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25. 愛の言葉は花と咲く

 図書室の扉を開けると、入ってすぐのところで藤枝先生が待っていてくれた。

 私は扉を丁寧に閉める。

「来たわね。他の生徒は帰したわ。ここには私と貴女しかいないわよ。そして、念のため、カーテンも閉めておいたわ。」

「ありがとうございます。……立ち話も何ですし、座ってお話していいですか。」

「ええ。」

 藤枝先生と、席に座り向かい合う。鞄は椅子の下に置く。

「藤枝先生。……大切なお話、です。」

「そう聞いているわ。だから続けて。」

「はい。それでは。」

 いよいよ。ああ、やっぱり、どうしようもない。

 不安が波となって私を飲み込む。

 手は震え、知らぬ間にぎゅっと固く握っていて、冷たい汗がにじんでいる。

 落ち着け私。なんのためにここまで来たのよ。

「清永さん、大丈夫?」

 藤枝先生が心配そうにこちらを見つめる。ここが正念場、もう私には進むしかない!

「藤枝先生……。」

 すううううううう、はあああああああ。

 ユーフォニアムを吹くときよりも深く、長く、息を吸って吐く。

 仕切り直し。

「ふう。失礼しました。……あ。」

 緊張のあまり、練習した台詞がすべて吹き飛んでいってる! もう、こうなったら。

「……藤枝先生、ごめんなさい。練習した台詞……全部飛んでっちゃいました。もう、今からは、アドリブです!」

「あ、アドリブ?」

「はい! わ、私……私……貴女が、藤枝先生が……」

 燃えるように顔も何もかもが熱くなっていく。ならば、燃え尽きるまで!

 顔をぐっと持ち上げ、藤枝先生の瞳をまっすぐ捉え、見つめて。

「大好きですっ!!!!!」

 ……遂に言ってしまった。いや、もう叫んだといったほうが的確だろう。

 藤枝先生は一瞬、目を見開いてぽかんとしたように見えた。しかしすぐに……目尻が落ちて口元は緩み、微笑んでいた。

「……うふふ。やっと……貴女から言ってくれたのね。」

「……それは、どういう意味ですか……?」

「私から、貴女に告白するわけにはいかないでしょう……? 私は貴女の先生ですもの。 でも、貴女から告白されたなら……それは受け入れたいの。私からも言わせて。」

 藤枝先生は嬉しそうに笑い、私の両手を彼女の両手で包む。そしてその頬には満開の桜のような鮮やかな桃色が咲き誇っている。

「貴女が好きよ。琴葉。」

 !!!

 藤枝先生が、私を……好きだって……。

 藤枝先生は、潤んだように艶めくローズピンクの唇で私の耳に囁く。

「……愛してるわ。琴葉。」

 囁き声を包む吐息が私の耳を撫でていく。

 あああああああ。もう、私は。私は。

「先生……藤枝先生……!」

 私はもう耐えられなくなって、藤枝先生を抱きしめて、藤枝先生へ言葉を紡ぐ。

「藤枝先生……愛してます……! 貴女が、大好きです……!」

 藤枝先生も私を抱き返してくれる。

「琴葉、貴女のすべてが……愛おしいわ……!」

 どれほど2人で抱き合っていたのだろうか。

 少し落ち着いてきたところで互いに抱擁を解き、椅子に座りなおす。

 藤枝先生は、まだほんのりと頬が桜色に染まっている。

「……藤枝先生。」

「……なあに?」

「許されるなら……私の恋人になってくれますか……。」

「ええ、もちろん、喜んで……。一回りも年上だし、女同士だけど、いいの……?」

「年も女同士も関係ないです。こんなに綺麗で、可愛くて、優しくて、素敵なお姉さん、他にいませんよ……。私は、藤枝先生がいいんです。貴女の傍にいたいんです。貴女が好きなんです。」

 藤枝先生の頬の桜色がより鮮やかに咲き広がっていく。

「まあ。こんなにどきどきするのはいつ以来かしら。

 そこまで言ってくれるのならば、私はもう、貴女の恋人よ。……でもそれは私と貴女、2人だけの秘密。

 ……あまりこの流れで現実的なことは言いたくないのだけれど……。

 過去に問題になった先生と生徒のカップルは沢山いるの。

 そうなれば、お付き合いも出来なくなって別れるしかなくなってしまうから……。

 貴女が卒業するまで、2人だけの秘密。

 守れるわね?」

「……はい。守ります。」

「……ありがとう。」

 夢みたい! 今私の目の前にいる藤枝先生が、私の恋人だなんて!

