第四十四話 寝たら共闘することになりました
あれだけいた化け物どもの軍勢が一掃され、キョンケ一人が残るのみとなっていた。
「さあ、キョンケ、どうする?」
俺は、キョンケの前に立ちふさがる。
「は、はは……! ははははあは! さ、流石、黒蝙蝠! 強すぎますね! 特に、一緒になった時のチームとしての強さは震えるほどだ。だからこそ……バラけていただきましょうか!」
キョンケが手をかざすと、空に絵が浮かび上がる。あれは……。
「王国の街、か……」
今まで訪れた事のある七光が治める都市が魔法によって映し出されているようだった。
「そう! 貴方達は強い。だけど、たった八人だ……こちらは貴方達よりも弱くても無数にいる。こんなことが出来る位にね!」
そうキョンケが言うと、街の絵の中に黒い穴が生まれ、そこから先ほどの異形の化け物どもが現れる。
「なっ!? 召喚魔法!? しかも、こんな数を同時に!?」
ドエムスが驚いて声をあげる。
「えぇ! この力があれば、貴方達がいくら強くても意味がないでしょう? さあ、行け! 我が僕たちよ!」
キョンケの言葉に従い、魔物たちが街へと侵略を開始する。
「はははは! どうです!? さあ、少しでも助けたいなら急いでいった方が良いですよ! 僕にも情けはあります。ゆっくりじっくりなぶり殺してあげましょう!」
「させるかよ! ……アイツらがな」
「は?」
キョンケが呆気に取られながら、映像に視線を向ける。
そこには……。
「ネズゥウウ! 助けに来たわよ!」
帝国のおてんば双子ミアとメア率いる帝国軍。
「キョンケ! お前の思い通りにはさせん!」
メジマソクの魔導機兵隊や、ナルシィの精鋭部隊。
「俺達の街は俺達で守るんだ!」
キン達街の人々。
それぞれが異形の化けものと立ち向かっている映像だった。
その姿を見たキョンケの顔から余裕の笑みが消える。
そして、その顔には怒りと焦りが見えた。
「な、なんで……?」
「キョンケ、恐らくお前は俺の動向だけを見張っていたんだろうがな。それが間違っていたな。黒蝙蝠にはいるんだよ。天才的な頭脳の持ち主と、人をひきつけ導くカリスマってヤツがな」
スロウ、そして、ライカとプリン。
コイツ等がいなければ、ここまでの事は出来なかっただろう。
スィーラを立て直したあと、ネーマにいるスロウから連絡を受けていたプリンはライカとリタのよく知る兵たちと共にブタカへ向かい、メジマソクのいないうちに制圧。そして、掌握。
その後、ゼニスへ向かいメジマソクとシューセンド、そして、キン達の間に立ち、交渉。メジマソクは現状を知り猛省し、スロウ達を伴いブタカへ帰還。
帝国軍との共同戦線を張り、ブタカに対する魔物への襲撃対策を整えると同時に、一部の魔導機兵をゼニスへと送り、キン達との合同軍を作る。
それらの引継ぎをキン達と行うと、ライカとプリンはアルトで軍の編成をナルシィと行い、スロウは、ブタカから直接スエムへ向かい、合流。
今に至る。というわけだ。
それらを全部予想し、伝えていたのがスロウ、そして、纏めていたのがライカとプリンだった。
そして、
「ネズ! 助けに来たぞ!」
「ネズ様、お会いしとうございました」
「良い武器を作ってきたよ」
やってきて俺を取り囲む女達の活躍。
リタの情報収集と共有。
クレアによる治療。
ドワーフ三姉妹の武器。
それらによって、強力な軍が作り出された。
なんか黒蝙蝠女性陣がすげーにらんでる気がするが、俺は知らない。
観念して目を閉じてるから見えない分からない。
そんなことを……!
『私はもう正義を見失わない! 魔導機兵よ! 敵を殲滅せよ!』
『くっそおおおお! この俺が借金奴隷だとぉおお!? すぐに返してやる!』
『ネズ先輩の恥にはもうならない!』
アイツらの、七光達の声が聞こえる。
伊達に七光と呼ばれているわけじゃない。アイツらがちゃんと本来の力を発揮できれば強い。
流石にギゼインは無理だったが、メジマソク、シューセンド、ナルシィあの三人がいれば余裕だろう。
王都にはあの女がいるし。
「ば、馬鹿な……なんで、こんなことに……!」
キョンケは茫然と街々での魔物達の敗北の様子を見つめている。
予想外だったのだろう。
悪夢によって弱った人間がここまでできるとは思ってなかったんだろう。
恐らく悪夢の力を振り払ったのは……。
俺は自分の拳を見つめる。
そして、誰より悪夢を吹き飛ばすべき人間に向ける。
「さあ、キョンケ! 悪夢の終りの時間だ。目、覚ましな」
キョンケに拳を向け俺は正真正銘最後の戦いに臨むことにした。
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