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霊華  作者: 雲雀-tyongdari-
能力
9/10

⑨ 襲撃 -那美ー


 那美は紗雪をかばう。

「もういい加減にしたら。僕疲れちゃうよ」

 二人の目の前にいるのは十歳くらいの可愛らしい少年だ。

 その少年の手はブーメランの形に変形していた。

「もう……どうしたらそのお姉ちゃん渡してくれるの? どうしたら本気出して僕と戦ってくれるの?」

 少し拗ねているような口調。

「……航って言ったわね」

 航と呼ばれた少年。

 嬉しそうにうなずいた。

「どうしてあなたはこんなことをするの?」

 その言葉にキョトンとした表情を浮かべる。

 少し上を見たり、下を見たりしてから答えた。

「どうして……? だって紫吹がそのお姉ちゃんを連れて来いって言ったんだもの。その仕事を僕に頼んだんだよ。紫吹が僕に仕事をくれたの!!僕張り切って来たのに……お姉ちゃんたら本気を出してくれないんだもん。僕はこんなに張り切ってるのになぁ~ 子供だと思って手加減してる? だったら僕、もっと本気出すよ?」

 コロコロ変わる表情。

 まさに子供が遊んでいる様な感じだ。

 しかし、その身に持って生まれた〝霊華〟が変形しているのは本物のブーメラン刀。ブーメランの形をした刀だ。

 ボゥっと銀色に輝きだすブーメラン刀。

「お姉ちゃん、僕本気だよ。次は本気でやるからねっ」

 その声のトーンは今までとは違い、本気の空気を感じさせた。

「紗雪ちゃん、もう少し下がっていて」

 紗雪はその言葉に従い、少し離れたところにある、電柱の後ろに身を隠した。

「黒姫発動」

 那美の静かで重い声が響く。

 その声とともに、那美の手が、漆黒の長剣に変化していく。

 それを楽しそうに航は見ている。

「わぉ、お姉ちゃんの武器、すごく綺麗だね~」

 声もとても嬉しそう。

「紫吹から聞いてた通りの武器だね」

 ……紫吹……本日二度目に聞くその名前。

 那美は顔を苦しそうに歪める。

「紫吹がそんなことを言ってたの? 黒姫が綺麗だって……」

「そうだよ。本当に綺麗だね……でも、それと一緒にもう一つ言ってた……お姉ちゃんは強いって」

 言葉と同時に航は那美に勢いよく向かってきた。

 甲高い音が辺りに響き渡る。

 何度も何度も空中に舞い、那美に向かいブーメラン刀を振り下ろす。

 それを〝黒姫〟と呼ばれた、那美の長剣が難なく受け止める。

 二つの刃が交わるところから、小さな小さな何かの結晶がキラキラと輝き消えていった。

 紗雪は二人の攻防をただただ電柱の陰から呆然と見ていた。

 いや、見とれていたというのが正しいのかもしれない。

 その攻防はまるで踊っているかのように綺麗で優雅だった。

 戦えば戦うほど、その二つの刃は輝きを増している。

 風が二人の周りを激しくも優しく包み込み、戦いという場所にありながら、その空気は少しも穢れることなく、辺りを包んでいる。


 まるで戦うことが当たり前のように……

 戦うために生まれてきたように……


「航、もう引きなさい」

 航の刃を受け止めながら那美は航を見据える。

 いつの間にか航の表情からは楽しげだった笑みが消えていた。

 変わりに、大粒の汗と、苦しそうな息遣いが聞こえてくるようになっていた。

「あなたには体力がなさすぎる。これ以上やっても無駄だわ。武器を発動できるだけでもすごいことなのに、あなたはそれを完全発動している。体力は相当削られてるはずよ……あまりやりすぎると命に関わる……分かっているでしょう。もう引きなさい、航」

 刃を受けながら、那美は大きな声で、でも静かな凛とした声で航に向かう。

 航はその言葉が聞こえていないのか、同じ動作を繰り返す。

 次第に航のブーメラン刀から銀の光が消え、漆黒の刀に変化していた。

 交差する二つの刃は黒く重い音に変化する。

 航の顔が真っ青だった。

 航の勢いのなくなった刃を受けながら、那美は悲しそうに航を見ていた。

 航のブーメラン刀は漆黒からくすんだ黒い刀になっていた。

「やめろ、航」

 その声が聞こえたと同時に、航は意識を失った。

 那美はその声の主を探す。

「久しぶりだな、那美」

「……紫吹……」

 那美は剣を収めた。

「航は返してもらう」

 そういうと、航の体は宙に浮き、空高く持ち上げられて見えなくなった。

「姿を見せなさい!! 紫吹っ!!」

 しかし、それ以降声すら聞くことはできなかった。

 那美の声が、空しくその場に響いていた。









 いかがだったでしょうか?

 新しいキャラも出てきて、少しずつ話が確信のほうへ進み始めました。


 よければ、感想などいただけると嬉しいです(^^)



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