「た」止めの多用に気を付けよう
はじめに
本作はあくまで、「なろうで執筆を始めてみた初心者」が迷った際の情報まとめとして書いています。
私自身は文系では無いので、文系バリバリの方には劣ります。
なのでマサカリはやめて下さいね。
心をおおらかにしてお読み頂くか、無理そうならブラウザバックをお願いします。
こんにちは、あるいはこんばんは。
地の文の表現を向上させたいと思った事はありませんか?
今回は、他であまり触れられてない観点から提案をしてみたいと思います。
───お品書き
・地の文の実情
・「た」止めについて
・描写の切り取りタイミング
・地の文の緩急とリズム
・「る」止めの問題点
・体言止めの有効活用
・その他の止め方
───地の文の実情
幾人もの作家さんから「地の文を改善したい」と相談を受け、とある共通点に気づきました。
地の文の「た」止めが多いのです。
総合ptが伸び悩んでいる作家さんの作品を読むと、結構な確率で遭遇します。
日本語は文の最後の方が重要となります。
文の最後で否定が入りそこまでの内容を180°ひっくり返す事もあるからです。
その為、無意識の内に文の最後を強く意識しています。
どの文字で〆ているかは重要なのです。
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例:「た」止めの地の文)
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疲れていた彼は言った。
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地の文の句点が「た。」で終わるのが9割を超えている作品もあります。
エピソードによっては100%「た」止めで終わっている作品もありました。
次は「た」止めについて深掘りしていきたいと思います。
───「た」止めについて
必要なケースの「た」止めは勿論そのままで良いのですが、多用しすぎると散文的になりやすく、説明感が出てきます。
また、過ぎた出来事を述べている感じが強めになるので、ライブ感も下がってしまいます。
ですので、表現を工夫する事をオススメします。
次に極端な例題を示します。
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例:極端な「た」止め多用)
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私たちはようやく町に着いた。
彼は見回りに向かった。
そして、大通りにレストランを見つけた。
お昼が過ぎていたので、お腹が空いていた。
早速、お店に入った。
私たちはそれぞれの席に着いた。
「すいません、注文いいですか?」
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例:言い回しを変えた版)
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私たちはようやく町に到着。
彼は辺りを見回しつつ中へ進んだ。
ほどなく、大通りにレストランを見つける。
時間帯はお昼過ぎで、お腹は空いていた。
早速、お店に入り、私たちはそれぞれの席に着く。
「すいません、注文いいですか?」
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前者は「た」止めが地の文で100%使われています。
後者は「た」止めが1回になっています。
少し文章に緩急が出ているのが伝わりますでしょうか?
次はもう少し深堀りしていきます。
───描写の切り取りタイミング
地の文を「た」で止めると、何がどう違うのか?という点をもう少し掘り下げていきます。
通常は「た」で止めると、過ぎた出来事を述べている表現になります。
又は、事実を端的に述べただけの表現となります。
次に「席に着いた」を参考にした例を示します。
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例:「席に着いた」の表現例)
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席に着く事にする。
席に着く事にした。
席に着こうとしている。
席に着こうとしていた。
着席する。
着席。
着席した。
席に着く。
席に着いた。
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上記の例は「着」の文字を含む縛りで出しています。
この他にも「席に座る」「席に戻る」「腰を下ろす」「腰掛ける」などの様々な表現があります。
さて、席に着くという表現のどのタイミングを切り取るのかという例題ですが、「た」の方が同様の表現でも物事のタイミングが後になります。
着席にフォーカスして描写の切り取りタイミングを見てみましょう。
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例:例題から着席を抜粋)
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着席する。
着席。
着席した。
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そのシーンの切り取りタイミングが、「する」と「した」では異なる事が伝わりますでしょうか?
この例は、行動に移している最中、行動完了の瞬間、行動が終わった後、といった違いが出ています。
「た」止めの多用は、既に経過した事象だけになるので、説明感が出て、ライブ感が下がるという話に繋がります。それが散文的に感じてしまう文章の要因になったりもします。
このように文の最後は、単なる描写違いだけでなく、物事の時間の切り取り方が変わってくるのです。
───地の文の緩急とリズム
無意識に使ってしまう「た」止めは、物事の時間の切り取りタイミングが過去であると伝わりましたでしょうか?
その事を理解して使うだけで、文章に違いが生まれてきます。
相談でよくあるのは「地の文がのっぺりしている」「平凡で単調な気がする」というものですが、そこにも直結しています。
地の文で「た」止めが多用されているという事は、その瞬間を切り取った描写が少ないという事と同義なのです。
これは会話劇が好きで、キャラ作りが巧い作者ほどその傾向にあるようです。
会話劇や全体のテンポを優先するあまり、地の文を端的に済ませてしまうのかと思われます。
では、どうすれば良いのでしょう?
