は二丁同時にだな…」
思っていたよりもタフなので練習台にはなるかもしれない。
踏み台にして空中からの連続射撃。
半数ほど外れた。
「ってなんでだよ!?」
右は全弾必中ではあったが、左が一発当たっただけ。
「練習するしかないか…」
二人の補助を受けながら数時間。
そろそろ巨竜の動きが鈍くなってきた。
「…そろそろか…」
「……長いぞわかめ」
「…疲れた」
「わかったわかった…そろそろ仕留める」
よく狙って………最後の一撃…
「GU…RAAAAAAAAAAA…」
撃つ前に死亡。
「…釈然としねぇ!」
死体を回収し、そのまま次の階層へ魔法陣で転移しても、まだ納得いかないわかめであった。
「…10層…そろそろ帰りたい…」
「甘ったらた事言うな 異世界来た時点で帰れるわけ無いだろ」
「…」
記念すべき10層目は白を基調とした神殿。
中央には謎の卵が。
「…なにこれ」
「俺はとりあえず触れない方がいいと思うけどな…」
「…BOY、言うの遅い」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…ここは…?
気づけば謎の空間に。
あの神がいた場所に似ている気もする。
いつのまにか出現した、ステータスのように無駄にハイテク感溢れる板を見る。
どうやら…このダンジョンの報酬として、モンスターを一体くれるらしい。
種族だけを選べばあとは勝手に作ってくれるらしい
なら…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…よし」
「一瞬卵光ったよな!?」
「びっくりした…」
そういっている間にも卵が動き出す。
「な…なに…?」
「見ればわかるから待て」
「説明くらいしろよ」
振動数が増え亀裂が。
「お…できたか」
出現したのはスライム。
水滴の下の楕円を潰したような……要するに、D○のスライムのような見た目。
「こいつが新しいn」
言い終わる前に攻撃された。
祭壇から壁まで勢いよく吹っ飛ばされる。
「っ…なんで…カハッ…」
そんなにこのダンジョンは甘くない。
強いモンスターを思い浮かべばそれだけ倒すのは難しくなる。
ボスは自分自身の欲望の具現化。
其れを乗り越えなくば力を手にする資格はない、ということ。
「また吹っ飛ばされるのはわしか…」
攻撃されているのはわしだけで、二人は見向きもされていないが…
「攻撃通らないぞ!」
「マジかよ…」
銃で牽制しながら適当な魔法を撃つがあまり効果はなさそう。
少し時を止めて撃つも特に効果はない。
「防戦一方…上等だ!」
蹴りで吹っ飛ばしながら乱射。
脳裏に浮かんだのは無敵。
そんな強力なスキル、時間制限があるだろう。
あるかもわからないタイムリミットまで耐え続ける。
「しゃけ!とりあえず閉じ込めろ!」
「…分かった!」
どう見ても一服してたな…お金ないって言ってるだろ…
「ウォール!」
一瞬硬直させたところに壁ができる。
これで閉じ込められる…ハズだ。
「ふぅ…」
「…その茶を寄越せ」
緑茶をそろそろ飲みたい…
「嫌だし なんであげないといけないの」
そこまで言わなくても…
「閉じ込めてるんだから……あれ?もう大人しくなった?」
試しに瓦礫を撃ってみる。
「ぎゃっ!?」
…なんか聞こえたぞ
「いたた…」
「解除する…なんか気になるんだけど」
瓦礫が消え、青い影が見える。
「う…」
少し脱力したように見える青い物体。
「…あー…これがわしらの新しい仲間、スラリンだ」
「よろしく…ねー…」
「既に満身創痍じゃねえか」
「…ヒール」
回復されるとそのまま眠ってしまった。
「……どうする?」
「わしが持っていくよ」
スラリンの紹介が終わると、この時を待ちかねたかのように祭壇が爆砕。
光ともに空間を包む。
「まぶしっ」
「目がぁっ」
「きゃっ」
「zzz…」
視界が開けた。
とても広い、綺麗な空。
外へ出ることがようやく叶ったのだ。
「やっと街に行ける…なんで異世界来てすぐダンジョンに行ったんだ…」
「私はお家に…」
「うるせぇ さっさと行くぞ」
「はいはい」
…目の先の方向に人影が見えた気がする。
「あっちだ」
「って待て!」
「置いてくなわかめ!」
森を駆けること数分。
人影の正体は分からなかったが、大きな街道に出ることができた。
「……疲れた…」
「急に走るなよ…」
「すまんすまん でも、結局街には着けそうだからいいだろ?」
遠目に大きな人工物の壁が見えている。
「今度は歩いて行くからな」
「もう走りたくない…」
「分かってる分かってる」
頑張って約1時間歩いたが、そこで面倒くさい奴らに捕まって一悶着あったのは別の話。
なんとか街に入ることはできたが、いかんせん交通税で残り少なかった金がほぼ0に。
そんな危機感を孕みながら、一行はギルドに到着した。




