プロローグ
よろしくお願いします
俺がこの世界に来ることになったのは、俺の生きたいという願望が強かったからだ。きっと、そういう事なのだろう。
こっちに来てから随分とたったが、一度しか会ってないのに奴の事はハキッリと覚えている。まるで昨日のことのように、視覚に入ったものが離れないし、何を喋ったのか一字一句間違えずに再現できる。
こんな風に奴の事を考えるような気分になったのは、念願に手が届きそうだから。
あと一歩で 手が届くって時に感傷的になっちまうなんて、まだまだ俺にも人間っぽいところが残ってたな。
だが、それでいいと思う。それで良かったと思う。
人間を捨てるのは割と抵抗なかったが、実際のとこ人間的な感情が残っているってのは、まぁ完全に捨てきれてなかったのかな。
それが悪いかと言えば違うし、良かったかと言うと、それも違う。良し悪しではなく、嬉しかったって感じだ。
こういう部分で自分が自分のままだと再確認できたのは嬉しかった。
さて、作戦まで時間もあるし、今までのことでも振り返ってみるかな。あんまり無かったしな。こういう時間は。
序盤はすぐに思い出せる。なんたって、こっちで最初に会ったのは奴だったから。当然聞いた最初の言葉は、奴の言葉だ。そうそう、かけられた第一声は、
「合格」
だったな。