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温泉街にて




 

 宿場街グラススプリングスの宿屋。

 艶橙(カッパー・ブロンド)の波打つ長髪をタオルで拭きながら 上質な調度の整えられた部屋に入ってくる 長身の女騎士。

 風呂を済ませた2人は ベッド横の丸テーブルを囲み 先に冷たい飲み物を楽しんでいる。

 


「……いやぁ 街入る時 ヤバかったな~」


「ああ。あれは マズかった」


「もう少しで 吹き出すとこだったわね」



 アリシアも 席に着き テーブルの上に用意されたグラススプリングス名産の白ワインのコルクを抜く。

 その様子を眺めながら コップに入った柑橘果汁を一口飲み マリノアが2人に尋ねる。

 


「フォージとリアン どっちの方が笑えると思った?」



 宿場街に入る寸前 薬師一行は スレ違った行商人達の中に変装した顔見知りを発見していたのだった。

 


「私は フォージだな。あの付け髭は傑作だった。団長の真似しての付け髭だろうか?」



 クックッと可笑しそうに身を屈めながら アリシアが答え ワインをグラスに並々と注ぐ。

 3人の手に飲み物が揃ったタイミングで 器同士を軽くぶつけ合い 今回の旅の予想外の成果を称え合う。 

 


「アリシアに 出()うてしもた不幸な岩猩々(ロックバブーン)に」


「芳しい香りのコウト百合に」


「煌めくリンカ結晶に」



 各々が好みの飲料を口にして 少しの間 余韻に浸る。

 再び 口を開いたのは 水碧髪(アクア・マリン)の薬師。



「ってゆーか フォージの あの身長だと どんな格好しても 目立つわよね。商人だろうが 騎士だろうが あんだけデカけりゃ 目立ってしょーが無いわよ。街の門出てきたところ見て あの大きなヤツ フォージじゃないの?って思ったら 本当にフォージなんだもん 笑っちゃうわ」


「ウチは 小僧に化けてた リアンの方が 笑えたけどな~」



 下の階の酒場から持ち込んだエールのジョッキを呷りながら 紅瑠石(ガーネット)が大笑いする。



「ウチらの顔見た時の あの顔がな~っ。ウチらの顔見て フォージの顔見て またこっち見てって……めちゃめちゃキョドってて 今 思い出しても (はら)痛いわ」


「あれって やっぱり 身分隠して レギャン侯爵領に潜入する気なのかしら?」


「私は 休暇期間に入ったから 聞いてはいないが…きっと そうだろうな。例の翼獅子騎士団(グリフォナイツ)侵入の背景調査だろう」


「あんな変装だと バレて余計に面倒なことになるんじゃないの?」



 少し首を竦めながら 柑橘果汁に口をつけるマリノア。



「まー 衛士の人達も4人ほど 一緒に変装して 同行してたみたいだし 大丈夫だとは 思うけど」


「へっ? 何 ()うてんの? あの時 すれ違った10人全部 第七小隊の衛士やで?」


「ウソでしょ? 10人全部だったの?」


「そうだったのか? リアンとフォージ以外は分からなかったが…?」


「ホンマ ホンマ。リアンとフォージは論外やけど マリノアが気づいた4人って馬曳いてたヤツらと そのツレやろ? そんで 後ろの方歩いてた オッサンが ヤルスで リアンの2人後ろが リズやったハズやで。で 残りの夫婦モンっぽい2人は ウチも確証無いくらい上手に化けてたけど 2人だけ無関係って考え難いし ジョゼとデイルやと思うな」



 エールのジョッキを空にしながら 闇ギルドの幹部が 慧眼を誇る。



「……言われてみれば 確かに 背丈がそれっぽかったかも」


「やろ?」


「私も 全然 気づいて無かったが 行商人の集団にしては 武器の携帯の仕方や 目配りの仕方が 妙に手慣れているような気配は感じたな」


「って()うか そっちが本職の連中やったってゆー訳や。まぁ 騎士の2人は ともかく 衛士の連中は しっかり潜入捜査できそうな面子やし それなりに 情報集めて帰ってきよるんちゃう?」


「そう願いたいものだな。休暇明けの初任務が レギャン領に突入しての救出任務というのは 御免被りたい」



 グラスに残る白ワインを ゆっくり味わいながら 騎士団最強の騎士が(うそぶ)く。



翼獅子騎士(グリフォナイト)と やり()うてみたいって()うてたやん?」


「まあな。翼獅子騎士団(グリフォナイツ) 筆頭のガウェイン卿とは 手合わせ願いたいとは思っている。だが 翼獅子騎士(グリフォナイト)が最高に力を発揮できるのは 広い空間のある戦場。そういう状況下での戦闘を夢見なくは無いが そんなことになれば 民草に甚大な被害が及ぶ。叶わぬ方が良い夢もあるのさ」



 果汁を飲み干し 立ち上がったマリノアが 2人に声を掛ける。



「はいはい。物騒な夢見てないで 楽しい夢見ましょ…楽しい夢。久し振りの柔らかなベッドなんだから 心地良い夢が見れるハズ。明日も まだ 歩くんだし そろそろ寝ましょ?」


「そうだな。久し振りのベッドだ。柔らかさに包まれて眠りたい」


「ホンマや 寝よ寝よ。せっかくの広いベッドやもんな~」



 王都ウェスティリア(星降る街)まで 残り2日行程。

 とは言え 依頼をこなした気楽な復路。

 眠ろうとお互い声を掛け合ったものの 気の合う3人の部屋の灯りが消えたのは 随分 夜も更けた後の事だった……。

 ………。

 ……。

 …。



 


  


 

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