常に文の最後を意識して、他に言い回しが無いかを考える事を試してみて下さい。
───「る」止めの問題点
地の文の「た」止めを避ける意識があるのか、「る」止めを多用しているケースも見かけます。
いずれも多用すると幾つかの問題点が出ますが、ここでは「る」止めの問題点にフォーカスします。
次のような問題点があります。
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・描写の切り取りタイミングが偏ってしまう。
・その文だけで完結せず、次の文に少しかかる。
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その文だけで完結する「た」止めと異なり、「る」止めは次の文への関連性が僅かに生まれます。
その点を利用しての引きとして活用しているのであれば良いのですが、多用しすぎると不自然になりやすいです。
また、「た」や「だ」のように言い切る文が無いと、切り取りタイミングが偏り過ぎてしまう問題もあります。
例えるならば、息を吸い込むばかりで吐き出すタイミングが無いのです。
前述の例題を極端な「る」止めにした例を示します。
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例:極端な「る」止め多用)
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私たちはようやく町に到着する。
彼は見回りに向かっている。
そして、大通りにレストランを見つける。
お昼が過ぎていたので、お腹が空いている。
早速、お店に入る。
私たちはそれぞれの席に座る。
「すいません、注文いいですか?」と声をかける。
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少し違和感を感じませんか?
文章が不十分な印象を受けると思います。
次の文に少し掛かっているのに、それに対し応えていない事が要因です。
非過去形終止法ですので、動作が進行中、または未来において起こることを示す形です。
このように「る」止めは文が続く印象を与えるため、シーンの流れがまだ進行中であることを読者に感じさせる効果があります。
次に「る」止めの例題に文章を加えてみます。
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例:「る」止めの文を補完)
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私たちはようやく町に到着する。
陽が傾く前に辿り着けて、ホッと胸を撫でおろした。
彼は見回りに向かっている。
初めてきた町であり、情報が少ないからだ。
そして、大通りにレストランを見つける。
食いしん坊な彼らしいと思う。
お昼が過ぎていたので、お腹が空いている。
私たちはそこへ向かう事にした。
早速、お店に入る。
日当たりの良さそうな、空いているテーブルを見つけた。
私たちはそれぞれの席に座る。
「すいません、注文いいですか?」と声をかけた。
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※見やすくする為に、改行を追加しました。
先程の例よりは、流れが自然になったと思います。
読者は「る」止めの場合、その事に関連する文が次に続く事を想像して文章を読みます。
それについて触れられていないと、やや不十分な印象を持ちやすいのです。
それと、最後は「た」止めの方が物語の終わりをしっかり提示できます。
敢えて余韻を残すなどの意図で「る」止めを使うケースもあるので、その辺りはケースバイケースで活用して下さい。
ここまで避けるように述べていた「た」止めは、文の関連性を断ち切り、一連の流れを収束させる効果を持つので、無理に避け続けるのは良くありません。
注意点としてお伝えしたいのは、安直な「た」の回避として「る」を選びやすいので気をつけて下さい。
───体言止めの有効活用
繰り返しになりますが、日本語は文の最後の方が重要となります。
文の最後で否定が入りそこまでの内容を180°ひっくり返す事もあるからです。
よって体言止めは、最後に持ってくる名詞をより印象に強く残す手法としても有効と言えます。
文章のリズムを作るのと印象を残す為に、体言止めも活用してみてはどうでしょう?
※多用しすぎると嫌う読者もいるので、たまに使う程度が推奨です。
次に例を示します。
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例:普通の文章)
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笑いながら赤髪の少女が質問する。
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例:体言止めの文章)
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笑いながら質問する赤髪の少女。
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この例では、描写の切り取りタイミングはそのままに、「赤髪の少女」をより印象に残します。
前者は質問した事実の方が重要で、後者は赤髪の少女が重要として読者は受け取るのです。
言い切っている事で、次の文が際立つ効果もあります。
例えば「質問する赤髪の少女は笑っていた」だと笑顔の描写の方が印象に残りやすいです。
読者は質問の内容よりも、どうして少女が笑っているのかを知りたいと考えてしまう効果が出てきます。
このように文章の中で何を最後に持ってくるかで、読者へ与える印象を少し変える事ができます。
体言止めはその表現の手助けになります。
例えばキャラを際立たせたい場合は、キャラ名で止める事で印象に残しやすくなるのです。
使いすぎには注意ですが、効果的に使うとメリハリが生まれて、より文章全体が引き締まるでしょう。
好みがあえば、体言止めも検討してみて下さい。
───その他の止め方
例えば「く」止めは、その状態をその後も継続していく印象を残します。
その後に続ける文章が無くても、その状態を継続しているイメージで読者が捉えます。
描写の瞬間的な切り取りではなく、ある程度の持続性を持つ切り取り方です。
次に例を示します。
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例:「た」止め例)
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敵軍は諦めて戻っていった。
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例:「く」止め例)
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敵軍は諦めて戻っていく。
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この例題の場合、「く」止めの方は今もまだ敵軍が引き上げている最中を思い浮かべると思います。
次に続く文は、戻っている最中の内容を示す事として読者が受け取る効果が生まれます。
逆に「た」止めは特に明言しない限り、次の文は戻った後の内容として受け取る効果があります。
このようにあげだすとキリが無いのですが、文の最後を何で〆るかはどういった印象を与えるかに深く関わっています。
なんとなく使っていた表現を一度見直してみては如何でしょうか?
───さいごに
何か参考になったり、新しい発見があったりしましたでしょうか?
私自身も安易に使っていて反省する事が多いです。
少し意識するだけで変わってくるので、是非一度お試しを。
貴方の作品の向上に繋がれば幸いです。