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破壊神様名乗る

「うーん……うーん……」


「コヒュー……コヒュー……」


 ぱちぱちと炎が弾けている。


 どんどん燃やして、大きくなっていく炎はいい感じにその火力を増していた。


「うーん……」


「コヒュー……」


 我とて火を使い始めてからただぼーっと眺めていたわけではない、少しは火というモノを理解してきた。


 料理をするにあたってとにかく中まで火を通すことがとても大事だ。


 寄生虫はよくない。


 こんがりと、そしてじっくりと焼くためには細心の注意を払ってそれなりの時間焼かねばならない。


 寄生虫はよくない。


「ううーん……」


「……」


 いい加減唸り声がうるさくなってきたので振り向くと、ちょうど目が覚めた片方の人間とバッチリ目があった。


「……ここは?」


「ここは無人島だ。お前を乗せて来た船は……まぁ色々あって帰ったぞ」


「ええ!? 一体何があったんですか!」


「……さぁー?」


 うっかり人間さん達を追い払っちゃったことはまぁ、別に言わなくてもよかろう。


 我はちょっと居心地が悪くなったので、こちらも聞くべきことを聞いてみることにした。


「そんなことより、お前はなんだ? そっちの死にかけのやつも知ってるなら教えてくれ」


「え? ええっと……こっちの人は知りませんけど。とりあえず死ぬ寸前なのなのは見過ごせませんので少々待ってください」


「うむ?」


 そう言うと人間の女は気絶してさえ握りしめていた杖を掲げて、もう一人に振り下ろす。


「ヒール」


 するとその手のひらから暖かな光があふれて、もう一人の顔に生気が戻ってきた。


 その光の正体を我は知っていた。


「この世界では魔法があるか……というかお前の加護ではないか? 創造神」


「おう、信者か。気が付かなかった」


「嘘だろ……適当な奴め」


 絶対この会話は聞かせられんなと我が内心ため息をついていると、創造神の信徒は振り返り我に頭を下げた。


「私は創造神様の信徒。神官見習いのミントと申します。いったい何が起こったのかわかりませんが、助けていただいた……ということでいいのですよね?」


「え? うん……その通りだ!」


 我は全力で嘘をついた。


 イメージの悪い破壊神にありがちなムーブである。


「それで、そっちの干物も目が覚めたか?」


「……お、おう、おかげさまでな」


 よろよろと干物が起き上がった。


 ヒールだけではまだ死にかけもいいところだと思うのだが、大した生命力である。


 こちらはよく見れば人間の男で、軽鎧に片手剣を腰に吊り下げているところを見ると戦士のようだった。


「いや、危うく死ぬところだった。俺はキーサン。助けてくれてありがとう」


「うむ。それで? なんで箱の中に入っておったのだ?」


 我が好奇心で尋ねると人間は目をそらした。


 何か後ろ暗い所があるのだろう。だがすぐに話し始めたのは、こんなところで恥もないと開き直ったからのようだった。


「船に忍び込んで箱に入ったのはいいんだけど、その後蓋を釘で打ち付けられた」


「そりゃあ……バカだなぁ」


「あらー」


「うるさいな!」


 キーサンは叫ぶが、空気が生温かいのは仕方があるまい。


「いや、それ以外に言葉が浮かばなかった」


「そうですよ。いくら何でも残念ですよね」


「くっ!」


 自分でも間抜けだと思ったのか、キーサンは顔を赤くして言葉に詰まった。


 にしても、どうやら我も含めた三人ともに初対面ということか。


 ならばと我は立ち上がり、ゆっくりと腕を組んだ。


「……では、我も名乗るとしようか。よく来たな人間達よ。我が名は破壊神ポポロ。世界に終末を告げる破壊神である!」


 右腕を大きく振り上げ、体を斜めに傾ける見栄えを優先したカッコイイポーズは、自己紹介のとっておきである。


 ぶわっと、軽く風など吹かしてみたとっておきに、人間達は畏怖を覚えるはずだったのだが。


「……へー」


「……あらー」


 どういうことだろう空気が生温かい気がした。


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