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破壊神様無人島からスタートする

 創造神ピピンは上位神の一人で顔見知りである。


「おおビックリした」


 それはともかく、なんだか知り合いに恥ずかしい独り言を聞かれたようで、我はとても気まずい。


 だがそんな我に構うことなく、創造神ピピンは無駄に体を光らせて登場した。


「聞かせていただきましたとも。……暇を持て余しているのでしょう?」


「……うん、それはいいが眩しいのだが? 」


「え? そう? じゃあ光量の調節を……」


 ようやく光の中から創造神が徐々に姿を現す。


 何年か前に見た時は、特に姿かたちがある感じでもなかった気がしたのだが……どういうわけか創造神は人間の女性の姿だった。


「どうしたその姿?」


「需要と供給です! ではなく……コホン。では破壊神よ聞きなさい!」


「お、おう」


 現在創造神は美女ではあるが鼻の穴を膨らませて、妙なテンションで台無しだった。


 この時点で我は妙な寒気を感じたが、その寒気の正体を不安だと見抜けなかったのは我の落ち度であったろう。


 創造神はやたら楽しそうな顔をしてどんと自分の胸を叩いた。


「貴方は異世界転生という言葉を聞いたことがあるかしら?」


「……まぁ話だけは」


 やはり心の声を聴かれたらしく、ピンポイントに話題を振ってきた創造神はてかてかした顔で楽しそうに頷いた。


「ならばよし! では今からこの私が貴方の望み通りに異世界転生させてあげようではありませんか! 大丈夫! 慣れていますので!」


 なぜそうなるのかとツッコミ所は沢山あったが、我としてはため息しか出てこない。


「ああ、需要と供給ってそういう……お前もろくでなしの一人だったか」


「何か言いましたか?」


「いやなにも……しかし、わかっているか? 我は破壊神だぞ?」


 そもそも破壊神たる我を惑星上に送り込むというのが非常識である。


 基本的に我が力は破壊という性質上、神々ですらその力を危ぶむものだ。


 だから冷静になればそんな提案は引っ込むものと思っていたが、なんでか創造神はきょとんとした顔をしていた。


「いいんじゃないですか? 暇なんでしょう?」


「……まぁそうなんだが」


 なんかこいつ思ったより適当だなー。


 ぐいぐいくる創造神に残念な気分になっていると、いつの間にか我の周囲に幾何学的な模様が光で編まれていることに気が付いた。


「ん?」


「では、貴方を人間の体で転生させるとしましょう! 破壊神の権能はそのままです。では楽しんできて下さいね!」


「いや、ちょっと待て! いきなりか!?」


「だって面白そうだから……」


「いいのかそんな理由で!」


「いいのです! 一回神様もそういうことやってみたい! という話はあったのですよ! まぁお姉さんにお任せなさい!」


「いやいやいや……」


 あまりにもあんまりな創造神に我は大いに慌てるが、もはやすべてが遅かった。


「大丈夫ですよ。人間の体は滅びるまで数十年から数百年ってところです。我々からしたら瞬きするような時間でしょう?」


「そうかもしれんがな!?」


「うふふ。ちなみに人間ボディーは私の好みで決めさせてもらいました。仕事っぷりは転生後にご覧あれ!」


「えぇぇぇ……」


 我は光に包まれる。


 手際が良すぎて、だらだら仕事をしがちな創造神とは思えない迅速な仕事っぷりに我は驚愕した。


「では旅立つのです破壊神よ! さぁ今こそおのれの殻を破り、扉を開くのです! そして新たな世界でちやほやされてくるのです!」」


「……!?」


 抗議の声はさえぎられ、転送の陣は完成する。


 そして我は目もくらむような光の中に送り出された。




「……はぁ」


 我は光の中で考える。


 納得はいかないが、まぁこれも自分で言い出したことかとすぐにあきらめはついた。


「なんか急展開だが……まぁいいか、元はと言えば我が望んだことでもあるわけだし」


 正直に言えば、かなりワクワクしていた。


 我とて、全く地上の世界に興味がなかったわけじゃない。


 それに不安材料などあるわけがなかった。


 何せ我、破壊神なので。


 人間の世界でもベリーイージーで圧倒的ではなかろうか?


 破壊神って恐れ敬われる系のキャラなので、ちやほやとかされにくいからちょっと期待しちゃうではないか。


 キラキラ輝く光の中で新たな体が構成されてゆく。


 そんな中、生まれた胸のドキドキは冒険の始まりを予感させた。


 こうなれば大冒険の最初の第一歩は華々しく飾ってやろうではないか!


 我は高笑いなんてしながら、新たな活躍の舞台に突入するのだった。




「……」


 ザザーンっと波の音がする。


 見知らぬ海岸で我は一人、膝を抱えていた。


 海はとても広く、水平線には島一つ見えない。


 というか人の気配すらまるでなかった。


「……まさかの無人島……だと?」


 ズズッと鼻をすすり上げる我。


 太陽は海に沈み、空は青ざめるみたいに碧く色を変えていた。


 しばし黄昏ていた我は、太陽が沈みきる前に立ち上がり震える。


「あっ。これはもう、完全に手遅れだ」


 我一発でわかった。

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