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破壊神様

「丸々とよく育ったものだ。邪竜とはよく言った」


 邪竜の瞳に射すくめられたキーサンとミントはそのとたん震えだし、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す。


「そ、そんな……あんな化け物……どうしようも」


「こんな……こんな馬鹿な生き物がいていいはずが……」


 確かに邪龍は、ただの生き物には手に余るように見える。


 黒い鱗なんかは我とセンスが似ていてかなりクールだと思うのだが、生き物に根源的な恐怖を与えるのならばどうしようもない。


 アレがひとたび戦えば、人間なんて一瞬で焼き肉だろう。


「ブヒー!」


 ポポロスすらダッシュでこちらに逃げ帰るくらいだからよっぽどである。


 だが逃げて来たかと思われたポポロスは我の横で急停止して、隣に並び立つ。


 そして頼みますとでも言いたげに視線を向けてくるのだからやはり賢かった。


「よし。任せておけ」


「フゴ!」


 おや、乗れと言うのか? さすがはポポロス、我が見込んだ猪だけのことはあった。


 賢さも勇敢さも見上げたものだが、何よりその覚悟が素晴らしい。


 我とて未練はあるが覚悟はできている。


 我は頷き、ポポロスの背に飛び乗った。


「生まれて早々悪いが……破壊させてもらうぞ」


 そう宣言したものの、相手に言葉は不要だった。


「グロロロロロ……」


 喉を鳴らした邪竜は速攻で口を開けた。


 生じた炎はすさまじく、口を開けただけで肌が焼けるようだ。


 カッと光り輝いた瞬間、我は右手を掲げた。


 邪竜のブレスは一直線に放たれて、島の形を変える。


 島を割った炎はもはや炎なんて呼び方に収まる威力ではない。


 だが所詮は炎。


 炎程度で我が破壊の力を脅かすなど笑える話だった。


「熱いではないか。だが綺麗に防げたな。これを破壊神バリアーと名付けよう」


 邪竜は面白いとでも言いたげに笑ったように見える。


 生まれたばかりのくせに生意気だった。


 だが本当の恐怖はここからだ。


 我が破壊の力はブレスのエネルギーを消滅させたが、そんなことはデモンストレーションに過ぎない。


 邪龍はひるむどころか我に殺気を叩きつけてくる。


 まだわかっていないようだがそれも良し。破壊神たる我が破壊すると宣言した以上わからされるのは確定である。


 生意気にも破壊神を破壊できると思いあがる愚かな生き物に破壊神とは何たるかを示さねばならなかった。


「では始めようか……貴様に我の本気の手加減というものを見せてやる」


 我は剣を構えて、滅びの竜を見据えた。


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