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3話

 僕達は銃を構える。ルシードエルさんは散弾銃なので余り遠くは威力が落ちるから、僕の機関銃が火を噴いて弾丸がモンスターに向かう。銃を撃った反動を持ち前の膂力とパワーアーマーにより完璧になくす。弾丸は外れる事なくモンスターに当たり絶命させる。


 ルシードエルさんが、


 「これだと私が倒した事にならないじゃないか。」


 と言われてしまいルシードエルさんが召喚したいと思った存在を倒さす約束をした。ルシードエルさんはそれに満足して上機嫌になった。


 あれからしばらく歩いて遺物がないか確認してみたが遺物は根こそぎ取られておりなかった。やはり遠くに行かないといけないと思ったが夕方になり始めてしまったので帰る事にした。


 「アマツチ今日はこれくらいで帰ってログアウトしよう。また都合の良い時に一緒にプレイしよう。」


 「わかりました。今日はありがとうございます。またよろしくお願いいたします。」


 そう言って僕達は施設に戻る。依頼は期限が無いのでまた明日再開しよう。最も依頼を受けずとも遺物は買取りしてくれるが。


 施設に戻って来ると僕達は別れてそれぞれの部屋に向かう。帰って来る途中は何も起こらずに終わった。僕はパワーアーマーを脱ぎ装備品を置いて食事を頼む。


 出て来て食事はトレーに盛られたゼリーだった。これを今まで食ってきたがまぁ美味しく無い。でも1日分の栄養とカロリーは摂れるらしい。僕は背が高くなるにつれて量が増えた。やはりリアルと同じ身長にすればよかったかもしれない。早くポイントを稼ぎ美味しい物を食べたい。


 食べ終えると僕はログアウトしようとした。だがログアウト出来無い。サポートAIに聞いても意味が分からないと言われてしまい途方に暮れる。明日は休みだからいいがリアルで食事を取らないとまずい。


