表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

岩猩々




 「アリシア お疲れ様。完璧ね」



 手中にした岩猩々(ロックバブーン)の剣歯を肩掛けカバンに仕舞いながら マリノアが女騎士を労う。

 


「ボス猿の巨大化した剣歯って 使い途が色々あって重宝するの。これだけ立派な牙なら きっと純度の高い成分が採れると思うし」


紅瑠石(ガーネット)が しっかりサポートしてくれたおかげで 牙だけ折るミッションに集中できた。感謝だ」


「……いやぁ 岩猩々(ロックバブーン)共のねぐらに 睡眠瓶 置いてきただけで ウチ ほとんどナニもしてへんし」


「絶妙の効き具合だったと思わない? 強めの個体が数頭程度 起きてきたぐらいだったでしょ? 逃げ出したボスを 何頭か追いかけてたみたいだし 数日は 混乱が続く筈。その内に コウト百合の蜜を たっぷり集めましょ 」



 マリノアの作戦。

 闇の精霊の力を借り気配を消した魔法剣士が 払暁 薬師が調合した睡眠ガスの発生する薬瓶を 岩猩々(ロックバブーン)のねぐらの付近に設置。

 その上で 女騎士が 岩猩々(ロックバブーン)の縄張りに侵入。

 見回りをしているボス猿と遭遇。

 ()()()()戦闘力を削ぎ 群れの序列を混乱させ ボスの座を巡る戦いを誘発させる。

 そして その隙に 縄張り内で採取活動を行う。


 特段の波乱もなくボス猿は 逃走し 後は採取を残すのみ。

 

 

「あのさ コウト百合の生えてる崖の辺りに 薄紫の半透明の結晶が混じった石が 稀にあんのよ。もし見かけたら教えてよね? ちょっとでも怪しいと思ったら 声掛けて。確認しに行くから……」


「珍しい石なのか?」


「王国内じゃかなり珍しいわね。北のドワーフ領とか 東方から持ち込まれるヤツの方が 質は良いんだけど……値段もトンでもないのよ。普段使い分を ここで調達できれば かなりのコストダウンになるワケ」


「へいへい。それっぽいの見つけたら 声掛けるわ」


「了解した。薄紫というのは どんな感じの色味なのだ?」


「これ見てくれる? 一応見本は 持ってきたんだけど……」



 マリノアが 鞄から出した 結晶の色味を確認してから 採取活動に向かう3人。

 コウト百合が萎む 正午過ぎまで あと2刻ほど。

 白い岩場にひっそりと咲く白い花を目指し 無言の探索が始まった……。

 ………。

 ……。

 …。



「~~~♪」


「マリノア 随分と ご機嫌だな」

 


 石畳の街道を往く 薬師達の一行。

 先頭を歩くアリシアが ヤクを曳くマリノアに声をかける。



「まーね。コウト山で ここまで上質のリンカ結晶が採れると思ってなかったから。思ったより 量もありそうだったし……」


「2刻ほど探して5~6個しか採れてへんやろ? そんな()うほどある感じかいな?」


「逆よ。()()()()()()採れたの。まぁ 紅瑠石(ガーネット) アンタの眼のよさが あったにしても大戦果よ」



 日は 既に西の空に傾きかけているが 峠から随分下り 平坦で舗装された歩きやすい街道を往く 一行の足取りは軽い。



「ほなさー もうちょい行ったら 宿場街やし 今日は宿屋 泊まろうさ」


「いいわよ」


「「!?!?」」



 大猿の繰り出す熾烈な爪撃にも 顔色ひとつ変えなかった女騎士の淡麗な容貌に走る 驚愕の色。

 闇エルフの女剣士も 開いた口が塞がらないといった風情。



「そっ そんなに 儲かるのか?」



 小さく頷く水碧髪(アクア・マリン)の薬師。

 


「まっ まさか ロイヤル・スイートとか()わへんやんな?」


「ハァ? んなワケ無いでしょ。でも 結構 いい稼ぎにはなるハズだし 宿代くらいは出すわよ。それにコウト百合 採ってる時に岩猩々(ロックバブーン)の糞の臭いが 染み着いた気がしてんのよね。正直 アタシも お風呂入りたいワケ」



 そう言って 綿の作業着の匂いを嗅ぐマリノア。

 アリシアも紅瑠石(ガーネット)も 装備を確かめながら 苦笑いと共に賛同する。



「確かに 百合の香りは良かったが あの臭いには閉口したな」


「ホンマ ホンマ あそこら一帯 プンプン(にお)ぉてたもんな」


「せっかくだし ちょっといいお風呂ある宿にしましょ。宿代は経費扱いにしとくから」



 進行方向に見えてきた 宿場街を見やりながら マリノアが続ける。



「その代わり コウト山でリンカ結晶が採れた話は 絶対に口外無用よ? 分かってるわね?」



 宿場街の外門から出立し こちらへと近付きつつある行商人の一団を確認しながら 守銭奴の薬師が 声を潜め念押しする。

 無言で頷く艶橙髪(カッパー・ブロンド)の女騎士。

 白銀髪(プラチナ・ブロンド)の闇エルフは軽く右手を挙げて 了解の意を伝える。


 数分後 軽く武装した十人ほどの行商人達と薬師の一行は 無言のまま 軽く会釈しすれ違ったのだった……。

 ………。

 ……。

 …。

 



 

 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