家が建てられなかった土地
なあ、ちょっと聞いてほしいことがある。
今、正直かなりヤバい気がしてるんだけど……俺、大丈夫だよな?
話す。
俺、ある外構工事で駐車場の工事を請け負ったんだ。
場所は立地もよくて、車で5分以内に高速道路のインターがある。
歩けばすぐバスにも乗れる。
最初に現場を見たとき、俺は元請けに聞いたんだ。
「なんでここ、家にしないんですか?」
40坪以上あって、形もきれいな長方形。
変な癖もないし、普通に見れば家が建つ土地だ。
でも元請けは、なぜか歯切れが悪くて、
「いや……ここは家にできない場所だから」
そう言うだけだった。
宅地転用してない農地?
いや、周りを見渡しても家は普通に建ってる。
何より、最初に見たときからもう整地されてた。
農地なわけがない。
まあ、やれって言われればやるのが俺たちだ。
現場は広いし、条件も良くて仕事はやりやすかった。
2週間ほどで外構はほぼ完了。
ブロックで囲って、コンクリートで土間打ち。
正直、拍子抜けするくらい順調だった。
ただ……一つだけ、変な点があった。
作業に入る前、その土地の端にゴミが置いてあったんだ。
コンクリートガラとか、割れた側溝のフタとか。
まあ、よくある残骸だ。
でも――
なぜか、壊れた水槽だけがぽつんと置いてあった。
ガラスは半分割れていて、
他のガラとは明らかに雰囲気が違う。
「なんで水槽……?」
違和感はあったけど、当時は気にしなかった。
仕事は楽だったし、珍しく元請けの部長まで現場を見に来たくらいだ。
工事が終わってしばらくして、
道具が壊れたから、馴染みの金物屋に修理に出しに行った。
そこで、店員のAさん(女性)に言われた。
「俺さん、あそこの土地で作業してますよね」
Aさんは、あの辺が地元らしい。
何か知ってる口ぶりだった。
「え、あそこ何かあるんですか?」
俺の声は、今思えばちょっと上ずってたと思う。
Aさんは、少し怪談めいた口調で言った。
「あそこ、前に家が建ってて……
住んだ人が、結構な頻度で亡くなってるんですよ。
いわゆる、呪いの家です」
「げ……でも、駐車場なら大丈夫ですよね?」
「さあ……それは、分かりません」
冗談めかしてはいたけど、
俺はそこでようやく理解した。
――ああ、だから家を建てなかったのか。
その瞬間、
現場に置いてあった“水槽”のことを思い出した。
そういえばあれ、
撤去したあと、俺の土場に持っていって捨てたんだ。
それからだ。
頭から、水槽が離れなくなった。
しかも、壊れてない水槽のイメージが浮かぶ。
透明な水の中で――
亀が、ゆっくり泳いでいる。
見たこともないはずなのに、
やけに鮮明なんだ。
俺、おかしくなってるのか?
怖くなって、水槽はすぐ業者に頼んで処分させた。
ちょうどゴミも溜まってたし。
でも……
今でも、水槽と亀の映像だけが、頭から消えない。
これ、ヤバいやつか?




