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恋を知らない女子高生は女教師に恋をした  作者: 星月小夜歌
1-3. 中間テストと惹かれあう葉櫻
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19. 図書室に新しい仲間……え?

 図書室で居眠りして楽しい夢を見て、早めに帰った後は、夕食を食べて最低限の課題だけをやって、帰りに寄ったコンビニで売ってた睡眠改善に効果があるらしいドリンクを飲んで、早々と眠りについた。

 そのおかげか、昨日までの疲れはすっかり取れて、朝はすっきり目が覚めた。

 今日は、現代文の授業がないので藤枝先生はうちのクラスには来ない。残念。

 代わりに生物とか数学とか……眠くなるのが盛りだくさんである(ちなみに、この2科目の担当は、生物が日本家屋の縁側でお茶飲んでそうで話し方もゆーっくりなおじいちゃん先生こと篠田先生、数学はロマンスグレーの御髪おぐしが素敵だけど声を聴くだけで致命的に眠くなる穏やか紳士こと灰賀先生)。

 眠くならなさそうなのは世界史くらいしかない。世界史の先生である植松先生はアラサーっぽくてどっちかというと予備校にいそうな男の先生である。(三国一騎当千とかシヴィライゼーションとか信長の覇道とかよく話に出るので間違いなくゲーマーだろう。私と話があったのは桃太郎鉄道しかなかった。ちなみに私は小学生の頃に近所の友達とやったきりである。)

 生物は植物ホルモンについて(ジベレリンっていう種無しブドウ作るときに使うやつとか出てきた)……ああ、淡々とゆーっくりと話されると眠く……手の甲をつねりながらなんとか耐える。が、ほとんど頭に入った気がしない。眠気と戦うのに必死すぎて。

 数学はサインコサインタンジェント。この前勉強したから多少マシにはなったとはいえ、公式をド忘れしたり応用問題が来たら手も足も出なかったりと、まだまだ赤点すれすれは脱却できそうもない。(ちなみにこのロマンスグレー紳士の声をまともに聞くと眠くなるので、もういっそ基礎問題をひたすら解いていたほうが目が覚めてくる気がしている。ロマンスグレー紳士その人はあほな質問にも答えてくれるいい人なんだけどな……。)

 体育もあって、結局ほぼまる一日眠気と戦う羽目になった一日がようやく終わった。

 さあ、放課後のここからが本番だ。


 いつものように意気揚々と図書室へ向かう。

 いつものように私以外の生徒は……あれ、先客が一人いるぞ。しかもたぶん……やっぱり知ってる子だった。

「おつかれさまー。銀河ちゃんもお勉強?」

「琴葉先輩。先輩ならいると思ってました。はい。テスト勉強です。補習食らって、先輩方やみんなに迷惑をかけるわけにはいきませんので。」

 黒木銀河。吹奏楽部の1年生でクラリネットパートの一人。黒髪ロングストレートにキリっとしたつり目が似合うクールビューティーな女の子だ。千利の次の吹奏楽部長に内定していて、アンサンブルコンテストでも上級生に交じって主力のクラリネット5重奏チームに編成されている実力者である。

「さっすが銀河ちゃん。でも、無理しすぎないでね。……クラの2年生に圧かけられたりとか、してない? 補習になったら許さない、とか。」

「……言われました。クラの先輩全員からではないですけど。」

「……まあ、ド正論と言えばド正論なんだけど……。クラの子とか他の1年生とかに言いにくい相談が有ったら、私でよければ聞くからね。数学教えて、だけは無理だから先にお断りしちゃうけど。」

「ありがとうございます。和泉先輩にも気にかけてもらえてますし、今のところ補習以外に怖いものはありませんよ。」

「頼もしいな。流石、千利も認めた次代部長。勉強の邪魔しちゃってごめんね。私も勉強始めるから、お互い頑張ろうね!」

「はい。ありがとうございます。」

 銀河ちゃんとの会話を一区切りつけて、私も席に座り机に問題集を広げる。今日は生物をやった後に古文の復習を挟んで数学の予定。苦手科目を多めにやるのが中間テストの目標なので、頑張る。

 植物の種子が発芽せずに種子の状態を維持すること……休眠。その休眠状態を維持する働きを持つのが……LEA遺伝子。そのLEA遺伝子の発現を促すのが……アブシシン酸。今回の生物は計算問題がないのが救いだな……。

 たしか生物の勉強を始めたくらいが16時過ぎくらいで、今17時ちょっと過ぎ。20分くらい休憩したら古文を30分くらいやって、18時くらいから数学を1時間くらいかな。

 藤枝先生は……まだ来ない。もし今回のテスト作問が藤枝先生だとしたら、図書室でやるわけにはいかないよね。作問以外にも小テストの採点とか。うーん、帰るまでには来てほしいなあ。今日は19時までやるからきっとそこまでには来てくれると信じてる!

 ぼーっとしたり伸びをしたり、面白そうな本を探したり、机に突っ伏して眼を休めたりしていると20分はあっという間に過ぎた。さて、次は古文だ。

 古文の今回の題材は……源氏物語。藤壺……桐壺更衣にそっくりなことから帝に見初められた女性。藤……余計なことを考えないの。真面目にやりなさい私。でも桐壺更衣って光源氏のお母さんで、その桐壺更衣にそっくりな藤壺に恋した光源氏ってマザ……

「あら。今日は新しい子がいるわね。」

 誰より愛しい、フルートのように軽やかな声は私の邪念を消し飛ばす。

「藤枝先生!」

 ここは図書室だし、今日は勉強している銀河ちゃんがいるので控えめにだが、明るく返事をする。やっと藤枝先生が来てくれて嬉しいから!

「うふふ。清永さん、捗っているかしら? そして、あなたも頑張ってね。」

 銀河ちゃんにも優しく声をかけている。

「あ、藤枝先生。この子も吹奏楽部で、クラリネットの1年生です。銀河ちゃん、実は藤枝先生もここの卒業生でバスクラ吹いてたんだって。」

「そうだったんですか! すみませんが、先生のことはあまり存じていなくて。さっき、琴葉先輩が名前を呼ばなかったら、名前すらわかりませんでした……。」

「気にしないで。1年生には教えに行ってないから無理もないと思うわ。よろしくね。銀河さん。」

「あ、黒木銀河と申します。クラとして繋がりがあって嬉しいです。図書室で勉強も捗りますね! これからもテスト期間は通おうと思います!」

「うふふ。頑張ってね。勉強もクラリネットも。」

「ありがとうございます! アンコンもクラリネット5重奏で金賞もぎ取ってきますね!」

「あ、ずるい! 金管8重奏も負けないんだから!」

「うっふふふふふ! 2人とも頑張って! 応援してるわ! 吹奏楽の子が勉強も部活も頑張ってるのは、吹奏楽部の卒業生としても先生としても嬉しいですもの!」

「はい! では、私はそろそろ勉強に戻りますね。」

 銀河ちゃんは再度自分の課題に取り組み始めた。私も負けていられない。楽器は違うけれど吹奏楽部の先輩として。そして藤枝先生に応援された仲間ライバルとして。

(嫉妬なんか、してないもん。)

 私も勉強に戻ろう。……そういえば、銀河ちゃん。テスト期間は図書室に通おうと言ってたな。……え、藤枝先生と二人っきりじゃなくなる? 

 うわーん。この図書室の利用者が増えることも、銀河ちゃんが勉強しに来ることも、良いことなんだけど複雑で喜べないよぅ……。

 とりあえず19時まで勉強しよう。銀河ちゃんが早く帰るかもしれないし!

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