第0話 終わり、そして、始まり
………Return.
今日も今日とて終了の鐘が鳴り、帰路へ着く。
早々に退出し、校門より出ようとしたその時。
「わかめー帰ろうぜー」
やつに捕まってしまった。
「どうした?」
「いや…なんでもない」
今日は堤防を通ってゆっくり帰りたかったのにな…
「…そういえば、お前はなんで待ってたんだ?」
「なんとなく」
「…なんとなくで付き合わされるわしは一体…」
って紹介してなかったな。
こいつはわしの親友の、通称BOY。
無駄に手先が器用な厨二仲間だ。
「俺はお前みたいに無駄に厨二病を拗らせた記憶はない」
「…そうですかい」
「あっなんだコラ」
「ちょっ殴るなって」
すぐ殴るったりしてくるのがたまに傷だ。
…そのおかげで反射神経が鍛えられていたりもするのだが。
「それはともかく、さっさと帰るか?」
「そうするか」
…っとあれは…
「よーし 今日はしゃけも誘うか…」
しゃけとはこの学校随一の腐女子|(わし調べ)で、なんだかんだ好きな界隈が少し被っているのでたまーに話したりしている、そういった仲だ。
「なんでだよ」
「なんとなく」
「なんとなくなら仕方ない」
小走りぐらいで追いつく。
…っと今日は朝から頭が痛いな
「よーっすしゃけさんや 」
「…お前くらいやぞその呼び名で呼ぶの」
おぉ、怖い怖い
「……それで何?」
「一緒に帰ろーぜ」
「………わかった」
露骨に嫌な雰囲気ださないで凹むから
「今日の運勢最悪だったから早く帰りたいんだけど」
「奇遇だな わしは最高だった」
「いっぺん死んでみる?」
「やめろ 周りのやつに聞こえたら…」
…おん?
「はぁ…疲れた…」
……あれ
「それで?何の用?」
「そんなことより なんで周りから人がいなくなって…」
(あー…マイテスマイテス聞こえる?)
『うわっ なんか出た』
(…酷いなそれ…私は一応神さま…だよ?)
茶化すように中性的な声が脳内に聞こえてくる。
「なぜ疑問形」
(気にするな)
「………それで、神様がわしらに何の用だ」
こんななーんにもないわしらに…
(あれだ お前が大好きな異世界転移、ってやつだ)
「マジか」
ついに来たか…いつもロクに当たらない占いで珍しくべた褒めの1位だと思ったら…十数年……
(とりあえず、私のいるところに転移させるが…いいよな)
答えは…
「OK」
「えっ」
「まっ」
少し視界が歪んだと思えば、何処までも続く黒い変な雰囲気のする場所にいた。
(それじゃ…名前とか容姿とかはどうする?)
「それよりもステータスだ。わしのステータスは…」
適当な作品のやつを…
(あぁ、それは適正があるものを当てはめる)
「…使えねぇ」
(そういう世界なんだから仕方ない。できるだけバックアップはする)
笑顔でサムズアップをされた気がする。
「……あとは名前だな」
「拒否権…」
「…異世界転移か…VRMMOの方が良かった…」
「わしはわかめ、こっちの男はBOY、んでそこの女がしゃけだ」
「って待てや!」
「おいこら」
(承知した)
今度は神の龍ボイスか
『待てや!』
って待てこっちに来るな殴るな痛いから避けるが
「勝手に決めるな!」
「せめて考えさせろ!」
(もうその名前で登録したら無理だ)
「…マジか…」
「なんで…こうなるの…」
…そういえば
「何で異世界転移させられるんだ?勇者召喚、って訳じゃないよな?」
(……え?………あ………それは………てきせ……いやなんとなく)
「待てや」
(……何がだ)
「いま適性がどうとかいってた気がするが」
(気のせい)
「いやだから」
(It's 気のせい)
「無駄に英語を使うな」
(…ここだけの話…内密にね…)
……とりあえず、転移する先に危機が迫っていることはわかった。ひとまずはそれらを倒せと。
(それが終わったら好きにしてもらって構わない。…ただし、帰れないからそのつもりで)
「仕方ない」
長年の夢を叶えられるならそれでいい。
(…ほんとは…………を呼ぶつもりだったんだけど)
「……何か言ったか?」
(何でもない。そろそろできる)
「あいわかった」
(転移させる場所はコサカという、かなり大きな街から1時間ほどの場所で、ついでに近くにダンジョンもある。行きたいなら行った方がいいよ)
「ご親切に説明ありがとさん」
「……あれ?装備とかはくれないのか?VRMMOじゃないとはいえ、基本的に何かはあるだろ?」
(………金貨10枚でいい?)
「……少ない もう一声」
(…はぁ…仕方ない…20枚。これでいい?)
現れた皮袋の中身を確認。20枚ある。
(その他情報は現地で。そろそろこの空間を維持するのがめんど…げふんキツイ)
おいこの神めんどくさいって…ってまだステータスが
「ステータスは付与済みだ 念じれば見れる」
「えっ」
(それじゃ、頑張って)
そうやって、追い出されるようにして、わしらは、世界の外へ、放り出された。
修羅どころか死が軽すぎるわしらの道は
ここから、始まった。
まさか……死ぬとは一欠片も思ってはなかったんだが。
この時点では、な