第21話 Destroy Of Murderous.
忌々しい封鎖結界の前まで転移してきた。
不思議とわしは酔いは感じなかったが…これも悪魔化の影響か?
…ともかく、これを破壊するところから始めないとな。
まずは軽く叩いてみ……
「うおっと!?」
何故かなんの抵抗もなくすり抜けて中に入ってしまった。
さっさと外に戻ったが…これはどういうことだ?
「…わかめ、大丈夫か?」
「一応な…こんぶは通れるのか?」
「ああ。魔王に吹き飛ばされた時結界に引っかからずにそのまま外へ飛んでしまってな…魂移動を使っているドールも同じだ。ただ、双夢は通れなかったから条件は分からん。」
ふむ……少し心当たりはあるが……
「あー…もしかして、レベルが100を超えているか超えていないか、ですか?多分私もそうだと思いますよー。ドールさんも使用中だけ昔のステータスを参照するのなら合点がいきます。なので…しゃけさんも入れるはずですよー」
なら中に入るのはわし、しろみそ、こんぶ、しゃけ、ドールの五人だな。
今度は油断せず全身吹き飛ばすか。
そして残る三人に…
「…え、私もうあいつ見るの嫌なんだけど…」
………マジかよ…人手減るのか…
「大丈夫ですよー…ちょっと私のいう通りにバフをかけるだけですからー……なので耳を貸してくださーい♪」
「…わかった……わかったから双夢黙って」
確かに双夢の興奮した薄ら笑いがうるさいな。
戦闘前なんだから少し落ち着いてくれ
「…ふふふ……ハッ!?」
ドールが気迫を出しながら肩を掴んで双夢を正気に戻した。
「双夢さん…そんな人だったんですか…?」
「なんかきもちわるーい」
「きもっ………」
白くなった双夢が倒れた。
これには流石のドールも無視。
「…双夢倒れたし、私はこっちにいた方がいいよね…ね!?」
「…ならお前ら四人でこの拠点の警備だ。何か緊急のことが起これば伝えに来い。…何も無いとは思うが」
「分かった。いってらっしゃい」
手を振って結界の中に踏み込む。
中にあった花は全て散り散りになり舞い続けている。
…わしらが消えた後に暴れちぎったんだろう。
足跡も赤黒い泥の上に散乱しているしな
再び前に目を向けるとヤツが小高い丘の上で眠り続けている。
…一撃必殺のチャンスか。
「しろみそ、今回は浪漫砲作っていいぞ。あいつを全力で叩き潰せ。魔力は…九割まで使っていい。…お前の真価、見せてみろ」
「Yes,my master!私の本気、見せてやりますよ!」
腕を組み交わし離れる。
…身体から力が抜けて行く感覚に襲われるが…まぁ、使い過ぎた時と同じぐらいだな。
気合いでどうにかなる……ん?
「GURU……?」
魔王が少し動いた。
目も鼻も耳も潰してるはずなのにな…ってヤバい、咆哮だ!
「マズっ…耳を塞げ!」
ドールとこんぶはすぐに塞いだが…少し離れていたしろみそは……浮いている?
ともかく影響は無さそうだ。
「くっ…俺もしろみそに吸われてるな…ドール、メインタンクを頼む」
「わかった、任せろ。ワタル、着いてこい…あんの魔王をその巨大槌で地面に叩きつけろ」
手元に呼び出しながら飛び上がる。
「了解《当たり前だ》。ふぅ……絶対付与」
この槌による衝撃は…全て地へと還る!
「GYAAARUUAAAA!!!」
「ワタル…今だ!」
軽く魔力を放出しながら同じく飛び上がったドールを追いかけ跳ねた魔王の脳天に……
「堕ちろ地の核星の底!」
「GUUUUUUUUU!!??」
くっ…わしの残り魔力が………って身体も動かねぇ!?
体勢も整えられず地面へ落下し……
「よくやったワタル!これで魔王は暫く動かない!」
…お…おう……
「…あー……一ついい事を教えてやろう。悪魔のような魔力体は魔力が少なくなると身体が動きにくくなる。それに、スッカラカンになれば今のワタルのように回復するまで動かないぞ。こんぶのところで休んでおけ」
「…すまん…これまでの癖でな…」
これからは節制もしないとダメだな…毎度こんな醜態を晒すわけには…
「…わかめ、今の俺も似たような体なんだ。あまり負担をかけないでくれ」
「ヒャハハッ……すまんすまん…」
…マスター、身体維持するのめんどくさいなら私の中に入っておいてください
「…じゃ、そうさせてもらう」
分身体を消す時のように力を極限まで抜きさっきまでいた身体を消散させしろみその中へ。
はぁ…楽だ…魔力があると無いとでここまで違うんだな…
マスター、私の中に入ったからには手伝ってもらいますよ
……わしを入れたのもそういう事か!?
