破壊神様友情を知る
力が全身を駆け巡っているのはわかるが、なぜか体そのものがパンパンだった。
え? いや? なんでこんなことに?
確かに猪のタックルに負けない重量とパワーは手に入れたが、その代償は俊敏さということか。
丸々肥えたというより膨らんだ我の姿を、今まさに猪も見ている。
この後地面を猛烈に掻く猪がどうするかは、考えてみれば簡単だった。
「……ま、待て。そんなにやる気を出すんじゃぁない。地面がかわいそうだろうが」
「フンゴー!!」
鼻息は熱く、蒸気のごとし。
逃げを封印された今、真正面からぶつかるしかなくなったわけだ。
だがそれは我の望むところである。
「……いいだろう! 本気で白黒つけてやろうぞ!」
破壊神は最強! 凶暴化した野生の猪など比べ物になるわけがない。
「ブヒャー!」
「ヌオオオオ!」
どんと肉がぶつかり合う。
地面は揺れ、とんでもない衝撃で意識が薄れたが、お互いに拭き飛ばず力は拮抗していた。
「やるな猪ぃ!」
「……フゴ!」
それが単純に繰り返される戦いは、完全な泥仕合でもあった。
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数時間後、我と猪は仰向けに転がっていた。
流石に全身に痛みが走る。
しかし太ったとか関係無しで、あの場は後には引けなかった。
これが意地というものかと、我は苦笑して、自然と語りかけていた。
「……やはりただ者ではないな、猪。いや、健闘をたたえて、我が名を与えポポロスと呼ぶとしよう」
「……フゴ」
「そうか、お前も気に入ってくれたか」
「……」
お互い死力を尽くした二人の間には通じ合うものがあった。
同時に最初にあった憎悪や食欲は消え失せている。
例え拳が鼻水で手がべたべたになろうとも、そこにはきらきらとした美しいものがあった。
「……なんだろこれ?」
創造神の完全に呆れ交じりの呟きなど、この空間に入る余地すらない。
激闘の末に生まれた連帯感に入れるのは当人たちのみ、何にもわかってない創造神に説明するだけ無駄である。
「だがそんなことより……やるべきことがあった」
我はよれよれと立ち上がる。
そしてポポロスに向き直ると最高の提案をした。
「今夜は果物パーティーだな! ポポロス!」
「フゴ!」
今晩のごちそうが確定して、我は最高に勝ち負け以上の満足感を噛みしめたのである。




