【第一話】ラブコメの世界に転移しちゃった系男子?
何度も何度も投稿時間の修正をして本当に申し訳ございません。次からはこのような事にならないように気をつけます。
「いっけなぁーい!遅刻遅刻!」
そんなアニメの中のようなセリフを言いつつハァハァと息を切らしながら食パンを口に加えている男子生徒がいる。明らかに普通の高校だと校則違反になりそうな銀髪の髪色、青いヘッドホンを首からかけた彼。身長は百七十五センチほどで、ヒョロヒョロとした体型だ。
{夢咲悠人|ゆめさきゆうと}は絶賛ランニング中だ。 なぜランニングをしているかというと、学校に遅刻しそうだからだ。 そして今日は始業式。ただでさえ変人なのに新しいクラスでいいところを見せなかったらどこで見せろと言うんだ!と昨夜考えたばかりなのに早速遅刻しそうだ。学校までの道のりで最後の曲がり角を曲がろうとした、 その瞬間だった。 人生を狂わせる原因となったやつと巡り会ったのは…
ゴツンッ!という鈍い音と同時に悠人は「いってぇ......」と声をあげる。
「いてて…だ、大丈夫ですか?」
顔を上げるとそこにはぶつかったであろう女がいた。 髪は少し茶色がかっていて、肩まで髪がある。身長は悠人よりも少し小さい。百六十五センチ程だろうか。胸には女の子が持っている女の子がきれいに実っていて、スラリと伸びる長い脚。そして何と言っても顔が……とても整っている。 悠人は個人的には「一目惚れ」は無し派だが、そんな彼でも一目惚れしてしまいそうな顔立ちだ。サウナで表してもこれは整うと言うのだろうか。
「あぁ、大丈夫っす。 貴女こそ。大丈夫ですか?」
「えっと、私は全然平気です」
「そうか。なら良かった」
するとその女はスマホらしきもので何かを確認する。 すると…
「あっごめんなさい!寝坊して転校初日から遅刻しそうで…すみません!先行きます!」
すると女は立ち上がって、会釈だけしてその場を去った。
真面目な顔をしながら謝罪した彼女に対し、悠人はというと…
(うーん。これはあれだな。神様が僕にくれたチャンスだ。このまま行くと、彼女は僕のクラスに入り、僕の席の隣に座る。ここまでがテンプレだな)
アホなことを考えていた。
悠人は世間一般的に見たらオタクだ。悠人の部屋にはラノベがズラっと並んでおり、フィギュアやタペストリーも部屋いっぱいに飾ってある。アニメや少女漫画などでよくある「いっけなぁい、遅刻遅刻!」とヒロインが食パンを加えながら言い、その後運命の人に出会い、学校で同じクラスになる。このようなシーンをラノベなどでたくさん見てきて、「こ、これはアニメの◯◯のシーンだ!」と思い込み、その先に起こることを自分勝手に妄想しているのだ。普通にキモいが、今回の場合は少々違う。ここまで完璧に来て「それ」がないってのは確かにおかしい。それは悠人にとって都合のいい解釈かもしれないが…
「あ、まってやばい僕も遅刻するんだった」
上の空だった悠人は立ち上がり学校に向かうのだった。
けれど、悠人は思ってもいなかった。今この出会いが彼の人生を別のものにする、狂わせる存在になるなんて。今の彼には、知る由もない。
「ほらやっぱり笑」
なんとか遅刻を逃れることができた悠人は、調子に乗っているせいかニヤニヤしながら小声で言った。
悠人の予想的中、彼女は同じクラスかつ隣の席だ。それに…席替えでみんなが憧れる窓側の一番うしろの席。通称「極楽青春絶景特等席」なのだ!
