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破壊神様隠された力を披露する

 ガリガリと一心不乱に地面に何かを書きなぐるキーサン。


 心得があるのは素晴らしいが、何をやっているのかわからなければ我らは待ちぼうけである。


「なにをしているのだろうな?」


「たぶん……間取りを書いてるんじゃないですかね? 紙なんてないですし」


「ふむ、中々の広さで我は嬉しい」


 だがその後は、器に水を満たしたキーサンが難しい顔で器と地面を見比べて唸っていた。


「これは……何をしているのだ?」


「さー。私にもサッパリです」


「……水平とってるんだよ。水面に合わせて平行にすりゃあ傾いてねぇ。まっ平にみえても、地面だって傾いてるもんなんだ。建物を建てる時はこういう傾きが少なけりゃ少ないほうがいい」


「「へー」」


「だからまずはここに基礎を作っていく。とは言っても本格的には無理だから均して押し固めるくらいが関の山だろうが」


 いろいろ無人島じゃ厳しいとため息交じりに呟くキーサンに我は首をかしげて尋ねた。


「本格的な奴はどうやる?」


「え? そりゃぁ。王都なんかじゃコンクリートなんかを使うかな?」


「コンクリートとは何だ?」


「ええっと……最初ドロッとしてて固まると石みたいになる……人工の石かな?」


 そう説明するキーサンに我は首を傾げた。


「んん? つまりはここに硬いものを平たくなるように敷き詰めればいいのだろう? 石ではダメなのか?」


「ダメじゃねぇけど。石は加工が大変だしな。基礎は平らにしたい……」


「ふむ、でこぼこでは話にならんのか。……なら我がどうにかできるかもしれん」


 そう言うと我は、その辺にある岩に狙いを定めた。


 よし特訓の成果を見せてやろう。今の我なら平たくすることくらい造作もない。


「実はな、我は特訓を繰り返すうちに、出来ることが増えてきた。その中で壊したいものを壊したいだけ壊す能力に目覚めたのだ」


「何だよその、思春期に目覚めましたみたいなカミングアウト? 壊したいだけ壊しちゃダメだろ?」


「違う、そうじゃない。正確に壊す範囲を見極める能力ということだ。あー……なんと言ったらいいかな。言っても分からんかもだが、万物を構成する粒の一つまで壊したい部分を選別する能力が元々あったけど使ってなかったーみたいな話なんだがな……」


「?」


「まぁ見せた方が早いか」


 自分で言ってても説明できる気がしない。


 精密な制御の必要に迫られて初めて気が付いたなんていうのは、説明するとかっこ悪い話でもあった。


 我は手ごろな岩に目をつけて、指先に集中させた破壊神オーラを一振りする。


 壊したいものだけを壊す。


 細かく破壊場所を意識すれば、この手は少しも狂いはしない。


 すっぱりと、邪魔な部分は一瞬で消え失せた。


「と、まぁこんな具合だ」


 上半分が消滅した岩の断面は、磨き上げられた鏡のように平らに成形されていた。


「これではダメか?」


「い、いや……すげぇ! どんな魔法だよ!」


「おお? いけそうか?」


「ああ! じゃあ指示通りに岩を並べてくれ! そんで俺が印をつけたところから真っすぐ切ってみてくれ!」


「もちろんだとも! 任せておけ!」


 キーサンは先ほどの水やらロープやらを使いながら、地面に立てた木の杭に慎重に印をつけていく。


 中々家を建てるというのも大変らしい。


「ポポロスは……どっかに行ってしまったな。野生動物だから仕方がないか。我一人でやるしかないな」


 我もぐずぐずしている暇はなく、今度は岩をたくさんそこら中からかき集めて来なければならない。


 我は破壊神パワーで出来るだけ大きいものを集めてスッパンスッパン加工する。


 キーサンは地面を押し固めて、微調整を繰り返していた。


「しかしこいつは面白れぇ。一発でまっ平だ!」


「まぁな。壊したいものを壊すのが破壊神というものだよ」


 最初は加減を間違えて、うっかり世界を滅ぼしたのは今は昔の話だ。


 我は小さな嘘のかいあって、キーサンからは尊敬のまなざしを頂戴した。


「うまくやれば、王都よりも立派な家だって作れるかもしれん!」


「おお! そうか! できるか!」


 これは思ったよりも期待できそうだ。


 キーサンの目はキラキラと輝いていて、作業を楽しんでいるようにも見えた。


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