破壊神様虫にやられる
「……我、おなかが痛いのだが」
「なんで?」
「お、おなかがいたいのだがぁ!!」
形容しがたい激しい痛みが体の内側から襲ってくる。
いやもうどうしようもないというのがぴったりくる痛みは、身をよじろうがどうしようが収まる気がしなかった。
「……ひょっとしなくても、あんた生で一匹食べたでしょ?」
冷たい視線に反応すら示さず、我は頭を地面につき腹を押さえて蹲ったまま、ただただ絶望のままに叫んだ。
「我! おなかが痛いのだが―――!」
「わかってますけど!? そこまでの事なの!?」
「この痛みはちょっと経験がない! 顔色が青白くなっているのが分かる……鼻水を拭う気にもならんのだが? 」
「そんなに!? えー、えーっとじゃあ……待っていなさい。じゃあ助っ人を連れてくるわ」
緊急事態故に憎まれ口すら出てこない。
そうしてやって来たのは、もちろん神の一柱。
医療の神ペペだった。
白い衣装に身を包んだ、我より若干背の高い少年姿のペペは、深々とイメージの中で頭を下げて来た。
「これは破壊神様。ではこのわたくしが診断してみましょう」
「頼む! 急ぎで頼むぞ!」
「ええ、任せておいてください」
そう言ってペペが我を覗き込むと、丸っと体の中を見透かされているような感覚がある。
まさしくそれはその通りの力で、ほんの数秒でペペの目は我の病巣を暴き出す。
「こ、これは……まずいですね。腹痛の原因は寄生虫です」
「なんだそれは!」
「えー簡単に言いますと、生物の体内に住む虫のようなものです。それが破壊神様の胃に食いついている状況です。運が悪いことに……その寄生虫の種類が最悪ですね」
「ど、どう言うことなのだ?」
何やら不穏な空気を漂わせるペペに我はビビるが、ペペは断言した。
「……その寄生虫は、アニサキス・バハムート」
「ものすごく強敵そうな名前だな!?」
「ええまさに。アニサキス・バハムートに寄生されると……残念ながらまず死にます」
まず死にます
死にまーす……。
心なしかエコーがかかって聞こえたセリフに我は全力で吠えた。
「はぁ!? 何でそうなる!?」




