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恋を知らない女子高生は女教師に恋をした  作者: 星月小夜歌
1-3. 中間テストと惹かれあう葉櫻
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20. 廻《めぐ》る干支と漏れ出す激情

 銀河ちゃんに心中複雑な思いを抱きながら、私は古文の勉強の続きをして、数学の勉強に移った。正直、数学は嫌いすぎて図書室で藤枝先生の癒しを感じながらじゃないとやる気が出ない。

 藤枝先生は司書室に入って仕事をしている。

 一昨日みたいに先生のそばにいたいけれど、銀河ちゃんに見られてしまうので、それは出来ない。

(藤枝先生も、他の生徒がいる前では一昨日みたいなことは出来ないと思うし。)

 まあ、すぐに会いに行ける場所にいるだけ幸せだと思おう。

 数学の問題をひたすら解いて、今、時計を見たら18時半だった。

 銀河ちゃんのいる方を確認すると、銀河ちゃんは問題集や教科書を鞄にしまっているところだった。

「あ、琴葉先輩。私はそろそろ帰ります。先輩はまだやっていかれますか。お疲れ様ですー。」

「銀河ちゃんお疲れさまー。私はもうちょっとやってくよー。」

 銀河ちゃんが図書室から出ていくのを見届けて、私は司書室へ向かう。

「藤枝先生。」

「ふふ。今行くわ。」

 藤枝先生はこちらに振り向いて微笑んでくれた。それだけで私は溶けてしまいそうである。

 司書室と図書室を隔てる扉まで藤枝先生が来る。

「貴女、さっき銀河さん……黒木さんだったかしら、に嫉妬してたでしょう。」

「そんなこと無いです!」

「嫉妬してなかったら、『ずるい』とは言わないと思うわよ?」

「……そうかもしれません。」

「まあ、私がその原因を作ってしまったのだけれども、ね。」

「そんなこと無いですよ! ……先生からすれば、銀河ちゃんも私も平等に生徒ですから。」

「ええ、そうね。……貴女が妬いてくれるくらい、私は貴女に思われているってことね?」

「せんせい!」

「ふふふふ。本当に貴女は可愛いんだから。さて、私は貴女の傍に行くから、貴女は勉強してちょうだいな。」

「は、はい……。」

 先生、どうしてそんなに的確に私をどきどきさせて来るのですか。……会うたびに、貴女に恋をしてしまうじゃないですか。

 私は元いた席まで戻り、数学の勉強をしながら藤枝先生と過ごす。

 また2人っきりになれた、今がチャンス。

「あの、先生。」

「なあに?」

「先生って……。今、恋人とか彼氏とか、いるんですか?」

「今はいないわね。いたことはあったけれど。」

「じゃあ……。好きな人、はいますか?」

「その質問には、私の口からは答えられないわね。……私が貴女の先生である限りは、ね。いつかの貴女ではないけれど、どうしても、これは、答えるわけにはいかないの。……でも、貴女はその答え、とっくに気づいてるんじゃないかしら?」

「……はい。ありがとうございます。あの、先生。」

「どうしたの?」

「終業式の日……21日。その日って、図書室は何時まで開ける予定ですか?」

「そうね……。受験生の3年生が追い込みしに来るかもしれないから、一応それなりの時間までは開けるつもりだったけれど。」

「……藤枝先生。貴女に大切なお話をしたいのです。この図書室で。終業式の日に……。2人だけでお話をしたいので……19時まではきっと受験の3年生がいるかもしれませんし、私はアンコン前日なので遅くまで部活だと思います。……19時過ぎに、図書室で2人だけ……。先生には、ご迷惑でしょうけれど……出来ますか……?」

藤枝先生は真剣な顔で、私の目をじっと見て、私の話を聞いていた。

「……ええ。わかったわ。2人でお話しましょう。19時までには人払いをしておくわ。……貴女が19時過ぎまでいることも建前を考えておくから。……楽しみにしてるわ。」

「……ありがとうございます。」

 やった。現時点では一番大切なことを言えた。とりあえず、これで一安心?

 ……この勢いだ。他にも聞きたいことは聞いちゃえ!

「……先生。さらに変なこと聞いちゃってもいいですか?」

「なあに?」

「先生って……。おいくつ、ですか……? 20代だとは思ってるんですが。」

「あら。他の先生にも秘密にしてるけれど、貴女には教えてあげてもいいかしら。……でもその前に。貴女は何(どし)かしら?」

「何(どし)って、干支の話ですか。巳年へびどしです。私は2001年7月生まれなので。」

「貴女は17歳よね。……私、貴女と干支は同じなのよ。」

「え、ってことは……29歳……。」

「ふふ。そうよ。他の先生にも、生徒にも、秘密ね。」

「絶対守ります。……もう少し下だと思ってました。26とか27とか。」

「まあ。もう来年には30よ。……せっかくだから。私の誕生日は4月12日よ。」

「あの、私……7月20日が誕生日です。」

「ふふ。覚えておくわ。」

「来年は……こっそりお祝いに行きますね。」

「ありがとう。」

「先生。聞きたいことは全部聞けたので、勉強に戻りますね。このまま貴女の傍で……。」

「もう。本当は小テストの採点とか、色々あるのだけれど……。私だって、貴女の傍に、いたいもの。」


 ああ、もう! もう何もかも放り出して……貴女だけを愛していたい……!


 

 私は、今すぐ藤枝先生に告白したい衝動を抑え込みながら、三角関数と向き合っていた。

 藤枝先生が帰宅を促したのは、19時を30分以上も過ぎてからだった。


 

 琴葉が帰宅した後、図書室にて。

 櫻子は、廃棄予定の古い図書館広報の裏紙に鉛筆で文字を綴っていた。

 " 琴葉、貴女を愛しているわ。 "

 教師としての義務だけでは最早縛りきれなくなり、溢れだし始めたその激情を文字に変え、櫻子は裏紙を自宅に持ち帰り、鍵のかかる小箱に封じ込めた。

 (ああ、琴葉。許されるなら貴女に囁きたいの。『琴葉、愛しているわ。』と。もう、貴女はただの生徒じゃなくなっているの。私の……いとしい琴葉。)


 こいしらの作中時間および、琴葉と櫻子の生年月日が明らかになりました。

 

 こいしら作中時間 → 20話時点で2018年10月中旬~下旬

 琴葉の生年月日 → 2001年7月20日 巳年 蟹座 

 櫻子の生年月日 → 1989年4月12日 巳年 牡羊座


 個人的に、年の差百合で2人の干支が同じというのは見てみたかったので、今回出せて満足です。


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