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破壊神様は決め顔で言う

 キーサンは見た。


 真っ黒な剣を携えて猪の背に乗り、邪竜に対峙する少年を。


 見ていることしかできないキーサンに、破壊神様は剣を掲げて叫んだ。


「見ていろよキーサン! ミント! 破壊神が何たるか、その真髄! 理解するがいい!」


 邪竜は翼を広げて飛び上がる。


 その巨体が嘘のように軽々と空に浮かぶと、一際規格外の大きさが際立った。


 そしてその口が再び燃え上がる。


 あの炎が再び解き放たれればどうなるか、キーサンはまるで想像できなかったが、破壊神様は怯まない。


「甘い!」


 そう叫び、一閃された刃はどこまでも伸びて、邪竜の羽根を切り落として見せた。


「―――!!!」


「我が剣は我が力の結晶ぞ! 形なんぞあってないようなものだと知るがいい!」


 不意を突かれて墜落する邪竜に向かって、今度はポポロスが駆けた。


 しかし体勢を立て直した邪竜は力を振り絞り、口を開く。


 先ほどとは比べ物にならないほどの力が込められたその炎は、邪竜自らの口まで焼き溶かしていた。


 ポポロスは止まらない。破壊神様は瞬き一つせず熱の嵐を突き進む。


「これで終りだ! 破壊神んんん―――」


 吐き出された炎に真っすぐ突っ込んだポポロスと破壊神様は叫んだ。


「ビイイイイー--ムッ!」


 目から放たれた破壊光線は炎にぶつかり圧倒する。


 剣関係ないんかい!


 思わずツッコミを入れてしまいそうになったがその威力はすさまじい。


 どちらが上位の存在なのか、あまりにもあっけなく終わった攻防を見れば、赤子だって理解できたはずだ。


「…………ギャォ」


 あれほど恐ろしかった邪竜は体に大穴を空けられて、大地に沈む。


 灰のように崩れていく巨体を見た破壊神様は当然だと腕を組み高笑いを響かせた。


「ハーッハッハッハッハ! 見たか! 我が必殺の一撃を! 人間達よ! 我が偉業! その目に焼き付けろ! 破壊神が破壊すると決定して破壊できないものはないのだ! 存分に恐れ敬うがいい!」


 最後に自分たちに贈られた言葉で、キーサンの頬は思わず引きつる。


 邪竜が完全に消滅したのを確認して、ポポロスに乗ったまま破壊神様はこちらにやって来た。


 破壊神様の言葉に嘘偽りなんてなかったと今度こそ完全に理解したキーサンは、その姿におのれの最後を幻視した。


 傍らを見ると、ミントも顔を青くしている。


 無理もない。大工仕事をしていた時とは違う。


 破壊のための破壊の力は、それだけ恐ろしいものだった。


 とうとう目の前で止まった破壊神様はポポロスの背からひょいと飛び降り、キーサンの肩を叩いた。


「よし……今度はお前達の番だな」


「え?」


 言われた意味が分からず、身をすくませるキーサンに黒い剣が向けられて―――。


 剣はざっくりと眼前につきたてられた。


「ええ?」


 ナニコレと視線で問うキーサン。


 そんなキーサンに破壊神様は言った。


「これで我を突き刺せ」


「……は?」


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