R.P.巡察日誌〈その1:日常業務〉
自分の名前はリアン・ペイジ。
名誉ある王都騎士団の一員であります。
……まだ 見習いではありますが。
なんか勘違いされてる方も多いそうなので 一応言っておくのでありますが 自分は歴とした 貴族なのであります。
父様は 宮廷伯の爵位を持ち 財務事務官を務めるビリアン・トゥーノ・ペイジ伯爵。
母様は 元老院に席を持つヒュノ家の出身。
なので 一人っ子で嫡子である自分も爵位を持ってるのであります。
自分の正式の名乗りはリアリアーナ・ヴィア・トゥーレ・ペイジーノ女子爵なのであります。
まぁ 父は宮廷伯なので 軍事伯や辺境伯のように 広大な領地を持っている訳でも無ければ 居城を持っている訳でもなく 女王陛下から 給金を頂く身分。
母方のヒュノ家も元老院に籍はあるとは言え 実は 莫大な資産がある訳でも無く 小さな荘園と議員年金で暮らすのがやっとという家であります。
で ありますから 自分の生涯の目的は 騎士としての功績を挙げ ペイジ家を押しも押されぬ封土持ちの貴族の仲間入りをさせることなのであります。
で・あ・り・ま・す・以・上 自分は 毎日の騎士団の仕事に 誠心誠意 全力で取り組むのであります。
同じ年頃の女の子達と同じように 流行りのドレスに現を抜かしたり 殿方との恋愛を夢見て 化粧の仕方を工夫している時間など無いのであります。
で ありますので 髪の毛も男の子達と同じくらい短くしているのであります……さすがに 分隊長よりは 少し長いのでありますが。
自分の所属する王都騎士団 第三オリーブ中隊の任務は 王都ウェスティリア東部地域の治安維持なのであります。
自分の配属先の第七小隊は 1週間の内 風曜日と雷曜日の2日間は 大市場入口の詰所に待機したり 衛士の皆さんを引き連れて巡回等の任務を行っているのであります。
巡回任務を行う際は 分隊長のフォージ・ヒューガス先輩と2人組を組むことが多いのであります。
フォージ分隊長は 21歳。
非常に生真面目で尊敬できる先輩。
大剣や棹状武器の扱いも巧みなのでありますが 盾を構えてらっしゃると 正に鉄壁なのであります。
自分の強みは速度を生かした連撃なのでありますが 左手に構えられた騎士盾や方形盾に悉く止められてしまい 盾殴りで 吹っ飛ばされたところをボコボコに…というのが 定番の負けパターンなのであります。
ただ あの高過ぎる身長と長過ぎる手足は ズルいと思うのであります。
身長の低い自分にとっては 絶望的に高い城壁にしか見えないのであります。
基本的に親切な先輩だとは思うのでありますが 叱る時は 渾々と 淡々と 理詰めで詰められるので 涙が出そうになるのであります……普段 無口なだけに 余計にグサグサくるのであります。
そして もっと多いのは 頭を叩いたり 足を踏んづけたりといった 無言で体罰のパターン……こちらは 本当に涙が出るのであります。
ただ めげないのが 自分の一番の持ち味でありますので 叱られても 叩かれても 目一杯コミュニケーションを取って できるだけ沢山のことを吸収させて頂こうと考えているのであります。
自分達の中隊の担当地域である大市場は 庶民向けの小売店から 異国渡来の珍しい品が並ぶ高級店までが並ぶ 王国最大というか 西方世界屈指の大市場。
王国の人間は もちろん エルフやドワーフ 西方各国や東方からの来訪者など ありとあらゆる人々が行き交う 人種の坩堝なのであります。
で ありますから 揉め事も日常茶飯事。
かっぱらいやケンカは 正に日常茶飯事でありますし 刃傷沙汰も しばしば起こるのであります。
場合によっては 闇ギルドが裏で糸を引く 大規模な犯罪に出くわすことも……自分は まだ 出くわしては いないのでありますが。
そして そういった犯罪行為が起こらぬように 色々な店舗を巡り 店主の方々と顔を繋ぎ 情報収集するのも 自分達の大事な役目なのであります。
そんな顔見知りの店主の中に 薬種商〈碧猫屋〉のマリノアさんがいるのであります。
大市場に2つある大通りの1つ 東大通り の三つ目の角 冬宿木小路を 南に下がった所に 小ぢんまりとした薬屋さんを構えている方なのであります。
小さなお店でありますが 庶民の普段使いのお薬から 非常に高価で貴重な薬品まで 手広く商っているお店であります。
また 自分達 王都騎士団に回復薬などを納入している業者さんでもあります。
実は 自分 この〈碧猫屋〉で 特別な方と出会うことができたのであります。
それが紅瑠石師匠であります。
とある事件を追っていた際に その事件と〈碧猫屋〉さんの依頼内容が重なり共同戦線を張ったのでありますが そこで見た紅瑠石師匠の活躍に目を奪われたのであります。
どんな些細な変化も見逃さない眼力と洞察力。
神速の斬り込みと鮮やかな剣技。
自分の理想像がそこにあったのであります。
で ありますので 事件解決後 直ぐに弟子入りを願い出たのであります。
師匠は 弟子は取らない方針なんだそうで その場では断られたのでありますが 無理と無礼を承知で喰い下がり 師匠と呼ばせていただくことだけは 許可していただたのであります。
リアン・ペイジ17歳。
現在の目標は 王都騎士団の正騎士になることと 紅瑠石師匠の正式な弟子になることの2つなのであります。
誠心誠意 全力で頑張るので 皆様にも応援を よろしくお願いしたいのであります。