ヘッドホンは走るときに邪魔だったせいか、あるいは落としたら壊れるからか。理由は分からないが今はヘッドホンを悠人自身のカバンの中にしまっている。理由はどっちでもいいが、ぶつかってからしまうのはアホである。
すると
「鹿児島県薩摩川内市から来ました、天ヶ瀬純恋です」
鹿児島県?よくもまぁそんな遠いところから来たなぁと、思ってしまった。
神奈川県から鹿児島県ってどれだけ距離があるんだろ、と考える悠人。
(てか両方頭文字「か」 じゃん。別に…それだけだよ?深い意味はないよ?はぁ)
そんなどうでもいいことを悠人が考えていると先生が口を開く。
「天々瀬さんはお母さんの事情で神奈川まで来ることになったそうです。 皆さん仲良くしてくださいね」
「よろしくお願いします…」
緊張しているのだろうか。やや下を向きながら挨拶する天ケ瀬純恋。このクラスに馴染めなさそうで心配なのか。あるいは悠人の存在に気がついて気まずいのか。
(まぁ…僕とこいつが関わることなんてないだろ…)
悠人はそんなことも思いつつクラス全体をみる。 もちろんざわついてた。
「新学期そうそう新たな出会いが!天皇陛下万歳!!!」
「えまって俺ラブコメの世界に異世界転生した!?」
「休み時間になったら話しかけてみようかな!」
などなど……
中には「彼女にしたいから告白してくる」なんて声もある。
(聞こえなかったことにするか。でもまぁそりゃそうか。 こんな美少女これから生きていく中で見ることができるだろうか)
普段、人を評価しない悠人がそこまで言うほど、彼女は美少女だった。
先生からの指示があり、彼女、天ヶ瀬純恋がこちらへ向かってくる。
しかし、次の瞬間だった。悠人のその考えは少し変わった。
天々瀬純恋は悠人の隣に座り、予想外な行動を取る。
「ねぇねぇ、君、朝ぶつかった男の子だよね」
耳に彼女の吐息が…少しくすぐったい。
なんだこれ、なんだこの感覚。
必然的に、顔はりんごのように赤くなる。
後ろの席だったので、周りには気付かれていない…はず。
「照れてるの?かわちぃ」
「!?」
またしても彼女は耳元で囁いた。
そこで悠人は気づいた。純恋は…天々瀬純恋は… とんでもねぇ女だ。
キーンコーンカーンコーン
ホームルーム終了のチャイムが鳴り響く。
すると突然、友達と言うまでもない人たちがこちらに寄ってきた。世間一般的にヤンキーと呼ばれる人たちだ。
(うわお。この奴らと同じクラスなのかよ。てかよくよく考えれば僕友達居ないわ)
心のなかで悲しいことを考えつつ、そいつらに視線を向けた。ガタイのいい男三人組だ。悠人よりも少し背が高い。ぱっと見だが、百八十センチはあるだろう。
悠人の通っている「私立{明智知星|めいちちせい}高校」はいわゆる「名門」と呼ばれている高校で、不良は比較的少ないのだが…極稀に出現するのだ。そして生憎と悠人はこの不良達と同じ時を過ごさなければならない。
するとヤンキーの一人が話しかけてきた。
「おいお前。 あの転校生と仲良さそうだったじゃねぇか」
「ん?仲がいいかって聞かれたら違いますね。あいつから話しかけてきたんで」
いつものように悠人は落ち着いて答える。他の生徒ならば、少なからず怖気づくだろう。
「そうか、ならお前に用はねぇ」
「俺達はあの転校生と『いい事』をしたいだけだからなぁ」
「ふっ。笑わせるな。なにを言ってるんだ?」
小声で、けれど感情を込めずに冷静に言った。
「あいつはざっと見た感じスペックが高い。少なくともお前らみたいなオス共は相手になんねぇと僕は思うぞ?」
「はぁ?何言ってやがるてめぇ」
「アドバイスをしてあげてるだけだよ?それに身体目的なんて、お前ら恥ずかしくないのか?男として」
「なんでそんなことをお前に言われなくちゃいけねぇんだよ!」
「そーだそーだ」
「…暴力沙汰にはしたくなかったが…この際だから仕方ねぇか。口答えせず、すぐに引き下
がればこんな目にならなかっただろうな!」
そしてリーダーらしき人から拳が放たれた。その瞬間。 悠人は右手が反射的に動き、その手を止めた。 さらにそいつの首元を左手で締め付ける。
「……こっちだって暴力沙汰にはしたくなかったが… 相手が先にやるなら自己防衛だよな?」
そう言って、その握ってる左手を離し、放り投げた。周りの視線なんて、気にしない。
…は嘘だな。ざわざわと視線を感じる。
「大丈夫ですか?親分!」
仲間の一人が声を上げた。
(親分って…ほんとに笑わせるなよ)
今後のこいつらのことなんてどうでもいいのでその言葉を後にこの場を去ろうとした。だが…
(トイレ行きたい。朝も忙しくてしてなかったっけ)
そう思ったのでトイレに向かおうとする悠人。ただし、理由は他にもある。単純に目立ちたくないからだ。なので逃げ場を探してトイレに行こうとしたのだ。しかしその判断は間違っていたのかもしれない。
「あっ!」
誰かに声をかけられた。
恐る恐る振り返るとそこには{とんでもねぇ女|純恋}がいた。
「あのっ!お名前教えてくれませんか?」
(えぇ…?)
