破壊神様つきつけられる
「……ホント、頼むわよ?」
創造神の視線が痛い。
だが我とて好きで情けないことを言っているわけではないことをわかっていただきたい。
というのも人間になってわかったことだが、我の力どうも素がでっかすぎる気がしてならないのである。
「……いやしかし、あんなちっちゃい動物を倒すのか? 我、世界しか壊したことがないのだが?」
「大は小を兼ねるんじゃない?……世界が壊せるんだから楽勝でしょ?」
「しかし一回もやったことがないのだが?」
「一回も?」
「一回もだな」
「……どんだけ大雑把なの?」
「そう言う問題だろうか?」
不満そうに言ってみたものの、記憶を探っても、うん。確かに一回も経験はない。
だって破壊神の力なんて、個別にぶつけるもんじゃなかろう。
使うべき時は世界が悲鳴を上げたその時。
バサッと一瞬で介錯するのが、破壊神なりの美学だった。
我の話を聞いた創造神は深々とため息を吐いた。
「はっ、詰んだわね……早く戻ってきなさいね。結構しんどいと思うけど散り際は神様っぽく頑張んなさいよ?」
「早々に諦めるな? さすがに我ももうちょっと頑張ってみるぞ! 破壊神だからな! 力を使えずともこうビシバシと五体を使ってやっつければよいではないか!」
我とてここまで来たのだ。サクッとゲームオーバーで帰ろうなどとは言えるわけがない。
幼い体で拳を握り締め、決意表明をして見せた我に、創造神は仕方がないと我の前に鏡を出現させた。
「なんだ?」
我は何だろうと覗き込む。
するとそこには見たこともないふわふわの金髪の人間がこちらを見て、馬鹿っぽく目を丸くしていた。
「あらかわ? どう見ても貧弱な子供にしか見えんのだが?」
「そりゃそうよ。人間の子供だもの。その体は中々いい感じにキラキラだけれども。はっきり言って
子供すぎるわ」
「え? なんでそんな設定に? もうちょっと強靭な体にすればよかっただろう?」
「強靭だわよ? 簡単に病気もしないしケガもしにくいはず……でも、戦闘能力って意味じゃダメっぽい?」
「ダメなのか?」
「手足が短いし。いや、こう神様的な力で遠くからぶわーっとやっちゃうならかわいい方がいいじゃんって発想だったんだけど。……この場合うっかり死なないのがいいことなのか悪いことなのか……」
「……なんでお前はこんなに残念なんだ?」
「私は残念ではない」
「まったく……つまりどうしろというのだ?」
むかっ腹が立つが、正直我とて途方に暮れていた。
こういう時の神頼みと、心の中で上手いことを言いながら妙案を期待していると、創造神は仕方がないと腕を組む。
そしてしばし思考して結論にたどり着いた。
「そうね……今の状況を打破するには貴方の破壊神としての力を使うしかない。つまり」
「つまり?」
「手加減の練習をしましょう」
ちょっぴり期待に胸膨らませていた我は、どや顔の創造神を前にしてよろめいた。
期待外れのような、これ以上ないような、言われてみれば当たり前のことだった。
「て、手加減」
「そうよ、壊したいものだけ壊せないなんて不便にもほどがある!」
鼻先に突きつけられた指先より、ずばり真実は痛いところを突いていた。