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破壊神様断言する

 コホンとミントが咳払いする。


 一番事情に詳しいと思われるミントを先生役に、話は始まった。


「えー事の始まりは神託です。教会の神官が島に世界を滅ぼす厄災が生まれつつある。人の力で討伐せよと神の声を聴きました」


「「へー」」


 キーサンは一回自分も受けてるくせに胡散臭そうに。我はどいつがそんな真似をと訝し気に相槌を打った。


「神託は今まで何度も歴史の中で行われてきたことです。世界中で魔物の動きが活発になっていたこともあって、教会は騎士団を島に派遣する事に決定したのです。そして私達は島に上陸したのですが、何者かの襲撃によって……全滅。何だったでしょうか? そこのところが曖昧なのですが」


「うん。気にしなくていいのではないか?」


「そうですか? まぁそう言うわけなので、魔物を討伐しろと神託があればそれを実行することこそ我らの使命なのです」


 ミントの我々が世界を守っています的な誇り交じりの解説を聞いてなるほどな―と我は意外な気分になっていた。


「なんだ、この世界は頻繁に魔物が出るのか?」


 疑問に思ってそう言うとキーサンが何を当たり前の事をと笑う。


「当り前だろう? そりゃぁ昔から魔物は出るさ。危ないから冒険者なんてものがいるんだろう?」


「騎士団だってそうです。魔物はいますよ」


 冗談でもなさそうで、キーサンとミントはいたって真面目だった。


 なるほど、もう共通認識として魔物の存在は認知されているらしい。


 それはそれで困ったものだなぁと我は嘆息した。


「そうかぁ。まぁ魔法文明っぽいからな。だから我はあんまり推奨したくないんだよな魔法は。アレは直感で色々出来るから便利すぎるんだよ。手軽だが世界にゆがみが起きやすい」


 安易に結果を求めれば、後で痛い目を見るなんて事はよくある話である。


 破壊神視点での話になるが、魔法の酷使で早い段階でどうしようもなくなった世界をそれこそ星の数ほど知ってる我としてはとてももどかしい話だ。


「「?」」


「あ、知らないか。魔物はな? 生き物が魔法を使うことで生まれる歪みから生まれた反存在だよ。今この世界にいる生き物を模して現れ、その世界の生物を滅ぼそうとする。それが魔物だ」


「な、何ですかそれ? 聞いたこともないんですけど?」


「そりゃそうだ。魔法は便利だからな、簡単に否定はすまい。それに大抵は生まれたときから使える力に疑問は抱かないだろう? ましてそれが魔物の発生する原因だなんて簡単には結びつけないだろうさ。我としては早めに気が付いて、魔法を使わない技術に舵きりをお勧めしたいところだ。そっちの方が世界が長持ちするからな」


 まぁ資源を活用する文明もそれはそれで問題もあるのだが、ここでそれを言っても仕方がないことだろう。


 キーサンは冷や汗を流して我を凝視していた。


「魔法のせいで魔物が生まれるなんてそんなことがあるのか?」


「あるな。だが救済措置というか……延命措置も存在するぞ。それが神託であり儀式だ」


「どういうことです?」


「魔物の発生は魔法を使い続ける限り止められないんだが、一定のところまで行くと魔物の……親玉みたいなのが生まれるんだ。そいつをこの世界の生き物が倒す。そう言う儀式だよ」


 第一段階が魔物の発生だとすると、親玉の発生は第二段階といったところだろう。


 親玉が生まれると魔物が活性化し、世界にあふれて蹂躙する。


 それを解決する儀式である。


 ちょいと反則気味のリセット方法は、延命という意味では優秀だった。


「「!!」」


「だけど……今回は神託が間違ってるんじゃないか? 我、この島にボチボチいるが、生きてる魔物なんて早々出くわさんぞ?」


「「!!!」」


 なんだかすごく驚愕されてしまったが、嘘ではない。


 我としてはそこだけが解せないポイントだった。


 我はもう結構な間この島にいるが、魔物が溢れていると言うほどの印象は持っていなかった。


 すると困惑の表情を浮かべるミントがおずおずと手を上げた。


「いやでも、ポポロスはどうなんです? 彼は……魔物では?」


「いいや? ポポロスはすごく強い猪だ。魔物じゃないぞ?」


「「いやそりゃ無茶ですって」」


 声をそろえられてしまっても、ポポロスは猪。破壊神の名に懸けてこれだけは間違いなかった。


 ホントだから。


「ポポロスはでっかくてやたら強いがただの猪だ。間違いない」


 魔物なんかと間違ったらポポロスが可愛そうだ。


「……」


「ああ、だがついさっき魔物は一匹見たな。あの昨日食べた牛。アレは魔物だろう?」


 我は宴会の時の案外うまかった牛を思い出した。


 魔物の肉だって食べられるのを我は知っている。


 その違いは彼らの体の中に魔石というコアになる物質があるかないかだけだった。


 思えばアレがこの島に来て初の魔物だった。


「ああそうです! 解体したら中から魔石が出てきました!」


「そうだろうとも。だがあれくらいの魔物なら、世界中にいるのだろう? 親玉が生まれるような場所にはもっとわんさか魔物が溢れるんだぞ?」


 だからこそ我は神託が何かの間違いだと思ったわけだ。


 だがその言葉に納得いっていないのはミントだった。


「そんなはずありません! 神託が間違っていたことなど今までないんですから!」


「そんなこと言っても、ここで親玉が生まれるというのなら前段階でこの島の生き物はもう駆逐されていてもおかしくはないのだ。……そうだな例えば、魔物が湧いた瞬間から片っ端にやっつけでもしていない限りは……」


 こんな無人島にそんな奴いるわけないと断言しようとして我ははっとした。


 いや、いるかもしれない。


 生まれたばかりとはいえ破壊神の我相手に互角に戦い、つい先ほど実際に魔物を狩って見せた生き物がいたじゃないかと。


 我は目を見開いてポポロスを見る。


「……フゴ」


 そんな視線に気が付いたのかポポロスは得意げに鼻を鳴らした。



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