街を探す 2日目ー1
爽やかな風が吹き、川のせせらぐ音が聞こえてくる。
ふかふかのベッドに沈み込み、柔らかくて、いい香りのする布団に包まれている。
暖かな日差しが降り注ぎ、私に朝が来たことを伝えてくれている。
だが、ベッドや布団が私を放そうとしないでいる。
この状況なら目が覚めても、覚めなくても、気持ちのいい朝になるだろう。
ただし、体中を這いずり回る虫がいなければの話だが……。
――カサカサカサカサカサカサ……――
「すう、すう、すう……、うーん……か、痒い……。」
――カサカサカサカサ……ブゥゥゥゥウウウウウン!!――
「うーん……ふぁぁあー、よく寝……は?」
え、ちょっと待って。
なんで虫が自分の周りを這いずり回っているの?
虫除けは設置したはずだよね。
いや、効かないやつも種類によってあるのか?
それとも、効果時間が短かったのか?
いずれにせよ、虫が自分の体を這いずり回っているのは変わらない。
とりえず、こいつ等を……抹殺する。
「はぁー……、マジで気持ち悪い。 勝手に体中を這いずり回ってんじゃねえよ、汚物が!」
抹殺するとは言っても、こいつらの体液が付くのが嫌だし……、潰すようなことはしない。
どうするのかと言うと、こいつらから離れて、消せばいい。
まずは、こいつらを『氷獄』で完全に凍らせる。
そうすればこいつらは動き回らないし、踏ん張ることもできない。
また、体液とかが凍っているから体につきにくくなる。
その次に『空間魔法』で、自分とこいつ等の間の空間を高さを固定して、拡張する。
このとき、拡張するところを間違えたら、あいつらの体や足が……、う、気持ち悪い。
このままじゃ、自分をまきこむことになるから、あいつらを一緒に連れて行かないように『転移魔法』で避難する。
そして、あいつらを『重力魔法』で一点に集めて、『空間魔法』で空間隔離をする。
これによって、自分とあいつらの空間が完全に分断されるから、間違ってこっちにあいつらの体の破片等が飛んでこなくなる。
最後に『崩天』で消し去る。
その名のとおり、天が崩壊して(崩れ落ちて)そこの場所の物体を消し去ることができる。
原理は、超高圧になって、高温になり粒子レベルまで分解するという仕組みかな。
ただし、環境等の被害がすごいし、かたずけがすごく大変……。
よし、これであいつらの抹殺が完了だね。
そもそも、なんでベッドだけを作って寝てしまったのか……。
あいつらが飛んできたり、登ってきたりするのが少し考えればわかるのに。
「次は絶対に家を建てて、その中で寝よう。」
さて、街探しの続きをしなければ……。
ん? ベッドの処理はいいのかって?
ああ、あれは、あいつらを消すのに巻き込まれて消えていったよ。
にしても、ここは全体的に平坦で歩きやすいな。
おかげでそんな足が痛くなったりしないし、疲れにくい。
そういえば、こういう異世界転移系はよくすごく強力な魔物に会って苦戦したりするとか、国に召喚されたり、重要な役目をもらったりすると聞くんだけど……。
虫と植物以外ほとんど何にもないとなると、異世界かどうか不安になって来るな。
魔法が使えるだけの地球みたいなところっていうほうがまだ納得できる。
はぁー、他になんかいないかな。
魔物でも、何でもいいからさ。
虫は絶対に嫌だからね。
お、何かちらほらといろいろ見かけるようになってきたな。
あれから大体3時間くらい歩いたかな?
ちょっと遠くに見えるやつを鑑定してみよ。 『鑑定』。
シュライム Lv:3
おいおい、誤字っているって駄目鑑定神。
そういう種族なん? 違う気がするけど。
じゃあ、あっちのスライムは……。
スライミュ Lv:89
こいつもかっ!! 誤字っているって、馬鹿神。
ちゃんと仕事してくれ。
せめて、名前だけでもいいからちゃんと表示しよ?
ていうか、レベル差エグいな。
とりあえず、何とか色々なやつがいる所まで来れた。
もう、虫と草だけの景色は嫌だな。
――ガサッ!!――
お、何かが近づいてきた? 何だろうな。
有名な魔物かな?
異世界で相手すると言ったらこれ!! といったやつが良いなー。
――ガサガサッ! ピョンッ!――
は? ナニコレ? 多面体?
「普通の魔物じゃないのかよっ!!」
は? なにこれ?
言っておくけど、私もこんなの知らない。
知らないからね!!
――馬鹿神