目覚め
どこまでも広がるような草原の真っ只中に、一人ぽつんと立っている男がいる。彼は何をするでもなく空を見上げていた。180cmほどの細身の体型に黒一色の出で立ちでは、この起伏の乏しい草原の上でひどく目立っていたが、幸か不幸か男の事を見ている者はいなかったようだ。
誰かが一部始終を見ていたら、スゥーっと何処からともなく現れた彼に驚いていただろう。
彼も自分の置かれた状況に戸惑っているみたいだが、ステータスを唱えてみるらしい。神様のアドバイスを試すようだ。
一瞬ビクッとした後に、今度は虚空を見つめだしてしまった。それから一時間くらいたっただろうか、ようやく動く気になったらしい青年はフラフラと歩き出した。
まったく当てのない道のりになりそうだと些かの不安がありつつも、どうにでもなるという楽観的な感情が湧いてくる、このふわふわとした感情を纏いながら歩く青年は、どことなく楽しそうな表情をしていた。
この世界に生まれて、第二の人生を歩み始めた実感が一歩ごとに強くなっていく。そう感じるからである。
この先、幾多の困難に見舞われる第二の人生というものに対して緊張感の足りない陽気な足取りだった。
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