神様はサバイバる。
なんだか我、成し遂げた気分である。
神界に戻った我は、気が付けば青年の姿となっていた。
元はあの創造神の趣味全開の姿であったが、この姿はもはや落ち着く。
姿が成長しているのは、我自身の内面が姿に反映されているからだろう。
「……まぁこれもまた良かろう」
我は顔を上げる。
我はなぜかついてきてしまったポポロスの背に乗った。
「お前も律儀な奴だな。こんなところまで付き合わんでもよかったのだぞ?」
「フゴ!」
なぜだか得意げに見えるポポロスに我は苦笑する。
困ったものだが本人がいいのなら別に良いか、ではそろそろあの創造神のやつに文句を言いに行くとしよう。
なんなら、地上で編みだした必殺技のフルコースまで喰らわしてやる所存である。
成長の証として受け取ってもらおうと、静かな怒りを燃え上がらせて天界を探していたのだが、探しても探しても創造神のやつは見つからなかった。
「おかしいな……アイツどこに行ったんだ?」
「創造神ピピンは今はおらんぞ、ポポロよ」
「?」
我は突然話しかけてきた相手に振り返ると、そこには眩すぎて全く全貌が見えない存在がいたのだが、誰がいるのか我はすぐに理解した。
血の気が失せる。
この波動は我よりも完全に格上だった。そして我より格上など一人しかいない。
我は転がるようにポポロスから飛び降りて平伏した。
「戻ったな破壊神よ」
「最高神様!」
最高神様は我らすべての神々を生み出したこの天界で最も偉いお方である。
そんな彼が我に尋ねる。
「……どうであった? 地上は?」
「え、ええっと……」
バレてる……!
我は消滅を覚悟した。
だが、幸いそう言うわけではないようだった。
「せめているわけではない。心のままに応えるがよい」
そうまで言われるならと、いったん落ち着いて、我は考える。
地上にいた間のほんのわずかな時間を振り返り、我はどう思っているのかを。
それは天界でじっと待ち続けているよりも、心の震える時間だった。
「……実りの多い。時間だったと思います」
自然に答えた我の言葉に、最高神様は満足げに微笑み我にねぎらいの言葉をかける。
「ならばよい。我らの時は無限なれど価値ある時間はほんのわずかだ」
「はい」
「我らとて、行動するには不完全な経験が必要なのだと認めよう。お前の時間は有益であった」
「……はい」
ほとんど遊びにいっていたようなものなのに寛大な言葉である。
我はその御心を真摯に受け止め、深く頷く。何ならちょっと涙腺が緩んだ。
そして、事の発端である創造神に対してもあまり苛烈に反撃すまいと決めて、我は尋ねた。
「所で……創造神のやつは今どこに? あいつには言ってやりたいことが山ほどあるのです」
だがそこで最高神様の顔は見えないのだが……どうにも我には笑った気がしたのである。
「ふむ。そうよな。此度の試み有益であったのなら……継続が必要だと、そうは思わないか?」
「……は? はぁ」
その言葉の真意を我が知るのはもう少し先の話だった。
ざざーんざざーんと波の音が聞こえる。
「……」
波打ち際をじっと見つめながら、一人の美しい少女は途方に暮れていた。
島である。
どことも知れない無人島に私はいた。
「……えぇー」
創造神ピピンはどうしてこうなったのかと首を傾げた。
そんな創造神を覗きに破壊神がやってくるまでもう少し時間がかかりそうだった。