 僕は叫んでみたり色々してみたがログアウト出来無い。するとその時ルシードエルさんから連絡が来た。


 『もしもし今いいかい。君がまだゲームにいるという事はログアウト出来無いという事には気づいていると思うのだけど。』


 『はい。ログアウト出来無いから困っています。』


 『どうやら私達だけじゃなくて他のプレイヤーも同様の状態らしい。今掲示板を調べてみたらその事で持ちきりだよ。』


 『やはり他のプレイヤーもログアウト出来無いのですか。いったい何故。』


 『分からないがログアウト出来無いのは事実で私達はこのゲームから出られない事には変わり無い。』


 『解決方法もなしですか?。』


 『今の所ないかな。私達以外のプレイヤーも色々やっているらしいけど結果は良くない。』


 『運営は何を考えているのか。』


 『その事で相談というか僕の持論を聞いて欲しい。』


 『おそらくは私達がこのゲームからログアウトする方法はないと思う。多分私達はこの世界に転生したのだと思う。』


 『随分と飛躍しますね。理由をお聞きしても?。』


 『アマツチ、君はこんな突拍子もない話しを信じるのかい?。』


 『ええルシードエルさんが考えて出した結論なら外れてはいないと思います。接した時間は短いですがそう思います。』


 『っ そうかそうなのか君はそういう奴か。分かった理由を話そう。』


 『まずこのゲームのタイトルはアナザーワールドリインカーネーション。意味は異世界転生。そして赤子から始まるゲームなんてこれまで聞いた事もない。』


 『しかも私達は15年もこのゲームで過ごしていた。それが現実で本当に15年経っていたら私達は人生をやり直した事になる。』


 『確認する術はないけど僕はこの世界に転生したと思う。リアル過ぎる体験に普通のゲームは遮断してある痛覚。何もかもリアルだ。』


 『私達はカミと言っていた案内人にこの世界での新たな肉体をキャラメイクさせられて転生させられたと考えるのがしっくり来る。』


 『幸いそうであったとしても野垂れ死にする事はないから良かったけども。』


 『掲示板の情報や私が体験した事を元に考えた持論だけど、どうかい納得できたかい?。』


 『ええルシードエルさんがどう考えているかは把握しました。これからはそれが本当だと思って行動したほうが良いと感じますが。』


 『っ 君は全く。だからこそこの世界で生き残る為に私達は強力し合わないかい?。』


 『わかりました。出来る限りルシードエルさんと行動を共にしましょう。』


 『今日はもう寝て明日に備えましょう。そして明日この世界で生き残る為の方法を考えましょう。』


 『あぁ私もそれで良い。お休みアマツチ。』


 『お休みなさいルシードエルさん。』


 そう言って連絡は切れる。僕は今の話しを考える。僕がルシードエルさんの考えを否定しなかったのは僕も心の底ではそう思っていたのかもしれない。


 なにせ15年もいたのだ。体感時間が15年という事では説明がつかない事もある。リアル過ぎる感覚に自然過ぎるNPC、疑問に思う事はかなりある。


 僕はこの世界で死んでしまった時の事を考える。おそらくはリアルに戻る事なくそのまま死んでしまうだろう。僕はそう考えながら眠りについた。


 翌朝僕は起きてから掲示板を見てみた。やはりというか皆ログアウト出来無い事に焦っている。全てのプレイヤーが昨日の朝までアルマの施設で過ごしていて、自由行動になった後ログアウト出来無い事が発覚した。施設にいる時からログアウト出来無い事に気付いていたプレイヤーもいるらしいが、掲示板に接続出来る様になって情報交換したのは昨日らしい。


 施設にいた時にログアウト出来無いと騒いでいたプレイヤーは、何処かに連れて行かれて戻って来ないそうだ。その事が掲示板に書かれたのでパニックになっている人もいた。


 NPCの人達にログアウトの事を聞いても何を言っているんだという反応になるらしい。あとNPCと言うと意味が伝わらないらしく自分達は人類だと言って争いになったケースもある。


 ますますルシードエルさんが言っていた転生したという事が現実味をおびてきた。掲示板の中でもそういった書き込みをしているプレイヤーもいて、なかなかカオスな状況だった。


 僕は一旦情報収集を止めて朝ご飯を食べる。相変わらず美味しくないゼリーだが食えるだけ上等だった。


 サポートAIによるとスラムでは満足に食事を摂れない人達がいっぱいいるから僕達プレイヤーは恵まれていた。衣食住はあるからだ。


 でもこのままではいけない。ポイントはほぼ無いしこの世界で生きていくには力がいる。自身を強くする事は大前提だが権力もないといけない。自警団に所属せずに探索者になったのは早計だったかもしれない。


 自警団は安定したポイントを貰えるし装備品も支給される。自警団というだけで地位も高くよほどの事がない限り危険にも遭わない。


 対して探索者は常に命がけであり収入も安定しない。装備品は自腹であり地位もかなり低い。一攫千金そして一発逆転はあるが、その可能性は低く現実的ではない。


 一度自警団を断り探索者になった以上今更どうにもならないだろう。だが考え様によっては戦闘経験を積むいい機会かもしれない。それに自警団は上下関係が厳しく自分には余りあっていないかもしれない。


 それからしばらく考え事をしていたが、部屋のドアが急に開き男性が入って来た。


 「アマツチさんこの施設にいられる期限はあと3日になります。それまでに荷物をまとめて退去して下さい。」


 「いきなりですね。理由を伺っても?。」


 「はい。この施設で生まれ育った者達はこのアルマの役に立つ事が使命です。それなのにここで何もせずに過ごしてもらうと大変困ります。」


 「アルマの役に立ち自身の価値を証明して下さい。その為の準備ポイントは渡した筈ですから。」


 「自警団、探索者、企業に就職するなどして自身の価値を示す方法は色々あります。アルマの役に立たない場合はスラムで過ごして貰います。」


 「ご理解いただけましたか?。」


 「わかりました。3日以内にこの施設から出ます。」


 「ではよろしくお願いします。」


 男性は去っていった。僕は頭を抱えてしまう。衣食住が提供されてこの世界で暮らしていけるかと思っていたら、それが無くなってしまった。ポイントをほぼ使い切ってしまったのが悔やまれる。


 どうにかして衣食住を確保しないとまずい。安定した生活が出来無いと何が起こるかわからない。食事もちゃんと摂らないと死んでしまう。僕は人よりも大きいからいっぱい食べないといけない。


 何とかして衣食住が安定して得られるまでのポイントを稼がないと死んで終わってしまう。飢えて死にたくない。


 僕はルシードエルさんに連絡をして会う約束をしてパワーアーマーを装着し完全装備で部屋を出た。部屋を出ると出ていけと言われたプレイヤー達が暴れていた。それを自警団が取り押さえていく。僕はその横を通り施設を出た。


 僕達は探索者組合で待ち合わせをした。施設は今とてもじゃないが話し合いの場には出来無い。ルシードエルさん以外のプレイヤーは現状信用出来無い。最もルシードエルさんも過度な信用信頼は禁物だが。


