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恋を知らない女子高生は女教師に恋をした  作者: 星月小夜歌
1-3. 中間テストと惹かれあう葉櫻
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14. 中間テスト対策は図書室で、そして思わぬ甘い罠? 2

 藤枝先生のいる図書室に入ったのが16時。先生とお話してひと時の甘い幸せから苦い現実に戻されたのが16時30分ごろ。

 そして今、藤枝先生に諭された手前、私は図書室で試験勉強を始めた。

 図書室は最長19時まで利用可能だ。他の自習室と利用時間を合わせたらしい。おそらく、19時までいれば藤枝先生が帰宅を促しに来るだろう。

 帰りが遅くなりそうだということをお母さんに連絡しておいて、19時までやろう。どうせ帰っても勉強しないし。

 とりあえず、心を落ち着ける意味でも、通常の授業の準備予習から始めよう。

 まずは古文。教科書から原文をノートに映し、現代語訳を書く。手書きで原文を書き写すのはかなり時間がかかる。確かに、写経することで覚えることもあるかもしれないが……。これだけの分量だとコピーに頼りたくなる。以前、藤枝先生に聞いてみたところ、手で書くことで覚える部分は確かにあるから大変だけどちゃんと手で書いて、とのことだった。今の私の古文の担任は藤枝先生ではないけれど、私は藤枝先生の言うことを信じたかったからそれでいいのだ。

 古文の予習は30分ほどかかった。次は英語の予習だ。これも英文を教科書からノートに書き写して訳を書く。これは……インターネット検索で機械翻訳が誰でも使えるようになった今現代、インチキすればすぐだけれど、一応まじめに電子辞書を引きながらやる。中学の頃に、英語で日記を書くという宿題があって、その時に手書きしていた単語は確かに覚えていたから、手で書くことにそれなりの意味は古文にも英語にもあるのだろう。

 英語の予習も30分程度で終わった。少し疲れた。

 とりあえず、授業の準備で必要なものは今日はこれで全部、のはず。

 次は……休憩してから英単語と古文単語の暗記をするか。その次は……数学の演習問題にしよう……。数学は大嫌いだけれど、成績を上げるなら避けては通れない。

 今、17時半。1時間はちゃんと勉強した! 20分くらいは休憩していいよね! そして最大の苦手科目やる前に癒しが欲しい!

 というわけで、私は早速司書室を覗きに向かった。

 司書室では藤枝先生が机に向かって作業していた。

 手元には定規やら、見慣れないコーティングされた紙のようなものやら、ハサミやらが見える。少なくとも、小テストなどの採点中ではないらしい。

 下手に声をかけるとまずそうな気がしたので、私はそっと(生徒立ち入り禁止だけど)司書室に入り、藤枝先生の近くに行った。

 藤枝先生はどうやら、本にカバーフィルムを貼っているようだ。図書館でよく見かけるあのフィルムだ。カバーフィルムに気泡が入らないように慎重に、慎重に……。よし! 綺麗に貼れた! 顔は見えないがたぶんほっとした顔だろう。落ち着いたように息を吐いて肩を動かしている。これならもう話しかけてもいいかな。静かに藤枝先生に近づき、声をかける。

「藤枝先生。」

「あら。ここは立ち入り禁止よ。まあ貴女は知ったうえでやってるのでしょうけど。」

 言われるべきことは言われてしまったが、そこまで怒られてはいないようだ。これが他の生徒ならたぶんもっときつく怒られているだろう。

「えへへ。ごめんなさい。1時間勉強したから休憩で藤枝先生とお話したくて。お話しできなくても近くにいたくて。」

「全く。貴女だけを特別扱いするわけにはいかないから、他の教員や生徒に見られていなくてよかったわ。これからはドアの外から呼びかけてちょうだい。私の方から行くから。でももうそんなに時間が経ってしまったの。ブッカー貼りは集中してやるから、気が付くと時間が過ぎているのよね。」

「先生、そのフィルムはブッカーっていうんですね。図書館の本には貼ってあるやつですよね。」

「ええ。図書館の本は全部が全部というわけではないけれど、大抵は貼ってあるわね。」

「先生、すごく綺麗に貼ってますね! 私は空気入れて泡入ってボコボコにしちゃいそう。」

「うふふふ。これ、コツというかやり方があるのよ。……やってみる?」

「え、いいんですか!?」

「ふふふふふ。この本のバーコードと分類シールを貼るところから、やってみましょうか。この、本を図書館で利用できる状態にすることを"装備"というのよ。」

「へー! 勉強になりました!」

「私は、大学で国語教師の免許と一緒に司書の資格も取ったのよ。そのおかげで、今はこうして学校の図書室の仕事も出来るわ。……まあ、仕事量がブラックなのは前に貴女にお話ししたとおりだけれど。」

「もし、私が藤枝先生のお手伝いできたら、先生は少しでも楽になりますか?」

 藤枝先生は少し驚いたような顔をして、すぐに微笑んで、

「ええ……。貴女が手伝ってくれたら、貴女と一緒に仕事が出来たら、きっと、今よりももっと幸せで、楽になるのでしょうね……。」

「先生! 私に"装備"を教えてください!」

 藤枝先生は照れながら嬉しそうに笑う。

「まあ。本当は書誌データを作るところからスタートなのだけれど、それは難しいし学校のデータを扱うパソコンを生徒に触らせるわけにはいかないから、バーコードとかのシール貼りとさっきのブッカー貼りを貴女に教えましょう。」

「やったあ!」

「ふふ。生徒は司書室に入っちゃだめだから、とりあえず出ましょうね。必要なものは私が運び出すから。図書室の机で待ってて。」

 私は司書室を出て、さっきまでいた机の椅子に腰かけて待ち始めた。

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