吉田
私が住む町の公園には、滑ってはいけない滑り台があるんです。
まだまだ丈夫で、立ち入り禁止と書かれた画用紙に加工をしてビニールテープをいつも張っているだけなんだけど、それでも誰も入ろうとしなくて、それを不思議に思った私は友だちと二人で滑ってみました。
ふざけあってテープを跨いで越え、私は動画を撮る事になったのですが、友だちはふと、あることに気づいたんです。
「あれ。錆びすぎじゃない?」
物陰だから見えていませんでしたが、私がいた場所も錆びついていました。
この滑り台は最近出来たのでそんな事は無いと思っていましたが、雨風に打たれ続けても放置されていたのですから私には不思議はありません。
友だちは登りきり、そこで無邪気に手を振って座ったのですが、そこでも違和感を感じて顔をしかめました。
「どうしたの?」
訊いてみると頭を振って笑いましたが、この時、既に危ないことが解っていたのかもしれません。
友だちは勢いよく滑り出し、滑りが悪いと手すりを掴んでずるずると下りていくのですが、何がおかしいのか分かりませんがそれで盛り上がり、笑い声を響かせて一回目は終わったのですが、友だちがもう一回滑るといって位置についたときに起こりました。
「あ、あれ。あれ、ちょっと」
友だちの意思に背いて動いたようにも、滑りやすくなっているようにも見え、私もその言葉に気持ちを傾けはしましたが、手が滑って動いたのだと思って笑いました。すると友だちは滑りの悪かった滑り台をするすると滑り出し、流石に異常だと感じました。
言葉を掛けようとしたとき、突然友だちは音をたてて血を吹き出し、いたるところの関節が反対に曲がり、草履みたいなでこぼこをした腸がはみ出して血を垂らして、壊れたロボットみたいに呻き声を上げていて怖くなって逃げたんです。
次の日に行ってみるとそこに死体はなくて、子どもの騒ぎ声から切り離された空間だけになっていました。
友だちはどこにいって、一体、この滑り台はなんでしょうか。
そう思った私の前で、心なしか滑り台の手すりが曲がって笑ったように思えました。