 探索者組合の3階は食事処になっていてうるさいがまぁ話し合いの場には適しているだろう。


 値段を見て高いから何も頼まずにルシードエルさんを待つ。その間周囲の話しに耳を傾ける。アルマ近辺ではもう危険だがB1地点しか遺物が取れないだの、タンガイがスラム内で勢力を拡大して威張り散らしているだの色々聞けた。スラムには色々な勢力があり抗争状態らしい。


 僕はルシードエルさんを待っていると店員に、


 「おい!! ここは何も頼まず居座る所じゃねぇ。頼まねぇなら帰れ!。」


 と言われてしまった。どうやらここは食事を頼めるくらい稼ぎがある人専用らしい。周りの客も僕を見て何やら話していて完全に浮いていた。ここの食事は高いが仕方ない。


 「すみません。ではこの日替わりランチを下さい。」


 「まいど! すぐに持ってくっからよ。」


 そう言って店員は去っていった。日替わりランチ一番安いが1万ポイントする。僕達のランク1で受けられる依頼の報酬で一番高いのが500ポイントだった。それではこの食事処では食事など到底出来無い。それどころか綺麗な飲料水さえ買えない。


 僕は危機感を覚える。このままだと住む所は得られないかもしれない。僕の残りのポイントが約10万ポイントこれでどこまでできるか。


 それから日替わりランチが届き食事を始めているとルシードエルさんがやって来た。


 「すまない。色々と調べものをしていて遅くなってしまった。」


 「構いませんがここでは何か頼まないといけない様ですので。」


 「あぁそれも調べたから知っている。」


 「店員さん私も日替わりランチ1つ。」


 「さてと私が調べてきた事を共有しよう。」


 「まず施設を追い出される事は知っているよね。」


 僕は頷く。


 「結構。私達は昨日ポイントをほぼ使い切ってしまった。」


 「装備品はアマツチがある程度何とかできるとはいえポイントがないことには何も出来無い。」


 「そのポイントだが稼ぐのは楽じゃない。私達のランクでは遺物を回収してそれを高価買取してくれる事を祈るしかない。」


 「一番大事な衣食住だけど衣は我慢して食と住は必ず必要。だけど私達のポイントでは家を借りる事は難しい。」


 「一番安い家賃で10万ポイントひと月でだ。そんな所は防犯対策とかないし危険だけど今の私達には此処しかない。」


 「最も月10万ポイント払えるのはそれなりのランクの探索者だから素行が凄く悪いという事はないかもしれない。でも良くもなくて最悪の場合争い事が起こる可能性があり殺し合いになる事もあるらしい。」


 「ポイントの稼ぎ方はしばらく遺物回収しかない。」


 「何処かの勢力に属してそこで面倒をみてもらう事もできるけど、これは余り取りたくない選択だ。」


 「勢力の鉄砲玉にされたくはないからね。」


 「プレイヤーの殆どが自警団に入ろうとしていて、落ちた人などは企業に就職したりそれも出来無いと私達と同じく探索者になるらしい。」


 「探索者になった人達だけじゃないけど絶望しているプレイヤーは多いね。一夜明けて現実を理解した者と、たかがゲームと思って遊び感覚の者に大体別れている。」


 「遺物探索に出たプレイヤーが敵性存在に襲われて死亡したらしいけど、遺体はその場に残りそのプレイヤーは動かなくなったそうだ。」


 「共に行動していたプレイヤーが遺体を回収していたらしいけど、どうやら焼却するしかなかったようだ。」


 「これで死ねばそこまでという事になったと思う。もしかしたらリアルに戻っているかもしれないが確認する術がない。」


 「こうなるとやはり転生したとして動いた方が良いと思ったがね。」


 「ルシードエルさん情報収集ありがとうございます。僕からはB1地点がアルマ近辺では危険だけど遺物が残っているという情報ぐらいしかないですね。」


 「十分だよアマツチ。今日はそこを目指して行こう。」


 「ところでアマツチ私の事はルシードエルと呼び捨てで構わない。これから共に生きていくのだからもっと仲良くなろう。」


 そう言ったルシードエルさんは笑みを浮かべていたが目が笑っていなかった。僕は少し怖くなりながら、


 「ルシードエルこれからよろしく。」


 と言うとルシードエルは嬉しそうにした。僕はほっとした。ここでさん呼びしていたらどうなった事か。僕は何故だか冷汗をかいた。


 

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