表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

薬種商〈碧猫屋〉




 ── カランッ カラン… カラン…… ──



「あ~ ヒマや~。なんかオモロイ話ない~?」



 ウインドチャイムが鳴る音と共に薄暗い店内に入ってくる褐色肌のエルフ。

 少し低音の柔らかな東方訛り。

 それに答える 鈴の鳴るような高音 西方標準語。



「あら? ちょうど良かった 紅瑠石(ガーネット) 。今から 東の森まで 調達に行こうって思ってたとこ」



 クリーム色の綿シャツに同じく綿の青いスカート。

 キャンバス地の大きな鞄を たすき掛けに2つ掛け これまたキャンバス地の大きな背負い袋(バックパック)を背負い 肩丈ほどの糸杉(シプレ)の杖を手に持った少女。

 店に入ってきた 闇エルフの眼を見てニッコリと微笑むソバカス娘。

 

 少女の名前はマリノア。


 ここ薬種商〈碧猫屋〉の店主。

 年の頃は17~18といった風情。

 水碧色(アクア・マリン)の肩髪を後ろで1つに括っている。

 髪の艶めきが 光の加減で不可思議な反射を起こし まるで猫目石(キャターズ・アイ)のよう。



「あー ごめん マリノア。今日 ウチ 忙しいんやった……。悪いけど また 今度な?」


紅瑠石(ガーネット) アンタ 今『ヒマや~』って言いながら 入ってきたでしょ。つべこべ言わずに手伝いなさいよ」


「えーっ 嫌やし。東の森なんて オモロないやろ? 誰かバイトにでも行かせたら ええんちゃうの?」



 紅瑠石(ガーネット)と呼ばれた闇エルフは その名の通り 暗紅色に煌めく美しい瞳の持ち主。

 褐色の肌に白銀色(プラチナ・ブロンド)のフワッとした巻き毛。

 エルフの女性としては かなりの長身で豊満な身体つき。

 大きく開いた濃紺色のレザードレスの胸元は マリノアの()()より 明らかに3サイズは大きい。

 年の頃は 人間ならば20代前半21~22歳といった佇まい。



「それが バイトのヤツ 魔導院の試験だか 何だかで 休みなのよ。なのに急ぎで回復薬の注文入っちゃってさ。上お得意様だし〈碧猫屋〉のポーションじゃなきゃって 言ってくれてるしさ。無下に断れないでしょ?」


「にしても 東の森なんて ツマランやん? 出ても森小鬼(モグル)くらいちゃうん? マリノア1人でも なんとかなるやろ……」


「ハァ? アタシ ()()()()()よ? どーやって身を守れってゆーのよ? アンタみたいに 剣が使えるワケでも 魔法が使えるワケでも ないのよ?」



 水碧色(アクア・マリン)の髪の少女は 髪色より濃い海碧色(マリン・ブルー)の目を細め 口を尖らせて紅瑠石(ガーネット)に抗議する。



「魔法使えへんって()うけど 強烈な薬瓶 持ってけば ええやん。爆炎瓶(エクスプロージョン)で ドカーンと1発や」


「……あのねぇ。薬瓶は その場で最後の調合しなきゃなんないワケ。じゃなきゃ大爆発起こすような薬品 危なくて持ち歩けないでしょ? 薬師は 護衛無しじゃ 森小鬼(モグル)の相手だってできやしないの!」


()()()()なら なんとかなるんやないの?」


「どーゆー意味よ?」


「いや そのまんまの意味やけど……」



 不満気な表情で紅瑠石(ガーネット)を睨むマリノア。



「……わかった。急な仕事で 報酬良いから アンタにも ちゃんと報酬払うから」


「その言い方やと はじめは 報酬払う気なかったやろ? ウチには 分かるで?」


「……そっ そんなこと 無いわよッ? ちっ ちゃんと 払う気だったわよ? 大丈夫だって!」



 白銀髪(プラチナ・ブロンド)を小さく横に振り 闇エルフが 更なる断りの口上。



「それに ウチ 今日は装備品 部屋に置いて来てん。今 持ってんの 護身用の片刃刀(長ドス)だけやし。護衛の役には立てへん思うで?」


森小鬼(モグル)くらいしか出ないって 言ったのアンタでしょ。アンタの腕と片刃刀(ワキザシ)あれば十分よ。報酬折半でいいから……銀貨25枚出すわ」



 渋々 しょうがなしに……という表情を作って マリノアが紅瑠石(ガーネット)の瞳を覗き込み 報酬を提示する。

 その眼を ジト目で見返しながらの 闇エルフの返答。



「さっき『急ぎの仕事で』って ()うてたやろ? どーせ75とか吹っ掛けたんやろ? 折半やったら38ちゃうの?」


「……フンッ アンタとは やりにくいわね。10枚乗せるわ35枚」


「折半()うたやろ? 37」


「チッ… しょーがないわね。37枚で 手を打つわ。その代わり 荷物持ちも やんなさいよ?」


「嫌やし。それも折半な」



 肩掛け鞄を1つ紅瑠石(ガーネット)に手渡すマリノア。

 鞄を たすき掛けにしながら薬師に確認する白銀髪(プラチナ・ブロンド)

 


「納期 いつ?」


「3日後」


「うっわ。強行軍やん」


「そーよ。モタモタしてる時間無いんだからっ。さっさと出かけるわよッ」



 〈碧猫屋〉から東の森まで 徒歩で2刻ほど。

 採集時間や調合時間を考えれば 既にギリギリのタイミング。

 マリノアと紅瑠石(ガーネット)の2人は手慣れた動きで店仕舞いを済ませると 足早に店を後にしたのだった……。

 ………。

 ……。

 …。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