「なんであからさまにだるそうな顔をするんですか!ひどいですよ!」
「そ、そうか?」
悠人的にはそんな表情したつもりはなかったのだが、
「ま、まぁいい。夢咲悠人だ。一年間よろしくな。天々瀬…さん?」
「それでは、悠人くん。突然ですがお話があります」
「なっ…なんだよ……」
恐る恐る尋ねると、彼女は大声で、こう、叫んだ。
「好きです!付き合ってください!!!」
「……は?」
クラスメイト全員の視線がこちらに向く。もちろん、さっき戦ったやつらもだ。
ただ…
(このタイミングでの告白は何らかの意味があるんだろうが…まずは最初に思った本音をド直球に言おう)
「ごめん、いきなり過ぎて話についていけないんだが?」
そうだ。というか当たり前だと思う。だって出会って一日も経ってない人に告白されたのだ。びっくり。
「先程私はあなたが私のために戦っているところを見ました。 そこであなたに惚れました」
あーなるほどね。ならしょーがないかー。とはならんよ!!!もしそれが本当ならチョロすぎんだろ!!!しかも…
「答えになってねぇぞ?それとすげー棒読みだぞ?流行りの音声合成ソフトか」
「何言ってるんですか?まぁいいじゃないですか、詳しいことは」
なんだコイツ今の時代音声合成ソフトとかしらないやついんのか?
ていうか…
こいつ、多重人格じゃね?
さっきまで耳元で囁く感じのキャラだったのにいきなり叫ぶようなキャラになるとか…
うーん。謎が深まるばかりだ。
「答えは明日聞きますね」
「.........はぁ」
「なんでため息なんかつくんですか!?酷いです!」
「いやだって、シンプルに困る」
そう言った瞬間。
「なら俺と付き合ってくれ!」
「俺も!」
などの声が飛び交った。けれどこいつはそんな声をスルーして言う。
「そうですか、なら…」
「…なんだ?」
「いえ…」
さすがに言い過ぎただろうか。 いや大丈夫だ。 こいつを好きになったとしても付き合うつもりは毛頭ない。 なぜならどう考えても釣り合わないからだ。
すると彼女はニヤリと笑って
「また明日会いましょう、 夢咲くん」
と、言うのだった。 まぁ会うつもりなんてないんだけどな。あけどクラス同じだったな。
「お、おう?また明日。学校でな」
放課後
(どうしてこうなった。どうしてこうなった。どうしてこうなったどうしてこうなったどうしてこうなった!)
なぜか今家には悠人の父と、知らない女性と…私服姿の純恋がいる。明らかに謎だ。
(いやなんで。なんで。なんで。なんで。 なんで。また明日。学校でな、とは!また明日。学校でな、とは!!!)
悠人の家はいわゆる父子家庭だ。 なので家にはお父さんしかいない。なので他の人がいるなんて滅多に無い。
そして純恋は、先程の学校での出来事を気にしているのか、少し頬を赤らめている。
すると悠人父が言った。
「悪い。悠人にはまだ伝えてなかったな、この女性の名は…」
どうだったでしょうか。今回はちょっと反省しなきゃですね。Twitter(X)の方でミスを連発してしまったので、プロローグのようなはっちゃけ具合ではありません。前書きでも書いたように、次からは本当に気をつけたいと思います。
さて、今回は書籍化したときの第1話の前半部分になります。楽しんでいただけたでしょうか。これからもっと、もっと、もっと!楽しい日常がくる!かもですね!まだ、未来は分かりません。そんな少し深い話をしたところで今回は終わりです。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました!それではっ!