第16話
すみません。
やっと更新できましたが、短いです。
無事に本隊に合流し、レイやフロウ、兵の皆にこってりと絞られた(主にハルが)。
しかし、ハルとは何かを話すわけでもなくお互いに間に微妙な空気が流れたままだった。周りの皆は私たちの様子がおかしい事には気が付いていたようだが、私に直接何か聞いてくる事はなかった。
私たちは微妙な空気をそのままにガイン国の国土に入った。
ガイン王国は大きな国だ。国土はセルヴィアの1,5倍ほどで、人口は2~3倍はあり、大陸で最も大きい国として知られている。工業と農業の発展した国で、国民たちの多くは幼いころから重い鍬などを振るって育った。セルヴィア国があっさり負けてしまったのはこういうことも背景にあるのだろう。
ガイン国に入ったといっても、馬車から外の様子を見られるわけではない。カーテンを閉め切った馬車の中で、レイ、その侍従、私、フロウが座っていた。
その中で、フロウがこれからの計画を話してくれた。
「皇女様、このままガイン国の王城に入ります。そこでまずは身を清めて、体を休めましょう」
「…はい。あの、…フロウ?」
「何でしょう?」
「そこで、何をすればいいの?」
「ええっと、とりあえずは王太子殿下に会って頂きます。本当は、国王陛下に会って頂くところなのですが、陛下は只今病で臥せっておりますゆえ」
「殿下はどんな人?」
「殿下ですか?ええっと、穏やかでお優しく、どことなく凛とした空気を纏った方、ですかね」
穏やかで、優しくて、凛として…。それってつまり…
「分かった」
「?何がですか?」
「殿下は“うま”のような人」
「…は?」
「おだやか?」
「はい」
「やさしい?」
「はい」
「りんとして?」
「はい」
「それは、うま」
「はい?いや、いい…え?うーん、は…いいぃ?」
はいか、いいえかどちらなのだろう?
「うま…」
「いや、はい。そうですね。殿下は馬です」
やはりうまではないか。フロウは何をそんなに迷っていたのだろう。
「クククッ、フロウ、兄上は馬か」
フロウはハッ!としたようにレイの方を見た。
「レイモンド殿下!からかうのはよして下さいよ」
「ふははは、セリア、王宮に入ったらそれは言ってはいけないからね」
「?どうして?」
「頭の固い古狸に無礼者!!とか言われて、首をちょん切られてしまうからだよ」
「…っ、分かった。ふるいたぬきに気をつける」
「ブッ、ククク!…うん、それでいい」
首を切られると聞いても、私は大丈夫、と言いそうになってしまったが、何とか堪えた。
「ああ、それとこの旅に同行していない者がいる前では、誰の前でも頑張って敬語で話してね」
「それもふるいたぬきにおこられるから?」
「うんうん、そうそう!」
「分かった、まし…た」
「アハハ、そうそう、その調子!」
フロウが私にいろいろこれからの行動計画を話し、私がそれに質問し、レイが茶化しながらも注意を促すといった風だったが、そんな調子で少しずつ、色んな事を教えてもらいながら私たち一行はついに、ガイン王国の王宮の敷居をまたいだ。
そして結局、それまでハルと会話をしたのは必要事項を確認した少しの間だけだった。
見切り発車はするものではない、と痛感しております。




