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3. 可愛くて美しい花にはやはり棘

 桜から藤へバトンタッチ完了し、校門の藤棚の下をくぐる時に毛虫が降ってこないかびくびくする5月中頃。

 私は藤枝先生のもう一つの姿を目の当たりにしていた。

「貴方達、早速5月病のようね? それとも春眠暁を覚えず、かしら? ならば、目覚ましに当てるわね新居戸君!」

「ZZZ……」

 全く気付かない新居戸君に、はぁとため息をつき、

「起こしに行く時間も勿体ないわ。……放っておきましょう。……清永さん、代わりに答えて。この時の"私"の覚悟とは?」

「え、あ、はい。ええと、お嬢さんへの恋をあきらめる覚悟……?」

 ぶっちゃけ私も眠くてぼーっとしていたが、今ので一気に目が覚めた。ちなみに新居戸君は私の目の前の席である。

「随分自信なさげだけど大体あってるわ。よくできました。」

 ほっ。危ない危ない。でも今ので一気に目が覚めた。

「受験まではあと丸二年あると思っている人もいると思うけれど、そんな甘く考えると、痛い目を見るのは貴方達だからね。この時期に余裕ぶって、転落していった子達、私は何人も見てきたんだから。そうなっても、手遅れになった子は救いきれないからね。」

 ううっ。耳が痛い。藤枝先生、顔と声はすごく可愛いのに、授業になるとキツい。現代文の授業が癒しになると思ってたけど、やはり綺麗な花には棘があった。……それにしても起きないな目の前のこの人。


 なんとかかんとか寝ずにこの現代文の授業は乗り切った。結局、新居戸君は授業終わりのチャイムで目を覚ましていた。

 好きな授業でもお昼直後はしんどいなやっぱり。

 それにしても。授業中の藤枝先生は厳しい。あのほわわんとした顔で厳しく現実的な事を言われると、余計ダメージが大きい。綺麗な薔薇に見惚れて棘に刺されるが如し。しかも、成績が下り坂の私にはいちいちクリティカルヒット。現代文も下がったら私は藤枝先生に何て思われてしまうのか!!

 嫌だ!! 藤枝先生には、良く見られたい!!

 なんとしても、現代文だけは!! 寝ないで聞いてないと!!

 そこへやってくるのは。

「おー琴葉。見事な危機回避。」

「千利。私だって真面目に聞いてるよ。」

「藤枝先生の授業だけは、だろ?」

「ぎくっ。」

「現代文だけ成績上がったって、他が足引っ張ったら全体的にはそう変わらんぞ?」

「その通りだけどさあ。まず頑張りたいのは現代文だもん。藤枝先生からの評価は良くしたい。」

「そうか。お前本当に藤枝先生好きだなあ。」

「まあねぇ。授業中は厳しいけれど、それでも見てるとなんだか幸せになれるし、今日も当てられたけど、答えられて褒められると嬉しいんだよね。」

「そうか。……そうだ。近いうち、琴葉に頼み事をするかもしれない。吹部の事でね。」

「まあ私に出来る事なら。1年生のパートも決まったことだし。自由曲も決まりそうだし。コッペリアかトゥーランドットかどっちかなんでしょ?」

「ああ。どっちになるかは顧問が最終的に判断する。そいつはありがたい。なんせ琴葉が一番適任だからな。たぶん。」

 ?? 私が適任?? どういう案件なんだろ??

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