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序
「お前のことだけが、わたしが今ここで生きている理由だよ」
私を抱き締め、額を合わせた彼女が笑って言う。
「私も……私が生きている理由も、お前だけだ」
私も彼女を抱きしめ返し、同じことを呟く。
──とても愛しい私の半身。
私には彼女しかいないし、彼女には私しかいない。
なのに、彼女はもういない。
生きる理由を無くしたはずの私は、何故、未だ生き続けているんだろう。
「1年だ。1年、時間をあげよう。その間にできなかったら……わかっているね?」
くつくつと嗤う“父”に、わたしはただ頷く。
「それまでは、好きにやってみればいい」
わたしはもう一度頷き、踵を返して走り出した。
雪が解け、再び若木が芽吹くまでが、私に与えられた時間だった。