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氷光は希望となりて闇を切り裂く  作者: varugure
1章 天使、草原を旅す
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宿屋(?)

 泊まるところを探しに、目の前にある結構年季が入っていそうな宿屋に入ったんだが……。

 その中は、暗く、人の気配を感じない。

 受付の人もどこにもいなさそうだしな。

 試しに一回、呼んでみるか。


「すみませーん。 誰かいませんかー。」


 大きな声で呼んでみたんだが、声はしばらく反響したのち、やがて暗闇に飲まれて聞こえなくなった。


「ちょっ、バカ! いきなり大きな声を出すなよ!」

「いや、誰かいないかなーと思ってさ。 寝ているなら、大きな声で起こしたほうがいいじゃん。」

「そういう問題じゃねえって、なんか変な奴が来たらどうすんだよ!」

「え、変な奴が来たら? 正面から叩き潰せばよくね?」

「とりあえず、ここはなんか変だ! 別の宿屋に行ったほうが俺はいいと思うぜ。」


 にしても、結構大きな声で呼んでみたんだけどな。

 外から誰かがクレームを入れてくるどころか、中にいる人からも何も反応がない。

 ちょっと、おかしくないかな? この宿屋。

 今から別のところに行くのもいいけど、ぶっちゃけめんどくさい。


「いや、このまま行こう。 探すの疲れたし。」

「目の前の宿屋に入っただけじゃねえか!」

「とりあえず、誰かいるのか『生命力検知』と『魔力検知』、あと『魂検知』をやっておくか。」

「ああ、そうだな。 ついでに『神力検知』と『空間探査機』もやっとくか。」


 私たちはこの空間内を調べるために、色々な魔法を使って調べることにした。

 できれば、変なところじゃなきゃいいけど。

 お、結果が出た!


「生命力は検知できなかったみたいだ。」

「となると、ここには生物が一匹もいないということになるのか。」

「そうだな。 魔力と魂の方も無かった。」

「幽霊とか、そっち系はいないっていうことになるのか。 良かったー。」


 生物はいない、魔力も持っていない……。

 自分、幽霊とか怖いのは結構駄目なタイプだから、ゴースト系いなくて良かった。

 次はフレイムの方の結果だな。


「氷天使、良いニュースと悪いニュースがある。 どっちを先に聞きたい?」

「え? じゃ、じゃあ良いニュースからで。」


 良いニュースと悪いニュースって何だろう? 気になるな……。


「神力は検知されなかったから、この状況は神クラスの奴が関与している可能性は、ほぼないということだ。」

「よ、良かったー。 神クラスの相手が関与していたら絶対めんどくさいことになっていたよ。 で、悪いニュースは?」

「悪いニュースはまあ、予想がついてはいると思うが、『空間探査機』が何者かによって破壊されたことだ。 そして、こっちの空間に干渉されそうになった。」

「え! じゃあ、あの探査機を感知、破壊でき、こっちの空間に干渉することが出来るほどの奴がこの空間にいるっていうこと!?」

「ああ、そういうことになるな。」


 『空間探査機』を感知するのが実際にどのくらい凄いかというと、準神クラス。

 破壊するのに、神クラス。

 そして、その両方ができ、なおかつ干渉することができるのが、創造神か創空騎士系統だ。


「空間に干渉したことから、おそらく相手はもう我々の位置を知っていると思う。 だから、ここから早く移動したほうが良いと俺は思う。」

「そうだね。 ちなみに、帰る方法とかは……。」


 私たちは、相談しながら移動を始めた。

 足音はなるべく出さないようにし、全力で走る。

 声をできるだけ出さないようにしながら、『隠密魔法』などをお互いにかけた。


「不明だ。 ここの空間自体が孤立していることが探査機によって判明した。 普通の方法じゃ、帰るどころか、逃げ切ることも不可能だ。」


 空間が孤立している……か。

 そこから出ることは、確かにほぼ不可能と言ってもよいだろう。

 孤立した空間から別の空間に移動するというのは、時空の海を何も身に着けずに泳いで渡ることと同じだ。

 外に出た瞬間、時空の歪みによって、全身をばらばらに引き裂かれてしまうだろう。

 ここから、どうやって脱出すればいいのか、私にはわからない。

 そして恐らく、彼も分からないだろう。


 暗い廊下を音を出さずに、何かから逃げるように走る。

 自分のすぐ隣で、彼の呼吸が聞こえる。

 心なしか、すぐ後ろに自分の知らない未知なるものがいるような気がする。


「はぁ……、はぁ……、はぁ……。」


 ……どのくらい時間は経ったのだろうか。

 10分、20分とどんどん時間が過ぎてく。

 自分のすぐ隣で、彼の呼吸と共に何か言葉を言っているのが聞こえてくる。

 彼が必死に頭を働かせて、この状況を打開する方法を考えているのだろう。


「はぁ……、はぁ……、はぁ……。」


……どのくらい走ったのだろうか?

 100歩、200歩……と駆けていく中、自分の頭の中に『もう助からないんじゃないか』という、不安が出てきた。

 足には疲労が少しずつ溜まっていき、呼吸がだんだん速くなっていった。

 この速さがずっと維持することが出来ないということを言っているかのように、足が重くなっていく……。

 体が、もう立っているのも限界だと言わんばかりに、倒れこもうとしている。


「はぁはぁ、いっ……たん……ここで、はぁはぁ……休むぞ……。」

「……っ!! はぁー……死にそう。 はぁはぁ……マジで死にそう。」


 彼が、ここで休もうと言った次の瞬間、私は電池が切れた人形のように思いっきり地面に倒れこんだ。

 しばらくここで呼吸を整え、今の現状を確認することにした。


「脱出する方法は見つかったの?」

「いや、まだ見つかっていない。 だが、一つだけ分かったことがある。」

「それは……いったいなんだ?」


 彼は自分の『収納空間』から一つの機会を取り出した。


「これは……なんかの計器みたいに見えるが。 いったいこれは何だ?」

「これは、『PLMG特殊空間創器』というやつ。 空間に直接作用して、自分に有利な状況に持ってくることが出来る。」

「えっと、つまりどういうことだ?」

「これで、空間の性質を変えれることが出来る……ということだ。 運営に黙って持ってきていたものなんだが、ここで役に立つとはな……。」


 なにそれ、めっちゃすごい奴じゃん!

 これがあれば、この状況を打破する方法が見つかるのかな?


「だが、これはこっちも相手に干渉できるようにするぐらいしか今は出来ない。」

「何でなの?」

「……やっている途中で充電が、切れたからだ。」


 いや、最後のところで一気に残念感が増したな。

 でも、それだけで十分だ!


「でも、攻撃できるだけでも十分だよ。 じゃあ、元凶を探しにいくぞ!」

「おう!」


 私たちは、元凶を探しに暗い宿屋の中を進み始めた。

 こんなことをしたやつは、一体どんな奴なんだろう?

 あれ? 天使ちゃんたちどこに消えちゃったの?

 おや、この空間何か歪んでいるな。

 何かが干渉してきた跡があるな。

 もしかして、この中に……。

 まあ、あいつらなら大丈夫か。

 きっと、なんとかやって生きているさ。

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