第四話 寝たら判断力が戻ってきました
本作完結までノンストップで毎日更新の所存ですが、ちょいエロハーレム要素がございます。
お気を付けください。
「貴様~! 罪人の癖に我が国の英雄を馬鹿にしおって!」
ユーダケデス王子が顔を真っ赤にさせながら噛みついてくる。
そういや、コイツ騎士見習いの時からずっと俺を目の敵にしてたな、女誑しとかなんとか。
「いや、実際馬鹿だろ、コイツ。まあ、アンタの方が馬鹿だろうけどな」
「き、き、貴様~!! おい! お前ら、やれ!」
後ろの兵士たちが飛び込んできて俺を囲む。
「わた、私は……」
「マシロ! 戦え! 戦うのだ!」
「は、はい……!」
マシロが瞳を揺らめかせながら立ち上がり、白銀の剣を構える。
七光の一人と、王子の親衛隊。
コイツらと一人で戦えるヤツなんてこの国にいやしないだろう。
「俺がこの国から追放されたからな」
寝て頭がスッキリして分かる。
何故俺はこの国に従っていたんだろう。
俺は寝てればこんな奴ら、
「相手じゃない」
俺は、身体中に魔力を渡らせ構える。
「いよっし! 俺はお前らをぶったおす! ぶったおす! ぶったおすっ!」
俺がいきなり声を張ったせいか、オウジサマがビビッて後ずさりしてる。
「な、なぜ、三回言う?!」
「大事なことだからだよ!」
一斉に襲い掛かる親衛隊。
だが、俺からすれば、遅い。
突きを躱し、腹に膝。肘で後頭部。両手組んで叩き落す。
飛んでくる投擲武器。右、左、躱す。
躱しながら、下で寝ている奴の手足を折る。
さて。
右に二人。
左に一人。
後方に回ってんのが四人。
前方、待機が六人。計、残り十三人。
その奥に、マシロとオウジサマ。
寝て一番取り戻せたのは判断力だ。
情報取得、整理、選択。
これらがちゃんと出来るだけで、全てが大きく変わる。
だから。
「これでラストだ」
最初に転がした男を蹴り上げて投擲武器を防ぐ盾にする。
そして、そのまま当身を食らわせ、投げてきた男に針まみれの男をぶつける。そのまま吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた男が十四人目。右に五人、左に二人、後方一人、前方三人、足元二人、天井に突き刺さったの一人。
残りは、マシロとオウジサマ。
「さて……続けようか」
俺が歩みを進めると、オウジサマは下がり、マシロがかばうように前に出る。
「止めるか?」
「話を聞かせてくれ」
「もう、遅い」
「何故だ」
「追放は決定だろう? それに……お前以外の七光が俺の仲間を奪った。あのクソ共に何されるか分からん。先を急ぐ」
「駄目だ。それに、あの人たちがそんなことをするはず……」
お前のそれは盲信だ。判断出来ていない。
「お前の目は曇りがない。故に情報をそのまま受け入れすぎだ。曇りも歪みも選択肢を広げる大事な要素だ」
「五月蠅い! では、私は何のために……! うあああああ! 私は、お前を、止める……『純潔』」
そう呟いた瞬間、マシロの体に白い軽鎧が浮かび上がる。
ほとんどの部位を守れていないが、あれは飽くまでイメージだ。
実際は薄い白い障壁がマシロの身体を包んでいる。
「誰も傷つけることの出来ない……故に『純潔』!」
「くっくっく! そう! 無傷の女騎士! 正に無敵! 対するお前は、傷だらけの汚いゴミ! 勝敗は明らかだ! やってしまえ! マシロ」
オウジサマがなんか言ってる。アレは判断材料にも値しないな。
「てやああああああ!」
マシロが白銀の剣を煌めかせながら俺に迫る。
美しい太刀筋だ。
故に、読みやすい。
流れるような連撃を流れるように躱す。
「く……な、なぜ!?」
「教科書通りの攻撃されてもな」
「な! ならあ!」
無数の突きを放ってくるマシロ。白い刃のカーテンが俺に迫る。
「な、何故……何故! 当たらない!」
呼吸が途切れ、後方に飛ぶマシロ。
「俺が傷だらけだから回避能力に劣ると思ったか? 残念。この傷は俺が自分でつけた傷だ……眠気をごまかす為にな」
「なああああああん!?」
今度はオウジサマが鼻水飛ばして驚いている。
そう、俺の体中にある傷は敵につけられたものではない。
自分でつけたものだ。
眠かったから。
寝たら死ぬから。
自分で斬って痛みで目を覚ました。
そういう意味でもちゃんと寝られてよかった。
もう痛い思いをしなくてすむ。
「傷つく辛さを知れば知るほどやさしくなれる、と吟遊詩人は言っていたがアレは嘘だな」
俺は目の前の二人の方を向き、嗤う。
「やりかえしたくて冷たくなれるわ」
マシロの方を向き、拳を握る。
「来るか……攻撃は無意味です!」
「無意味かどうか試してみようぜ。俺は、お前をぶっとばす。絶対にお前をぶっとばす。お前をぶっとばすんだ」
「だから、何故いつも三回言うのです!?」
「大事なことだからだっ……よ!」
床を蹴り、マシロに飛び掛かる。
ガードが甘い。いや、障壁で受け止めた瞬間、剣を振り下ろすつもりらしい。
「もらっ……! がへえええええええええええ!」
諸に腹に一撃を喰らい、壁に叩きつけられるマシロ。
思いっきり口からナニカを吐き出しながら飛んでいく。
うずくまる純潔の女神(吐瀉)。
「げ、げえええ……何故?」
「お前な……少しは考えろ。いや、全て、ちゃんと、考えろ」
「げ、げえええ……何故?」
「お前が弱すぎる」
「こ、こんなことが……あるわけが……」
「ないと思うか? じゃあ、もっと強くなって出直せ。話はそれからだ。という訳で、行くぞ。じゃあな、オウジサマ……ん? オウジサマ……?」
振り向くと一目散に逃げだしているその背中が見える。
「お、王子……!」
「あ~あ、なっさけねえなあ。マシロ、あれがお前の仕えるオウジサマの姿だ」
「ネ、ネズ……! 今、私をマシロ、と……」
あ、やべ。
「も、もう一度。もう一度呼んでくれないか」
「やなこった。俺はもう仲間以外の言う事は信じない」
「な、なら、どうしたら、私はお前の仲間になれる?」
俺はもうこの国に戻るつもりはない。こいつと会うのもコレが最後だろう。
だが、コイツは悪い奴じゃない。コイツなら……。
「まず、よーく寝ろ。そんですっきりした頭で考えろ。今、何をすべきか。じゃあな」
俺はそれだけ言い残し、その場を後にする。
「あー、すっきりした。ほんじゃま、まずは、一番近いギゼインところから行ってみるかあ!」
俺は、王都を出て、仲間達を迎えに行くことにした。
「早くみんな助けて、気持ち良く眠りてえなあ!」
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