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第15話

短いっすね

 夜が明ける。


 あの後見つけた小さな洞窟で一晩を明かした。

 ハルが寒くないようにと自分の上着を貸してくれた。私の体をすっぽりと包みこむ上着はとても大きく、とても暖かかった。

 それなのに、どことも知らないどこかが冷たくて、それが悲しくて、寂しくて…。


「セリア」


 何か食べる物を探してくる、と言って洞窟の外に出ていたハルが帰ってきた。手には木を削ったものを持っている。


「果物を見つけた。それ食っとけ」


 ハルが果物を投げた。


「…ハルは?」

「これで馬を埋めてやろうと思ってな」


 そう言って、手に持っていた大きめの木の板を見せた。


 そうか。

 私たちを乗せてここまで来てくれて馬はハルの愛馬だった。私はハルの馬を殺してしまったんだ。風よりも速く野を駆けてくれたあの馬は、即死だったから傷を癒す事もできなかった。



 私の力は一体何のためにあるのだろう。

 自分が死んでしまった時は何度だって、嫌でも蘇ってしまうというのに、周りの人や動物が死んでしまった時は治してあげられない。


 大切な人が出来た。

 

 それは愛されたい人で、愛したい人だ。


 少し前では無縁であったはずの感情が自分の中に渦巻いているのを感じる。


 ごめんなさい。


 ごめんなさい。



「まだ、食べていなかったのか」


 いつの間にかハルが帰ってきていた。辺りはすでに昼間の明るさだ。果物を握ったまま何時間も座り込んでいたようだ。


「…俺が渡したものも食えないか…」

「ちがう!」


 急いで果物を食べる。

 違う!違う!そうじゃない。

 ね?食べたでしょう?


 急いで見上げるが、ハルは何故か悲しそうな顔をしていた。


「…そろそろ行こうか」

「……うん」














「…もう、やめろ」


 レイ達のいる本隊に合流しに向かっていると、ハルが突然言った。

 

 何のことだろう。


「?」

「お前のその力は体に障るようなものではないのか?」


 私は歩きながら怪我を負った動物たちや枯れかかった植物を治していた。実は牢から出て外を歩けるようになるとやっていたのだが、力を知られたくなかったのでこっそりやっていたのだ。

 確かに、多少の疲労感が無いわけでもないが、歩くのに支障は無い。足手まといにはならない。 


「?だいじょうぶ。歩ける、よ」

「…そうか。…辛くなったら言えよ」

「わかった」



 ハル


 ハル


 悲しいの?


 悔しいの?


 何がそんなにあなたを悩ませる?


 そんな顔をしないで


 笑って


 お願いだから


 あなたが微笑むだけで


 それだけで


 それだけで私は…――― 














 洞窟を出ていくらか経った頃、私たちはレイのいる本隊に合流した。








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