さぁなんのことですかね〜♪
仕方なく意識の中へ流れてくる通りに魔力を形成する。
…ちょっと楽しいなこれ
「GU…GRYAAAA!!」
魔王は地面にハマったまま出てこない。
それに…
マスター、フラグを立てるのやめてください。
…それと完成しましたよ、私の必殺技パート1!
「こんぶさん、ドールさん、危ないので結界の外へ!」
天井付近まで浮き上がった下には純粋な黒い球が。
これは…ブラックホール…なのか?
「マスターの予想通りこれは光さえも逃さないブラックホールです。なので…これで魔王の身体を一鱗さえ残さず消してやりますよ!」
…今更だがわしはブラックホール作ってたのか…
俺達が外に行けるからこその技だな。
しろみそ、周りへの被害が取り返しのつかないことになるから…外で絶対に使うなよ
わかってますってこんぶさん。
……よし、ドールさんも無事離脱できたみたいですね。
「それじゃ……それじゃ………私も撃たせてもらいますね!」
しろみその右手が開いた状態で突き出され、左腕はその膝を掴む。
掌、黒球、魔王が直線状に並ぶ。
「Code:30031B6!」
ソラから放たれた呑天の黒はソコにいた魔王を…儚く喰らい尽くした。
「…っとと……試運転も兼ねたので疲れました…」
しろみそが解除した後、地面に降り立った時に身体を再生成して外に出る。
断末魔も叫ぶ暇もなく魔王は死んだが…死体は無し。
オールデリートだな。
心なしか力も漲っている。
…ああ、レベルアップしてるな。
えーっと………今のレベルは13……全く上がらねぇ
「…マスター、それは用法が違うと思います」
「そこはなんでもいいだろ」
ちょっとした比喩だ…オールクリーンっていうだろうが…
って光が双武装に吸い込まれて……?
「結界も解けたな。青い空が俺達を祝福している…っと、感傷に浸る暇はないか。わかめ、さっさとコサカに帰るぞ。この国の王かその手足が来たら面倒だ」
「待て待て…もう少しゆっくりさせてくれ…折角御礼参りが終わったんだからよ…」
こんぶの意見はわからなくもないが…わしはもう少し休みたい。
「最低でも魔力が完全に回復するまで…な?」
「…はぁ…勝手にしろ。面倒な事になっても知らないからな」
こんぶはそう言い残して再びわしの中へ戻った。
「よっっしゃ!倒した!」
しゃけはとりあえず倒した事を喜んでいる。
「わかめさん…勝ったん…ですよね、私達」
対照的に双夢は何かを噛みしめるように話しかけてきた。
「ほんと!?」
スラリンは跳ねて喜んでいる。
…子どもっぽくていいな
おゆも安堵しているらしい。
「ひとまず私がポータルを作るから……って何かまた来そう」
…ふむ…俺が思っていたより早かったな。
「…しゃけ、今すぐポータルを作って帰るぞ……早く!」
「あーもうわかってるって!ワープポータルッ!」
即席で手抜きながら白玉楼と無事に繋がったポータルをくぐり、最後に双夢が通った瞬間にポータルを削除。
これで追跡は不可能…だよな?
「では、私は今日の魔王討伐祝賀会のための料理を作ってくるのでお先に失礼します。」
「ああ、よろしく。メニューは双夢の好きなものでいい。…長い間、待たせてたらしいからな」
「……はいっ!」
…マスター…今の痛いですよー
るっさい
今私の事ぶちましたよね!?
…気のせいだろ
気のせいじゃないですよ!
本当に殺気を感じましたし!
知らんもんは知らん。
わしはまた休憩するから…その話は後でな
「おう、わかめは休め。なんせ限界を超えて魔力を使ったからな…」
「…やっぱりか」
少しあの正体不明から分捕ったような気もしたからな
「あまりそいつは刺激しないほうがいい。俺の第六感がそう叫んでるからな」
「はいはい。胸に止めておくよ」
どうしようもなくなれば……是非もないよな。