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破壊神様満腹になる

「あ―――。もう食べられん」


「フゴ」


 たっぷりの果物に埋もれ、我は巨大猪のポポロスのボディを枕に横になる。


 胃袋が満たされたその状況で我は心に灯った温かいものに包まれていた。


 満タン。そう、満タンだ。


「これが満たされるということか……」


 もう一度まどろみの中に沈もうとする我に、怒鳴り声が頭の中に飛んできた。


「おい! また目的を忘れてない?」


 あきれ声の創造神だが、これ以上何をすればいいのか、我には皆目見当がつかなかった。


「いや我頑張っただろう? 新たな食糧を得て、友まで出来た。これ以上どうしろと?」


「いや、猪食べるんじゃなかったのそう言えば?」


「お前はホントダメだな創造神よ。今の発言は破壊神寄りの容赦のなさだぞ? 果物と魚と貝でも腹は満たされる。臨機応変に行くべきでは?」


「そりゃそうだけど、食料確保したら島を脱出しなきゃでしょう?」


「……どうやって? もう我は一生ここから出られんのだ」


 正直我にはここ以外の島がどこにあるかもわからない。


 そもそも海などどうやって渡れと言うのか? 今の我には高度過ぎる難問だった。


 だからこそ続く創造神の言葉は意外であった。


「そんなことはないわ」


「ほう? 方法があると?」


「ありますとも!」


 我はのそりと体を起こす。


 ここは無人島。そして海は広い。


 何せ水平線の彼方まで海を割っても、島もない。


 絶海にもほどがある。


 だが出られる方法があるというのなら興味はあった。


「まぁ、しかしそれなら最初から人里に送ってくれればよかったんだがな」


「それ、力を使いこなせないのにいいます? 無人島で正解だったでしょう? まぁ、狙ったわけじゃないけど結果オーライ」


「今なんて言った?」


「今更、終わったことをほじくり返したって意味のないことだわ。それよりもさっそく船の制作に取り掛かりましょう!」


 偉そうに指示する創造神はまたわけがわからないことを言い出した。


 そもそもである。


「船とは?」


「……貴方もちょっとは下界の様子を見なさいよ。いくら何でも知らなさすぎじゃない?」


 あきれている創造神の言うことももっともだが、こういうのは破壊神的に思うところがあるわけだ。


「いや、あんまり知りすぎると壊す時、悲しくなったらダメじゃないか?」


「……破壊神って、実はメンタル柔すぎない?」


「そんなことはない。それで? 船とは何なのだ」


「まぁ海を進む乗り物よ。とりあえず木で作れば浮くと思うわ」


 創造神は一応説明してくれているようだが、想像するにはアバウトすぎた。


「海の乗り物なぁ……例えばあんな感じか?」


 だから我は、ちょうど波間に浮かんでいる、木でできているっぽい妙なものが見えて、指さす。


「え? どれ?」


 創造神は海の方を確認して、軽く頷いた。


「ああ、そうそう、あれが船よ。帆が張ってあるから帆船ね」


「ほー」


「……船じゃん!」


 急に大きな声を出して驚く創造神の声はよく頭の中に響いた。


「正解か。船なんだろ?」


「そうじゃなくって! あれに乗ったら島脱出できるじゃないの!」


 近々と甲高い創造神の声が我が脳をシェイクし、我は眼を見開く。


「……おお!」


 そして遅れて我は事の重大さを理解した。


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