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破壊神様可能性を感じる

 破壊神のオーラはすべてを破壊する。


 しかしまさか体の中にまで効くとは我もビックリした。


「破壊神のオーラって虫にも効くのかー。すげぇな我」


「破壊神様のオーラは虫下しにも使えると……勉強になります」


「そうみたいだが……なんかいやだから記録に残さないでね?」


 不穏なことを言い残し去っていく医療の神を見送ると、ようやく我もホッと一息ついた。


「いや、破壊神がそもそも寄生虫にやられないでよ」


「わかっている。魚は生で丸かじりしない。我覚えた」


「やっぱり食べたのね……」


 辛く苦しい激闘だったが、我は結果的に一番ヤバい勝負に勝利を収めた。


 この輝かしい勝利を記念して、我は正式にこの技を破壊神オーラと名付けることにした。


 ビームと双璧をなす秘儀として我の心に刻んで置くことにしよう。


「じゃあそろそろあの猪に新技でリベンジ?」


 創造神の容赦ない問いに、我はうーむと首をかしげる。


 我とて考えないわけではなかったが、そいつは気が早いというモノだった。


「いいや、我は今機嫌がいい。あの猪はしばらく見逃してやるとしよう」


 心の準備ができるまでもうちょっと練習してから行こうかな。


 なんにせよ、我は今後も手加減の訓練は継続していくつもりである。





「ふおおお!」


 我は頑張った。


 手加減とはすなわち、大海のごとき莫大な力を一滴ぽちょんと絞り出す、まさに神業ともいうべきコントロール。


 我は指先にめちゃくちゃ集中した。


「ぬおおおお!」


 目標は山。ただし標高は30センチほどの砂山である。


 海岸で作った砂の山に徐々に指をめりこませてゆく。


 挑戦回数はこれで10回目。


 前回までの挑戦は残念ながら触れた瞬間、砂山が大きくえぐれて弾け飛んだ。


 しかし今回は、徐々に削れ、指先に触れた砂だけが消滅してゆく。


 終りは近い。


 震える指先をゆっくりと推し進めると、我の指先は光に到達した。


「……よし! トンネル開通だ!」


 会心の出来に、我にっこりだ。


 だがご満悦で額の汗をぬぐう我に創造神のあきれた思念が飛んできた。


「地味過ぎる……あまりにも。正直幼児が、砂山と戯れているようにしか見えない」


「ふん。これがどれだけ高度なことをやっているのか、創造神ならつぶさに察しろ」


「無茶言わないでよ。何で砂遊び?」


「ふむ。ならば無知な創造神に教えて進ぜよう! これは我考案の訓練である! 我のオーラはどうにも放つには加減が難しいから、体にとどめてわずかににじむ力で試してみたというわけだ!」


 少しでも出そうと思うからいけない。漏らさないぞ! くらいでも若干にじみ出る。


 思惑は成功と言ってよかった。


 ごく狭い範囲に収めた破壊の力は手加減というにふさわしく、何なら無駄な破壊を一切しないことも可能。 もっと言うなら使っている間はエネルギー消費が少なく、副次的な効果も期待できそうだった。


「見よ! この指の形に完全消滅させた滑らかな砂の断面を! 完全に砂山を貫通している!」


「……砂山の自慢をしている姿が微笑ましいという感情しか湧いてこない以外は問題ないわね」


「この画期的な特訓を見て、もっと別の感想を持てないものか? ……まぁいい! こればっかりは地上に落っこちてみなければわかるまい」


「それもそうよね」


「……なんか微妙にむかっ腹が立つがまぁいいだろう。我はとても気分がいいのだ! そしておそらく、今の我ならこのようなことも可能だ」


 我は今朝がた捕まえて来た大きな貝を取り出した。


 中身はうまいのに、殻がバカ硬い小憎らしい今日の朝飯に、我はそっと手を触れ、集中した。


「フン!」


 すると貝の殻は一瞬で分解され、プリンと身だけが残る。


 成功である。


「おお! すごい進歩だわ!」


「ふふん! ざっとこんなものだ!」


 貝のむき身を木の枝に突き刺して、バッチリ焚火で炙ってから食べる朝飯は最高だった。


「もぐもぐもぐ。フハハハハ。完璧であろうが。これならばサバイバルもたやすいというモノだよ」


 我は食事とは過酷で高度なものだとほんの数日で理解した。


 強さの上下がはっきりと命運を分ける情け容赦のない生存競争。


 これを考えたやつは、自分でやることは欠片も考えてないに違いない。


 アニサキスバハムートを胃の中に叩き込んでやりたいところだが、腹が疼いてきたので我は想像するのはやめた。


「ここからが我の真骨頂よ。この調子で我が力を使いこなし、もっとおいしいご飯を食べるのだ!」


 貝を攻略した我はまだ見ぬ食事に想いをはせていたのだが、創造神に突然怒鳴られた。


「おばか!」


「……なんだ創造神? 罵倒がメンタルに響くのだが?」


 せっかくのいい気分に水を差された我は顔をしかめるが、創造神は厳しいく口調で言った。


「そうじゃないでしょうよ? そんな生き物なら誰だってやってるようなことを目標にしないの。この世界で破壊神の力を使って無双するんでしょう?」


「うーん、まぁもうそう言うのどうでもよくないか?」


「マジかお前」


 だがお腹がたまれば気力も溜まるというもの。


 確かに創造神の言うことにも一理ある。


「だが確かにやられっぱなしは面白くない。……リベンジだな。特訓の成果、見せてくれるわ」


 我は静かに闘志を燃やし薄暗い森の中を睨みつけた。


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