破壊神様挑まれる
黒色の多いそれはとれたばかりの魚だが、炎で炙ると真っ黒に変色していた。
火の通し加減は十分いや、いつもより念入りに火を通したから十二分といったところか。
間違いなく寄生虫はすべて死んでいるはずだった。
「安心して食うがよい! 人間が食べても問題ないはずだ!」
「は、はぁ」
反応が薄い二人はゆっくりとそれを口に運ぶ。
よく焼いた魚はよく火が通った証にじゃりじゃりと音がしていた。
そしてミントがためらいがちに口を開く。
「……あの、ちょっと焼きすぎかなーと思うんですが? あと塩などあればいただけると……」
おずおずと手を挙げてそんなことをいうミントに、我は首を傾げた。
「ん? なんだそれ?」
「……!? 塩を知らない!?」
目をむいて驚いているミントはわなわなと震えだす。
横のキーサンも信じられないという表情で我を見ていて心外である。
そしてなぜか大人しかったはずのミントがキレた。
「……そんなの……料理に対する冒とくです!」
「お、おう」
勢いに押されて我がたじろぐと、ミントは腕まくりして鼻息荒く我に詰め寄った。
「私にやらせてください! 頑張ってみますので!」
「お、おう。そうか……そいつは我に対する挑戦だな? ならば本場の人間式を見せてもらおうではないか!」
聞きかじった知恵で焼いた魚もよいとは思うが、やはりそこは人間の知恵。
本家の料理を実際に見せてもらうのも一興である。
我が挑戦を受けると、人が変わったように腕まくりしたミントが力強く頷く。
その瞳には赤い炎が燃えているようだった。
「ではしばしお待ちを!」
そう告げると、ミントは改めて海岸の荷物置き場に走っていった。




