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第四十話 寝たらうっとおしがられました

「影が勝手にやった? お前は全部それですますつもりか? お前の〈誘導〉のスキルで」


俺の言葉にキョンケは薄気味悪い笑みを浮かべる。


「やっぱり、バレちゃいました? いやあ、流石ですねえ」

「ネズ、あいつが?」

「ああ、あれが、今回の黒幕だ」

「キョンケが……一番いい子だと思っていたのに」


ドエムスが信じられないと口にする。

まあ、無理もない話だろう。

キョンケは、我の強い七光の中でも最も人格の出来た人間だ、と思っていた。


「七光の人選もそれとなくお前が誘導した結果だったんだな」


スロウの予想はこうだった。

キョンケの目的は『王国の崩壊、もしくは、乗っ取り』。理由は不明。

その為に、キョンケは少しずつ少しずつ毒を流し込んでいった。

力はあるが人間的に難のありそうな人間に声を掛け成長を促した。

そして、恩ある自分を七光に選ばれた人間が推薦。

最も目立たない七光であるキョンケは仲介役として走り回り色んな情報を操作し、苛立ちや不安、恐怖を生み出し、安らかな眠りを奪う。

やがて、それらは七光達から正常な判断を奪い、攻撃的にさせたり、欲望に忠実にさせたり、思考能力を低下させたりし、全てが国力の低下に。

唯一、意識的に、正義感の強いドエムスにだけ何もせず静観。

そして、反乱が起き、疲弊したところでキョンケが現れる。


「……ってことらしいんだが、本当の所はどうだ?」


俺がスロウの予想を話すと、キョンケはやられてしまったと天を仰ぎ額に手を当てる。


「あちゃー、やっぱり貴方は寝ている間に殺しておくべきだったかなあ」

「キョンケ? アナタ、やっぱり……」


癖の強い七光に比べ信頼を寄せていたのだろう。

ドエムスは悲しそうな瞳でキョンケを見ている。


「ドエムスさん、何をやってるんですか? 反乱起こさないんですか?」

「…………」

「ネズさんも、早く国を出てくださいよ。でないと僕が困りますよぉ」

「お前は何者なんだ。何故、俺達を襲う」

「僕は、ただ国の為を思って行動しているんですよ。ま、貴方達が邪魔をすると言うなら仕方ありませんけどねぇ」


キョンケはニタリと笑いながら言う。


「じゃ、死んじゃって下さい」


その言葉と共に、無数の闇魔法が飛んでくる。

その数は百を超えていた。


「ちっ!魔力の量が異常すぎるだろ!グリ! グラ!」

「逃げてるよお! 隊長!」


グラとグリは慌てて、その場を離れる。

あんなアホみたいな魔力何処で手に入れたから知らねえが、このままだと全滅は免れない。

そんな時だった。

ドエムスが動いた。

両手を広げ、呪文を唱え始める。

すると、辺り一面に紫色の霧のようなものが広がり始めた。

これは、なんだ。

魔法なのか?


「ドエムス! お前もしかして、全部受け止めようと!?」

「この場には、まだアタシの部下たちも、街の人たちもいるのよ。逃げられるわけないじゃな~い?」

「は、はは! お前はそういうヤツだったな! 仕方ねえ!」


俺はドエムズに並び、左手を突き出しながら叫ぶ。

俺の魔法が加わるなら、多少の攻撃は耐えれるだろ。

それに、グラとグリが何も言わずに俺に従ってくれている。

二人ともドエムズの傍に寄り添う。

これで、三人とドエムズで防御壁となる。

あとは、攻撃に耐えれば良いだけだ。

轟音が鳴り響き、地面が揺れる。

同時に、魔法による爆風が吹き荒れる。


くそ、なんて威力だよ。


「はぁ、はぁ、おい、ドエムス大丈夫か」

「えぇ、平気よぉ。ネズこそ、魔力は持つのかしらぁ?」

「ふん、まだまだ余裕だぜ」

「へえ、まだ立っていられますか。凄いですねぇ」


キョンケがパチパチと拍手をしながら言う。


「ドエムスさん、貴方の心は本当に素晴らしいですよ。誰も見捨てられないそのやさしさ、そして、そのやさしさがあるからネズさんも貴方を守ろうとした。そして、二人とも傷つき……僕に殺されるんですから! まったくもって、すばらしい!」


狂ったように笑うキョンケ。


「お前、いつの間に……そんなイメチェンしたんだ? 気持ち悪いな」

「ふむぅ、確かにぃ、今のアンタは気味が悪いわねぇ」

「失礼ですねえ。僕は最初からこうでしたが? 僕は全部ぶっこわしたかった。王国も七光も何もかも。その為に、僕は策を練り続けたんです。少しずつ少しずつ弱らせるために、信頼を得て、常識をすり替え、眠りを奪った……すべてうまく行くはずだった。なのに、あなたが、ネズさん、あなたが僕の邪魔をした。けど、やはり、僕は神に愛されていた。今、僕の目の前にはネズさんがいる。貴方さえ殺せば……」


キョンケは、手に持っている杖を俺に向ける。


「もう、邪魔者はいなくなります!」


次の瞬間、大きな音を立てて俺達を守っていたドエムスの魔法が砕け散る。

どうやら、魔力の限界を迎えたようだ。

俺はドエムスを抱えて、キョンケの魔法を風魔法で自分の身体を操りながら躱す。


「ぐっ! はあ、はあ、隊長! 無事か!」

「ああ、問題ない。それより、あいつを止めないと」

「……そうね、ここで逃がしたらまた同じことをするでしょうし、アタシの部下たちが危なくなるものぉ」


ドエムスも、一瞬意識がとんだだけみたいで、すぐに俺の腕から離れ、構える。

だが、見るからに満身創痍だ。


「逃げる? 逃げませんよぉ。もう。貴方達を傀儡にして、王国を壊滅させるまでね」


キョンケはニヤリと笑い、再び魔法を唱え始める。

まずいな。


さっきより強力な魔法だ。

あれを喰らうと流石にキツイぞ。

だが、どうやって止める? アイツの魔力量は尋常じゃない。


今の俺達とドエムスでなんとかできるレベルを超えている。

なら、方法は一つしかない。

俺は一人で前に出て、叫ぶ。


「キョンケ! 俺達はお前のくだらねえ願望をぶっつぶす! 絶対にぶっつぶす! ぶっつぶすからな!」

「なんで、三度言うんですか?」

「「大事なことだからよ」」

「は?」


キョンケが振り返るとそこにいたのは、エンとラスティだ。

二人がかざした手から強烈な雷魔法が放たれ、キョンケは始めてしっかりとした防御態勢をとる。



必要な時が来たぜ。待たせたな。

お読みくださりありがとうございます。

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