 そうだ。恋人になったのならば、連絡先を交換してもいいよね。もちろん秘密だけど。

「藤枝先生。」

「うん?」

「その。恋人同士なら、連絡先知っておいたほうが良くないですか?」

「ええ……。最近、教師と生徒のやり取りも厳しくなってて、連絡先も本当は教えちゃ駄目なことになってるの。どうしましょう……。」

「あの、それなら私に考えが。」

 私はスマートフォンを取り出し、インターネットでフリーメールアドレスの取得方法を調べて表示する。

「メールアドレス、今は簡単に作れるんです。お互いに、専用のアドレスを作ってそれでやり取りするのはどうでしょう……?」

「G-mailね。プライベートでは1つ持っているけれど。そうね。他の教員や生徒に見られることはそう無いと思いたいけれど。念には念を入れましょう。画面が何かの拍子に見えてしまうことは有り得るし。登録の名前も偽名にしておいて。」

「徹底しますね……。」

「私自身を守るためでもあるけれど、貴女を守るためでもあるのよ。私は下手したら懲戒免職で、貴女は退学までは行かないかもしれないけれどお咎めゼロとは考えにくいわ。……それでも私が学校に居られなくなるのは嫌でしょう?」

「その通りです。……危ない橋を先生に渡らせてしまったのでしょうか。私は。」

 急に怖くなってきた。私はただ、大好きな藤枝先生に告白して、恋人になっただけなのに。

「危ない橋と言われれば、否定はできないわね。それでも、私はそんな橋を渡ってでも、貴女を選んだし、貴女が良いの。私と貴女が一緒に居られるかどうかは、これからの私たちにかかってる。……忘れないで。」

 藤枝先生は私の手を握り、諭すような真面目な顔で話す。

「さて、専用アドレスを作りましょうか。琴葉をどんな名前にしようかしら。」

「藤枝先生どんな名前で登録しようかな。……桜……。櫻花さん、とか?」

「ふふ。良いと思うわ。それなら貴女は……うーん……若葉!」

「はい! 決まりですね!」

 2人で笑いながらアドレスを作成し、登録する。

「出来ました! テストでメール送りますね。」


  To. 櫻花さん

  From. 若葉

  件名:テストです

  本文:

  よろしくお願いします♡


「ええ、ちゃんと受信出来たわ。返信するわね。」


  To. 若葉

  From. 櫻花

  件名:Re. テストです

  本文:

こちらこそよろしくね('ω')

>>よろしくお願いします♡


「出来ましたね!」

「念押しだけど、本文に藤枝先生とか、櫻子とか書かないでね? 専用アドレスとか偽名とかの意味なくなっちゃうわよ?」

「気を付けます。」

「ふふ。わかってればいいの。」

「これからいーっぱい、メールしちゃいますね?」

「忙しいと返し切れないときもあるわ。お返事返ってこなかったらそう思っておいてね。」

「はーい。やり過ぎないように気をつけなくちゃ。」

「ええ。そうだわ。どうしても、って時だけだけど……。携帯番号も教えておくわ。」

「嬉しいです。櫻花さん、で登録します。掛けるときは厳重に注意しますね。それと、これが私の番号です。」

「若葉、で登録しておくわ。貴女の声が聞きたくなったら掛けるかも……?」

「照れちゃいます……。」

 私のそばで微笑んでくれる藤枝先生。

 4月に貴女が異動してきたときは、まさか、こんなに好きになって、恋人同士になるなんて、思ってもいませんでした。

 恋人になって、何をする……? そうだ! デート! 明後日の日曜日はクリスマスイブ……のイブ!

「そうだ! 藤枝先生! 日曜日に……栄都でデートしませんか?」


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