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破壊神様山を登る

 今までさんざん歩き回っていたはずの島だが、今日はいつもに増して緊張感がある気がする。


 海岸沿いをぶらぶらと歩きまわるのとは明らかに違う、一切先が見えない山の中を少しずつ進む経験は、どういうわけか我の心の奥をざわつかせた。


「なるほど! これが冒険心というやつだな! 我知ってる!」


 だがその質問に答えるものは残念ながらいない。


 キーサンとミントは後からついてきているものの、どう見ても体が強張っていてがちがちだった。


「……なんというか警戒しすぎじゃないか? というか、普通に歩け。遅いぞ」


「いやいや時間をかけて慎重にだな!」


「そうですよ! どこから竜が飛び出してくるかわかったもんじゃありません!」


「そこら辺の茂みに竜なんて隠れられないと思うのだが?」


 竜の類は魔法の文明が発達した世界に現れる割とメジャーな魔物だ。


 知能が高く、戦闘能力が高い。


 様々な亜種も存在するボスになりがちな魔物だが、大抵の場合体が大きいものである。


 ただ竜が出ないにしても、やはりポポロスの案内する道には大量の魔物がひしめいているという気配がないのが気にかかった。


「ふーむ、どうにも奇妙だ。静かすぎる……だがまるで違和感がない―――わけでもないか」


 いると思って探せば間違いなくいる。


 我はポポロスの進行方向から歩いてくる、邪悪な気配に方眉を上げた。


「む。来たみたいだな」


「あ、おう!」


「ついにですか!」


 茂みを揺らし姿を現したそいつはシカのような魔物だった。


 大きく枝のように広がった角から、霧のようなものが発生させているのが見える。


 アレは中々厄介そうだ。ならば試しがてら我が一太刀で終わらせてくれる。


 我は自分の剣を構えようとしたその時、すさまじい速さで後ろから二つの影が飛び出していった。


「はあああああ!」


 キーサンは必死の形相で鉄の塊に等しい大剣を軽々と振り回し、一薙ぎ。


 怪しい角は軽々と両断されて宙を舞う。


 我ながら中々の切れ味だ。頑張って作ったかいがあった。


 力に自信があると言うのも間違いないらしい。


 いやあの働きぶりを見ていればそりゃそうだと思うのだが、ここまで軽々とあのデカブツを振り回すとは思わなかった。


 だが鹿の魔物も中々のものだ。


 角が使えないとみるや、前足を振り上げてキーサンを踏み潰そうとしてくる。


 漸く出番かと我は剣を握ったのだが、間髪入れずに飛んできた衝撃波で魔物はくの字に折れ曲がった。


「エアショット!」


 ミントである。


 杖から神聖なオーラが立ち上り、効果は上々の様だ。


 砲弾を食らったように派手に吹き飛ぶ魔物はもはや動くこともかなわない。


「……!」


 追いすがったキーサンは、一刀でシカの頭を切り飛ばして見せた。


「ふぅ。すげぇ切れ味だ。それに見た目より軽い」


「こっちもです……驚きました。魔法の威力がすさまじく上がってますよ」


 大絶賛である。我ちょっと照れる。


 剣は人間でいうところのピコ単位で鋭さを調整しているもの。


 杖だって創造神の他にこっそり我の加護付きである。


 我はなんか飛び掛かろうとしていたのがちょっと気まずくなって、剣を引っ込めた。


 うん。やっぱりやる気満々だったんだなお前ら、正直なめてた。


 反応の速さと連携は駆け出しとか言ってた割りに恐ろしく速かった。


 冒険者侮りがたしである。


 そこから二人は調子が出て来たのかなぜか我を守る様に進んでいて、なんだかなぁって感じである。


 我らが山を登っているのは、傾斜が急になっていることからもわかった。


 真っすぐにポポロスは山頂を目指していて、我は続く。


 ただ一歩進むごとに嫌な気配が濃くなっていくのが我にも分かって、余計な口を開く気にもならなかった。


 やはりポポロスは、この島の秘密を知っていたのだろう。


 そして我らはたどり着き、それを見た。


「な、何だこれは!」


 その場所が山の火口であった場所だろうとは思う。


 だが、火口には真っ黒なヘドロのようなものが湖の様に溜まっていたのだ。


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